2008年04月07日

あなたに不利な証拠として

あなたに不利な証拠として (ハヤカワ・ミステリ文庫 ト 5-1)

  •  ローリー・リン・ドラモンド駒月 雅子

  • 販売元/出版社 早川書房

  • 発売日 2008-03

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読んでみればこれはF・X・トゥールじゃないか。
いやトゥールは既に亡くなっているのでローリー・リン・ドラモンドはF・X・トゥールじゃないことはわかっているけど、F・X・トゥールが書いた『ミリオンダラー・ベイビー』の警察版だよねえ、これは。
トゥールよりも技巧的で突き放しているけれども、トゥールと同じ視線が感じられる。同じ眼を持っているのだろう。
というわけで、ローリー・リン・ドラモンドが描いた世界は私が視ることのできない視線で描かれており、それはそれで素晴らしいのだが、ミステリとして面白いかどうかというのは別問題だ。
トゥールは物語として描いていたのに対してローリー・リン・ドラモンドは物語としては描いていない。ただありのままの現実を、わざわざ効果的な手段を選んで突きつけるだけだ。
いわゆるミステリとしての面白さは何も無いことは知った上で読んだのでそのあたりは全然問題がなかったし、作者の突き放し具合がはよかったんだけど、最後の話になって突き放しきれなくなってしまったのが残念といえば残念。
  

2007年11月19日

完全脱獄

完全脱獄 (ハヤカワ・ミステリ文庫 フ 30-4)

  •  ジャック・フィニイ/

  • 販売元/出版社 早川書房

  • 発売日 2007-09-26


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ジャック・フィニイもフレドリック・ブラウンと同様、ミステリも書いているのにそちらの方はないがしろにされているんだよなあ。
といいながら自分だってフィニイのミステリは積読しっぱなしだったので、あまり大きな声では言えないんだけどね。
『盗まれた街』が映画化されたおかげでといってしまっていいのかよく判らないんだけど『完全脱獄』が復刊してしまった。
しかし、文庫にして300ページちょっと。無駄な描写などなく、するするとテンポよく進んでいく。ファンタジー系の作品に見られる、お前はそんなに昔が良いのかとつっこみたくなるような過去への強烈な郷愁要素など微塵もないのもいいなあ。
計画から脱獄までの期間がちょっと短すぎるんじゃないのかとも思うのだけど、脱獄しなければいけない理由といい、脱獄手段といい、どういう形で脱獄するのかという部分がひらめきさえすれば、実際の行動そのものにはそれほど時間は必要ないので、別に問題ないのだろう。
実際に実現可能かどうかは別として、読んでいる分には納得のいく、そして意表をつく脱獄計画で、凄いよフィニイと叫びたくなる。
うーむこれは積読本を発掘して未読のミステリも読まないといけないなあ。  

2007年08月17日

ファイナル・カントリー

ファイナル・カントリー (ハヤカワ・ミステリ文庫 ク 5-6)

  •  ジェイムズ・クラムリー/

  • 販売元/出版社 早川書房

  • 発売日 2007-04


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大鹿マロイっぽい人物が登場して、『さらば愛しき女よ』っぽい展開を見せるのだけれども、そぶりだけでその後の展開はどんどんとおかしくなっていく。そもそも、謎の女の依頼を受けて殺されかけるは、ある人物の居場所を知っている人間とその場所へ行って殺されかけるは、生きているのが不思議なくらいな目にあい続けるのだ。もうじき還暦を迎えようとする人間がここまで元気というかパワフルなのが信じられないのではあるけれど、ここまでくるとそんな人間が一人くらいいてもおかしくはないかという気分にもなってくるし、こんなパワフルなじじぃになれるものであればなりたいものだという気もする。とうてい無理だが。
前作でようやく念願の遺産を手に入れることが出来たけれども、ミロには安住の地は無いし、平穏な生活には満足が出来ない。
ミロの生活をぶちこわすためにはここまでしなければいけないのかと思うほど複雑で、暴力的で、そして悲劇の物語となっている。シルバー・ダガー賞受賞というのが不思議だったのだけれども、終盤の驚愕の結末を読めば、受賞したのも不思議ではないことがよく判る。
この先どこへと向かっていくのだろうか。  

2007年05月03日

死者との結婚

死者との結婚

  •  ウィリアム・アイリッシュ/

  • 販売元/出版社 早川書房

  • 発売日 1976-11


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センスだけで書ききった作品という気もする。同じ年に書かれた『喪服のランデブー』がミステリとしてのひねりはなんにもなく、『黒衣の花嫁』と全く同じプロットを使いながらもウールリッチ独特のサスペンスと哀愁だけで描ききってしまったことを考えると、この時期のウールリッチはミステリを描くことに興味を失っていたようにも思える。
この話も他人に間違えられ、流されるままに別人として生活をさせられてしまった一人の女の話を、ウールリッチ独特の強烈なサスペンスだけで描ききってしまっている。冒頭の数頁だけ読んだだけで既にどのような結末を迎えなくてはいけないのかわかってしまうし、それに向けて一直線だ。そんな話をウールリッチの筆で読まされるということは好きな人間にとっては至福の時間ともいえるのだが、駄目な人にはそれだけの話では苦痛かもしれない。
もちろん、途中で殺人事件が起こるというミステリ的な要素はあるのだけれども、その決着の付け方はあまりうまくいっていないように思える。なにしろ誰が殺したのかわからないまま話の幕が閉じてしまうのだ。おそらく全盛期のウールリッチであればもう少しうまく騙してくれただろうけれども、主人公たちの考え方に粗がありすぎる。もっともそんな主人公たちだからこそこのような結末を迎える羽目になったとも言えるのだけれども。  

2007年03月09日

ガラスのなかの少女

ガラスのなかの少女
ジェフリー・フォード著 / 田中 一江訳
  

2006年11月22日

オールド・ディック

「オールド・ディック」
L・A・モース著

本棚の奥に眠っていたので取り出してパラパラと読み出したところ、どんな内容だったのかすっかり忘れていることに唖然とするも、いや、これが読み始めたら面白くってどうにも途中で止めることが出来なくなってしまい、一気に読み終えてしまいました。
こんなに面白い本が絶版というのも罪だよなあと思っていたらビーケーワンでは注文ができるではありませんか。うーん多分取り寄せで在庫無しとなるんだろうけど。

ちょっと走れば息も絶え絶え、死神が見えそうになる78歳の元探偵が主人公。三十年以上前に自分が刑務所にぶち込んだ元ギャングが現れて、孫が誘拐されたから身代金の受け渡しに付き添ってくれと依頼される。元ギャングも年寄りだし、その他、元警官、元映画女優と「元」がつく人物のオンパレード。
それでもこの主人公、口先だけはタフガイぶりが健在で、そのためにいろいろとやっかいな目にあうのだが……。
しかし痛めつけられても最後まで自分の事件をやり遂げてしまうところが素晴らしい。歳をとったら私もこんな爺ぃになりたいものです。
老人が主人公というとその他に、エド・ゴーマンの「夜がまた来る」があるけど、こちらは64歳とだいぶ若い。題名から想像できるように、ちょっとシリアスな話。
ロバート・L・フィッシュの「殺人同盟」シリーズは、過去の輝かしい栄光から置き去りにされ、経済的にも窮地に立たされた三人の老ミステリ作家が自分たちの小説の中で使った殺人方法を利用して、報酬と引き替えに殺人を引き受ける「殺人同盟」を立ち上げるというユーモアミステリ。「懐かしい殺人」「お熱い殺人」「友情ある殺人」の三作があるけど、これも絶版。
ダン・シモンズの「殺戮のチェスゲーム」では、ユダヤ人強制収容所の生き残りでもある精神科医のソール ・ラスキがマインド・バンパイアと戦うお話。敵のマインドコントロールに対してソール ・ラスキが用いた対抗策が実に感動的かつ素晴らしい。
短編になると沢山ありそうなんだけど、すぐに思い出せるのが、筒井康隆の「わが良き狼」。そういえば、筒井康隆は結構老人が主人公の小説を書いているんだよねえ。  

2006年08月31日

バッド・ニュース

バッド・ニュース
ドナルド・E.ウェストレイク著 / 木村 二郎訳
  

2006年08月02日

ダークライン

作者は生前、かたくなに復刊を拒んでいたのに、遺族の方は了承。
復刊ドットコムblog」によれば佐々木丸美の作品全18点が復刊する事となったようです。もちろん復刊はうれしいかぎりだけども、何だか微妙な気分です。

ダークライン
ジョー・R.ランズデール著 / 匝瑳 玲子訳
  

2006年06月09日

神のはらわた

神のはらわた
ブリジット・オベール著 / 香川 由利子訳
  

2006年05月18日

明日なき二人

明日なき二人
ジェイムズ・クラムリー著 / 小鷹 信光訳
  

2006年05月01日

セントラル・パーク事件

セントラル・パーク事件
クレイグ・ライス著 / 羽田 詩津子訳
  

2006年03月29日

ホッグ連続殺人

東京創元社はデュマレスト・サーガの復刊に乗り出したようですが、全部読む気力なんてありませんよ。でもこれを機会にせっかくだから一冊くらい読んでみようかな。一方、ハヤカワ名作セレクションの方はというと、来月はクラークの「太陽からの風」一冊ですが、再来月はヴォクトの「宇宙嵐のかなた」です。未読だったのでこれはうれしいセレクションです。
うれしいといえば晶文社の撤退によって中断してしまった晶文社ミステリは、「藤原編集室」の「日々のあぶく」によれば、河出書房新社が引き継いでくれることとなったようでこれまたうれしいというか、既に奇想コレクションを立ち上げている上でさらに晶文社ミステリまで引き受けてくれるなんて素晴らしすぎますよ、河出書房新社さん。
で、復刊相次ぐ今日この頃ですが……。

ホッグ連続殺人
ウィリアム・L.デアンドリア著 / 真崎 義博訳
  

2006年02月22日

恐怖の冥路

コーネル・ウールリッチ著 / 高橋 豊訳
  

2005年12月16日

酔いどれ探偵街を行く

酔いどれ探偵街を行く
カート・キャノン著 / 都筑 道夫訳
  

2005年10月18日

魔術師を探せ

どうせならば「魔術師が多すぎる」の方を復刊してくれれば良かったのですが、律儀にというかダーシー卿シリーズの最初の話の方を復刊してくれたってことはそのうち「魔術師が多すぎる」も復刊してくれるということなのだろうか。
しかし、今読んでみると「魔術師を探せ」に限ってみれば、水準以上の作品ではあるものの無理して読まなければいけない内容でもありませんでした。しかしこれは、発売された当時読んでおかなかった自分が悪いだけでもあります。
科学の代わりに魔法が発達した世界で、殺人事件が起こり、それを魔法に頼らず論理的に解決するというのがこのシリーズの要なのだけれども、どの話もわりと地味。第一話は容疑者が少ないために意外な犯人という条件を考えてしまうとそれだけで犯人の予測がついてしまうし、第二話はどちらかというと謀略小説風。
第三話が、島田荘司ではないけれども冒頭の魅力的な謎という点では一番面白かったのだけれども、鍵のかかった部屋への侵入手段が安易な手段だったのでちょっと残念。しかし、順番的に面白くなっていくので次作の「魔術師が多すぎる」が読みたくなってくる。
こうして読み終えてみると、なるほどジョン・W・キャンベルJr好みの内容でもあるので、ミステリ系の雑誌ではなくSF雑誌に掲載された理由もよくわかります。日本ではミステリのレーベルで出版されたのだけれども、SFのレーベルで出版されたらまた、ランドル・ギャレットの評価も変わったのかもしれません。

でもなあ、ランドル・ギャレットといえば「銀河の間隙より」だよなぁ。  

2005年07月14日

休暇はほしくない

休暇はほしくない
田中 一江 / Hall Parnell
  

2005年06月16日

ミステリは大人の童話

暴徒裁判
山本 やよい / Rice Craig
  

2005年04月30日

ウールリッチ、みたび

「暗闇へのワルツ」読み終えました。

わたしゃもう、今までウールリッチのどこを読んでいたんだと反省しましたよ。
話の内容は、男が悪女にはまって人生転落。ただそれだけです。大甘のメロドラマにウールリッチ特有のサスペンス風味。陳腐な物語でもウールリッチの手に掛かると、まるで詐欺のように全然別な物語へと変えられてしまいます。全盛期のウールリッチはここまですごかったんだと改めて思いました。
ちょっと失望した「黒い天使」も、またいつか読み返してみようかと思います。  

2005年04月21日

ウールリッチ、ふたたび

暗闇へのワルツ
高橋 豊 / ウィリアム・アイリッシュ
  

2005年04月18日

ウールリッチ

オンライン書店ビーケーワン:黒い天使

「黒い天使」コーネル・ウールリッチ

夫が別の女のもとに走ろうとしていることに気づいたアルバータは、意を決して夫の浮気相手に会いに向かうが、浮気委相手は何者かに殺されていた。
夫に容疑がかからぬよう、そばにあった住所録を持ち去るものの、夫は殺人容疑で逮捕され、そして死刑判決を受けてしまう。
アルバータは夫の容疑を晴らすため、住所録を手がかりに真犯人を捜しに乗り出す。

久しぶりのウールリッチです。
死刑執行のタイムリミット、次々と事件関係者を渡り歩く構成とウールリッチの特徴を全てひとまとめにしたような作品ですが、ひとまとめにしたから傑作になったかというとそうではないのがつらいところ。タイムリミットのサスペンスは何もなく、短編をつなぎ合わせたような展開で、一人目の男の話で、変だなと思ったのだけれど「幻の女」のような話を期待すると肩すかしを食らってしまう。
ハッピーエンドを勝手に期待していたために結末に唖然としてしまったのですが、事件の発端についてよくよく考えれば、こういう結末になって当然なわけで、まんまとだまされてしまいました。
ウールリッチの特徴を集めた結果、悪女ものテイストが最後に勝ったってことで、悪女ものが好きではない自分にとってはどうにもこうにも腑に落ちない話でもありました。