2008年05月08日

縹渺譚

縹渺譚 (1977年) (ハヤカワ文庫―JA)

  •  今日泊 亜蘭

  • 販売元/出版社 早川書房

  • 発売日 1977-01

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たまに、ひょっとしたらこの人は死なないんじゃないかと思ってしまう人がいる。
山田風太郎がそんな感じだったし、アーサー・C・クラークもそんな感じだった。不謹慎な言い方になるのだが、もうそろそろ死んでしまうんじゃないかというような雰囲気を漂わせておきながら、飄々として生き続けている人たちなのである。
そういう雰囲気を漂わせている人が亡くなった場合、不思議と悲しくはならない。
で、今日泊亜蘭も僕にとってはそんな一人なのである。
それはともかくとして、困ったことにこの人は、なかなか本を書いてくれない。
とくに、三部作の構想をしておきながら二作で止まってしまうのである。
<根岸物語>シリーズも「瀧川鐘音無」と「新版黄鳥墳」で止まったままだし、『光の塔』とその続編『我が月は緑』も三作目の構想があるといっておきながらいつまでたっても続きがでない。
そして『縹渺譚』も、あとがきで三部作を構成すると書いておきながら、三作目を出さないのである。
ある意味、完結させるのを良しとしない性格なのだろうか。しかし、今もおそらく飄々と生き続けていること、そしてこの人は死なないんじゃないかと思えて仕方ないことを考えると、わざと書かないで読者を焦らしているんじゃないのかと思ってしまう。
まあそれはともかく、こういう文章に触れると、ああ日本人として生まれてきてよかったなあと実感するのだ。何よりもこの本には日本語のおもしろさと美しさが詰まっている。  

タグ :今日泊亜蘭

2008年01月11日

最終戦争

最終戦争

  •  今日泊 亜蘭/

  • 販売元/出版社 早川書房

  • 発売日 2000


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一昨年、アメリカSF界の長老ジャック・ウィリアムスンが亡くなったとき、日本SF界の長老である今日泊亜蘭のことが頭によぎった。1910年生まれなのだらかもうかなりの歳である。ひょっとしたら1912年生まれなのかもしれないが。
小説に関していえば、『我が月は緑』が今のところ最後に発表された作品で、その後は沈黙を守ったままなのであるが、今日泊亜蘭と同じ年に生まれた双葉十三郎が今でも現役であることを考えると、現実的にはほぼあきらめているとはいえ『光の塔』『我が月は緑』に続く第三部が書かれることを期待しているのである。
子不語の夢―江戸川乱歩小酒井不木往復書簡集』に寄せたコメントや、最相葉月の『星新一 一○○一話をつくった人』のコメントを見る限りではまだまだ元気そうなんだけどね。
大半は20ページに満たない短い話で、ショートショート集と言っても、今日泊亜蘭に言わせればコントだと言うかも知れないが、過言ではなく、意外とバリエーションも少ないので単調になってしまう部分も多いのだけれども、長めの話になるとシリアスな内容にもなりやはり面白い。
まあ何が面白いかといえば、SF的なアイデアとかそういうレベルの部分ではなく、この人独特の文体であり言葉使いが読んでいて気持ちいいのである。  
タグ :今日泊亜蘭

2007年12月17日

梅田地下オデッセイ

それにしてもデュアル文庫から出る予定だった『梅田地下オデッセイ』はどうなったんだろうか。

というわけで、前回からの続きでハヤカワJA版『梅田地下オデッセイ』を読んでみることにした。

梅田地下オデッセイ

  •  堀 晃/

  • 販売元/出版社 早川書房

  • 発売日 2000


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古書としてはけっこうな高値で売られているけれども標題の「梅田地下オデッセイ」は作者のサイトで読むことが出来るし、この本に収録されている<情報サイボーグ>シリーズの三編はハルキ文庫の『地球環』にまとめられている、といってもこの本も絶版だけど。「塩の指」は創元SF文庫の『遺跡の声』に収録されたので、残るは「アンドロメダ占星術」、「無重力の環」、「熱の檻」、「連立方程式」の四編となるわけだが、これもそのうち短編集としてまとまりそうな気もする。
しかし石原藤夫による巻末の六十頁近くにも渡る解説はこの先ずっと日の目を見ることはないだろうと思うのだ。当時のSFマガジン編集長との蜜月時代のエピソードの部分を削り取ってしまえば可能かも知れないけれども、蜜月時代があったことは事実だろうし。それにしても『太陽風交点』事件さえ起こらなかったならと思うのだけれども、第三者がとやかく言っても仕方ないことである。
で、それはともかく「梅田地下オデッセイ」を読むと、小川一水の「ギャルナフカの迷宮」の原点がここにあったのかとも思うのだが、堀晃が描いている世界の方が生々しくグロテスクだ。そして「アンドロメダ占星術」のラストで見せるビジョンも捨てがたい物があるけれども「熱の檻」の時間理論は凄い。パラドックスの発生を未来の側に持っていくというアクロバティックな論理はむちゃくちゃなんだけどちょっと考えさせられる。
さらにはトム・ゴドウィンの「冷たい方程式」のパロディでもある「連立方程式」は作中において様々な方程式を導いてこれまた圧巻で、この本が絶版というのはつくづくもったいないのである。  
タグ :堀晃

2007年12月11日

時砂の王

時砂の王 (ハヤカワ文庫 JA オ 6-7)

  •  小川 一水/

  • 販売元/出版社 早川書房

  • 発売日 2007-10


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小川一水版バーサーカーといった趣だが、全編をそこはかとなく流れる絶望感が読んでいて心地良い。個人的にはもう少し絶望的な方が良かったのだが、タイムトラベルとパラドックスの問題、敵異星体の目的、さらには登場人物間の恋愛問題などなとわずか270ページほどの分量の中に詰め込んだことを考えるとこの程度が丁度良いのかも知れない。
しかし、パラドックスに関する処理も、そういうものだと思ってくれと無理矢理押し切ってしまっただけで、よくよく考えるとまったくもって腑に落ちない。異星体が時間遡航したのは現時点での形成が逆転してしまい劣勢になってしまったからだと説明された次のページで、この時間軸は近いうちに滅亡してしまうと言ってしまっている。根拠は未来からの援軍が来ないからということなのだが、敵側は劣勢になったはずではないのだろうか。それで何故滅んでしまうのかわからない。
小川一水が時間物に挑戦したということで期待したのだが、がっかりだ。
というわけで、雰囲気は素晴らしいのだが、ただそれだけ。勢いだけで押し切ってしまった感があるのだが、投入されたアイデアの密度とコンパクトさは捨てがたい物がある。  
タグ :小川一水

2007年10月29日

鳥はいまどこを飛ぶか

鳥はいまどこを飛ぶか

  •  山野 浩一/

  • 販売元/出版社 早川書房

  • 発売日 1975-09


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250ページあまりと薄い本なんだけど、あとがきを読んでびっくりした。
銀背のハヤカワSFシリーズで出ていた本の文庫化であるが、文庫化にあたってこのままでは厚すぎるので何編か割愛したと書かれているのである。
一瞬、『啓示空間』や『カズムシティ』の編集者に読ましてやりたい言葉だと思ってしまった。
もっとも、実際に『啓示空間』や『カズムシティ』がこの本なみの薄さで分冊されてしまったとしたら、それはそれで嫌なんだけどね。
それはともかく、ニュー・ウェーブ運動の旗手と呼ばれただけあって、確かにニュー・ウェーブらしい話が多い。ちょっと苦手意識があって今まで敬遠し続けていたんだけど、読んでみるとこれがかなり面白い。
ニュー・ウェーブといってそれほど難解でもないし、ニュー・ウェーブなんてものを意識しないでも楽しめる話もあって、バラードというよりもディッシュに近い感じだ。ディッシュも短編集が出たくらいなのだから今ならば再評価されてもおかしくない気がする。
東京創元社で復刊しないものかなあ。作者のサイトによれば短編集を出す企画があるらしいのだが。
ところで、金城一紀の『レヴォリューションNo.3』は山野浩一の「レヴォリューションNo.1」「レヴォリューションNo.2」から取っていると思っているのだが、やっぱり違うのだろうか。  
タグ :山野浩一

2007年10月19日

さらば愛しき大久保町

さらば愛しき大久保町 (ハヤカワ文庫 JA タ 9-5) (ハヤカワ文庫 JA タ 9-5)

  •  田中 哲弥/

  • 販売元/出版社 早川書房

  • 発売日 2007-09-04


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これでとうとうお終い。といっても三部作となっていながらも、舞台が大久保町というだけであって、話そのものは何の繋がりもなくしかも舞台となる大久保町の設定ですら毎回異なるので三部作などというのもおこがましい気もする。まあ一部の登場人物は他の作品にも登場するのであるが、それさえも同姓同名、性格も何故か同じという別人である可能性も高い。
というわけで、冒頭のお終いというのは三部作がお終いとなったという意味ではなく、過去に刊行された本が全て復刊され尽くしてしまったという意味である。実は密かに新作を書き続けていて、未発表の作品がかなり溜まっているというわけでもない限り、作者が新たに作品を書いてくれない以上はいくら待ち望んでも新作は出ないのである。ひょっとしたら例の翻訳作品が出るかも知れないが、ちょっと難しいだろう。
で、今回も今までと同様、くだらなくってそして面白くって後には何も残らない話だ。とりあえず今までの主人公とは違って小さい頃から凄腕の傭兵の教えを受けてきたために腕っ節が異常に強いところが変わっている。もっとも変わっていると言っても性格の方は同じで天然である。
こういう場合、主人公が暴走して収集が付かなくなるのがお決まりの展開かも知れないが、主人公以外の登場人物も天然なので、主人公は暴走しない。まあ身も蓋もない話ではあるが、根底はボーイミーツガールなので読後感は実に良いのである。  

2007年10月03日

銀輪の覇者

銀輪の覇者 上 (ハヤカワ文庫 JA サ 8-1) (ハヤカワ文庫 JA サ 8-1)

  •  斎藤 純/

  • 販売元/出版社 早川書房

  • 発売日 2007-08-25


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銀輪の覇者 下 (ハヤカワ文庫 JA サ 8-2) (ハヤカワ文庫 JA サ 8-2)

  •  斎藤 純/

  • 販売元/出版社 早川書房

  • 発売日 2007-08-25


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解説でも書かれているとおり、トム・マクナブの『遥かなるセントラルパーク』を彷彿させる話だ。
もっとも、こちらは日本本州横断自転車レースであちらはアメリカ横断マラソン、しかも週に6日、1日80キロを走破し三ヶ月かけて横断しようとする話だから比較してしまうと分が悪い。
しかし規模では負けても心意気は負けていない。なにしろ自転車といっても競技用の自転車ではなく、実用自転車なのである。何故実用自転車なのかは読めば理由がわかるのだが、そのあたりからして既に曰く付きの自転車レースなのである。
さらに曰く付きなのは自転車だけではなく、出場者もそうだ。あるものは己の信じる者のため、あるものは復讐のため、あるものは貧困に苦しむ故郷の村に莫大な賞金を持ち帰るため、そしてあるものは己の邪な愛情のため。
あまりにも多彩な登場人物のために収集が付かなくなってしまっているきらいはあるものの、それ故にだろうか物語は一気に崩壊し、なし崩し的に怒濤のラストへとなだれ込むのだ。
己が背負っていたさまざまなしがらみが無くなったとき、ただひたすら純粋にペダルを漕ぐのである。銀輪の覇者となるために。  

2007年07月31日

敵は海賊・正義の眼

敵は海賊・正義の眼敵は海賊・正義の眼
神林 長平

早川書房 2007-06
売り上げランキング : 1989

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わりとコンスタントに出ているなあと思っていたんだけど、実際のところは前作から既に10年も経っていることを知って唖然。昔と比べて気が長くなったといえば聞こえはいいけれども、年を取ったなあと実感。
今回は第三者的な立場から見た海賊と海賊課のお話ともいえるわけで、10年ぶりの新作というせいもあるのか、海賊と海賊課という基本設定の再確認みたいな話でもあった。そのせいで、海賊課の活躍シーンは少なく、やっぱりそういう場面を期待してしまうので、読み終えてもしっくりこないというか物足りない。なんといっても、チーフ・バスターも、ラック・ジュビリーも、オールド・J・カルマも登場しない。できればそれほど間をおかずに今度は彼らが登場する話を書いてもらいたいものだけれども、まあ、次は雪風の第三部になってしまうんだろうなあ。
匋冥はめずらしく人間的な感情をあらわにするし、ラテルもアプロとセレスタンというお荷物キャラが一緒なせいかなんだか角が取れて丸くなってしまった感じ。成長していないようで少しだけ成長しているのだろうか。  

2007年07月27日

グアルディア

グアルディア 上

  •  仁木 稔/

  • 販売元/出版社 早川書房

  • 発売日 2007-04


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グアルディア 下


  •  仁木 稔/

  • 販売元/出版社 早川書房

  • 発売日 2007-04


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どうも前半の部分が乗れなかったので後半になっていろいろと派手な展開を見せていくのだけれども話に乗りきれず、何だか最後まで薄いベール越しに世界を眺めているような感じでした。
それというのも舞台が南米で、「カルナヴァル」という単語が出てきた瞬間、船戸与一の『カルナヴァル戦記』を思い出してしまったせいでもあります。『グアルディア』と『カルナヴァル戦記』、何の繋がりもないのですが、『カルナヴァル戦記』から船戸与一の<南米三部作>を思い出し、ああ面白かったよなあと思ったとたん、あれらと比較することじたい間違っているのですが、話に乗れなくなってしまったのです。
しかしそれでも終盤になって事の真相が判明し出すと、おおこれはなかなか凄いではないかと思わされたりもして、前半の部分がもう少し何とかなっていればというかもう少し登場人物に魅力があればなあと思ってしまうのでありました。
JDが主人公だと勝手に思ってしまったのも敗因かな。結局、JDよりもアンヘルの方が重要度が高かったし、つまるところアンヘルの物語だったからなあ。  


2007年07月20日

大久保町は燃えているか

大久保町は燃えているか

  •  田中 哲弥/

  • 販売元/出版社 早川書房

  • 発売日 2007-06


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舞台が同じというだけで前作とは全く無関係なんだけど、そりゃそうだ。前作は西部劇の世界だったのに対して、今回はナチスに占領された世界、但し大久保町だけ、なのだ。関係を持たせる方がおかしいのだけれども、最後の方で前作の登場人物がちょっとだけ登場するあたり、作者のサービス精神の現れというべきか、いや単に面白いから出しただけなんだろうなあ。
前作では大久保町がなぜ西部劇の世界になっているのかについて説明などはなかったんだけれども、さすがに今回は説明が必要だったせいか、それなりの説明があるあたりは興味深いところなんだけど、もちろん説明があるからといってそれが納得できる説明になっているのかといえば全くなっていない。そもそも主人公が大久保町に行った原因が、単に道を間違えただけという理由であって、主人公はごく普通の少年、ナチスに占領された世界では全くの役立たずである。そんな主人公がわけのわからないままレジスタンス活動に巻き込まれ、ヒロインに好意をもたれて、終盤はそれなりのサスペンスがあって盛り上がりを見せ、何が何だかわからないうちに全てが丸く収まり、そしてちょっとだけ主人公は成長しているという物語になっているあたり、ずいぶんとしたたかな作者である。  


2007年05月25日

膚の下

膚の下 (上)

  •  神林 長平/

  • 販売元/出版社 早川書房

  • 発売日 2007-03


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膚の下(下)

  •  神林 長平/

  • 販売元/出版社 早川書房

  • 発売日 2007-03


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『あなたの魂に安らぎあれ』を読んだのは遙か昔のこと、もう既に細かな内容はすっかり忘れてしまっていたわけで、そのせいか『スター・ウォーズ エピソードIII』を見終わったときのような、これで話が繋がった感はそれほど感じなかった。しかしそれでも作中で「あなたの魂に安らぎがありますように」という言葉が何気なく登場したときには感動してしまったよ。
話を『あなたの魂に安らぎあれ』につなげなくてはならない仕組み上、予定調和的な部分が出てしまったなあと思ってしまうのはある意味、贅沢な不満であるわけで、まあとにかくこの話が<火星三部作>でなくても良かったんじゃないのかと思うくらい面白かった。
和製ディックと呼ばれるような場所から始まり神林長平は、20年かけてこんな場所まで到達してしまったのかと思うと感慨深いものがある。
いやもうこれは傑作だ。
というよりも別格といった方がいいかも知れない。これ以上に面白い本はあるし、これ以上に傑作だと思う本もある。けれどもこの『膚の下』は別格扱いをしたいのだ。
文庫にして上下巻約1000ページもありながら派手なシーンはほとんど無く、延々と主人公の成長の物語につきてしまうのだけれども、人造人間である主人公の意識が成長していく過程が感動的に素敵だ。もちろん主人公以外の人造人間の成長っぷりも素晴らしく、最初は没個性的だった人造人間たちが徐々に個性を持っていく過程の描写も丁寧で、特に終盤の彼らの行動は泣かせる。
主人公の物語は雨のシーンから始まり、雨のシーンで終わる。最初の雨は主人公に冷たいのだが、最後のシーンで降る雨は、主人公に優しく降りかかる。
その後にエピローグが始まるのだが、一気に250年以上の時間が経過する。この一気に経過するときの流れが、何ともいえない。そして神林長平といえば猫なのだけれども、犬を描いてもうまいというかこの使い方は卑怯だ。わずか数頁のエピローグの中で、250年の時の重みと犬の想い出とで不覚にも涙が出てしまった。  

2007年05月17日

スクレイリングの樹

スクレイリングの樹

  •  マイクル・ムアコック/

  • 販売元/出版社 早川書房

  • 発売日 2007-01


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前回のような話を期待していたんですが、さすがに第二次世界大戦が終わった時代、つまり戦後の話になってしまったので、というかエルリックで戦後などという言葉を使うことになるとは思ってもみなかったわけだけど、まあかなりファンタジー寄りの内容でしたよ。
ということで、はっきり言えば読むのが苦痛でしたよ。もっと短くまとめればいいのにと思うほど冗漫とでもいいましょうか、まあこのあたりは好きずきの問題でもあって、そこがいいのだと言う人もいるだろうけど、途中で挫折しそうになりました。
多元世界に関しても、もはや何でもありと化したような状態で、そのうえ適役がどうにも弱く、見劣りしてしまう。そのくせ打たれ強いので、負けても負けても何度でも挑戦しにくるのだ。
主人公でなくてもうんざりしてくるわけですが、なるほどこれはイーガンの「ひとりっ子」における多世界解釈の憂鬱を地でいく内容でもあるなあ。
あと、驚いたのが例の剣によって斬られたのに生き返った人物が登場したこと。うーむこれは何かの伏線なのか、それともまあよく判らないけれどもそういうことだったのだろうか。  

2007年05月09日

大久保町の決闘

今日始めて知ったのだが、yahooには評判情報検索というものがあるらしい。で、「鶴田謙二」の評判を検索してみると、「嫌い」として私の記事があったので驚いた。しかも私の記事一つだけである。
この評判情報検索は「情報を機械的に収集・分類・表示しているため、内容の正確性や信頼性を保証するものではありません。」とはなっているものの、それなりの実績と効果があるから公開しているわけで、お前の文章の書き方がおかしいのだと指摘されているような気がしてちょっと落ち込みましたよ。

大久保町の決闘

  •  田中 哲弥/

  • 販売元/出版社 早川書房

  • 発売日 2007-03


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田中哲弥という人はどうしてこんなにもあからさまな嘘を付くのだろう、自分のことは棚に上げてこんな事を言うのもなんだと思うけれども。
現代日本の実在する場所が舞台でありながら、そこは地平線が広がった西部劇の世界。男たちは拳銃を腰にぶら下げ、保安官もいる。隣り町はごく普通の日本の町であるというのにである。しかしそんな設定が何か重要な意味を持っているのかと言えばそんなことはなく、後半にはごく普通に神社が登場する、このいい加減さ。
普通ならばそれが成立する理由付けが途中で書かれたりするのだけれども、田中哲弥はそんな言い訳めいたものなど一切書かない。全くの揺るぎない自身を持ってそれが真実であるがごとく平然と嘘を付き続けるのだ。
だからといって読んでいる方もそれを納得してしまうことができるかといえば全然そうではなく、読みながら作者の付く嘘に対して「そんな馬鹿な」などと脳内でつっこみを入れながら読むのである。
そんな感じで作者との間に、漫才における相方のような関係を築くことが出来れば、後はただひたすら脳内で怒濤のごとくつっこみを入れながら読みふけることでただひたすら楽しく愉快な時を過ごすことが出来るのである。  

2007年04月26日

沈黙のフライバイ

沈黙のフライバイ

  •  野尻 抱介/

  • 販売元/出版社 早川書房

  • 発売日 2007-02


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なんだかどんどん文章が簡素化していくような気がする。
必要最低限度の描写だけで、ある意味非常に素っ気ない文章でもある。本当は小説を書くのが大嫌いなんじゃないのかとも思いたくもなる。まあ、取材は好きだけど小説を書くのは嫌いだなどということを発言していたりするので、ひょっとしたら本当のことかも知れないけれども、それはともかく、文章が素っ気ないからといって手を抜いているわけではなく、必要な手続きはしっかりと織り込んであるから読んでいて楽しい。
そういった点では、どんどんとアーサー・C・クラークに似ていっているよなあ。本人はいやがっているのかも知れないけれども。
「轍の先にあるもの」なんてSFマガジンのクラーク特集の時に掲載されたやつなんだけれども、だからというわけではないが、これってクラークの書く文章だよなあ。
しかし、最大の難点は、クラークはもう書くことがないといって断筆宣言しちゃった後でも、書くことが出来たといって書きまくっているのに野尻抱介はどんどんと小説を書かなくなってしまっていることだ。
とりあえずそこのところだけはクラークを見習って欲しいものであるといいたくもなる。  

2007年03月01日

零式

零式
海猫沢 めろん著
  

2007年02月16日

マルドゥック・ヴェロシティ

マルドゥック・ヴェロシティ 1
  

2006年09月04日

月光とアムネジア

月光とアムネジア
  

2006年08月15日

やみなべの陰謀

やみなべの陰謀
田中 哲弥著
  

2006年04月06日

レフト・アローン

レフト・アローン
藤崎 慎吾著
  

2006年03月28日

小指の先の天使

スタニスワフ・レムの訃報を知ってちょっとショックです。非常にバランスのとれたというか、あらゆる方面で秀でた完璧な作家だったと思います。
さて、レムに匹敵する思索力の持ち主といえば、グレッグ・イーガンがそうなんじゃないかと思うのですが、日本に目を向けてみると、よくディックと比較される神林長平もアプローチの仕方がレムと同じなんじゃないかと思っているのです。

小指の先の天使
神林 長平著