2008年05月02日

ライノクス殺人事件

ライノクス殺人事件 (創元推理文庫 M マ 8-3)

  •  フィリップ・マクドナルド

  • 販売元/出版社 東京創元社

  • 発売日 2008-03-24

Amazon/楽天ブックス



あまり過剰な期待などせずに読めばけっこう楽しめる作品なので、文庫という形態で出たのはじつにありがたい。
「結末」から始まって最後が「発端」で終わるとくるとついつい過剰な期待をしがちなんだけれども、構成そのものにはあっと驚く仕掛けがしてあるわけではない。
しかし、だからといって単にやってみたかったからやってみたというようなレベルの物でもなく、この結末を効果的に生かすためだったらこのようにするしかなかっただろうなあという代物なので、読み終えた後に冒頭の「結末」を思い出して思わずニヤリとしてしまうのだ。
死人が出るのにそれほど悲壮感というか読後感は悪くなく、かといって不真面目でもなく、どちらかといえばコンゲーム小説を読んでいるような感じに近い。
とくに後半、一難去ってまた一難の状況において、ライノクス社の経営陣がそれを解決するための場面は読んでいて爽快。なによりも最後に決め手が知力ではなく腕力に訴える点が素晴らしい。知力で勝負ではなく殴り合いで決着をつけるのだ。  

Posted by Takeman at 12:30Comments(0)TrackBack(0)創元推理文庫
2008年04月25日

検死審問―インクエスト

検死審問―インクエスト (創元推理文庫 M ワ 1-1)

  •  パーシヴァル・ワイルド

  • 販売元/出版社 東京創元社

  • 発売日 2008-02

Amazon/楽天ブックス



なんだかんだいっていろいろな本が復刊されるようになった。
その分だけ出版点数が増えていればいいのだけれども、全体の数が変わらないのであればそれだけ新刊が少なくなってきているというわけで、喜ぶべきなのかそれとも憂うべきなのか微妙なところで、特に東京創元社がここまで過去の作品を復刊し続けている有様は心配にもなってくる。
まあそれはともかく実に変な話だった。いや変な話というのは悪い意味ではない。全編に流れるユーモアは、新訳というおかげもあるかも知れないが、いま読んでも全然色あせていなくて楽しめるし、事件の真相はといえば、さりげない伏線と審問記録という体裁の巧妙な作りによってうまく隠され最後まで楽しむことが出来る。
全編全てにおいて無駄がないというべきか、分量的にはコンパクトにまとまっていながらも読み終えて十分な満足感を得ることが出来るという点はさすがだと言わざるを得ない。ミステリとしても、ミステリ以外の小説としても楽しめるのだ。
ああ、続編が楽しみである。  

Posted by Takeman at 12:30Comments(0)TrackBack(0)創元推理文庫
2008年04月18日

墓標なき墓場

墓標なき墓場 (創元推理文庫 M こ 3-1 高城高全集 1)

  •  高城 高

  • 販売元/出版社 東京創元社

  • 発売日 2008-02

Amazon/楽天ブックス



今の基準でいえば、長編というよりも中編といったほうがい良いような分量だ。
いろいろなものをそぎ落としたというよりも盛りつけなかったといった感じに近いので良くいえば淡々とした雰囲気が漂っている。もう少しいろいろと盛りつけてもよかったんじゃないかとも思えるのだが、これが著者の第一長編であることを考えるとこれはこれでいいのではないかという気もしてくる。それ故にこれが唯一の長編であることが非常に残念で仕方ないのだが、無い物をねだっても仕方ない。
しかし語り口があっさりとしているのに対して、事件の方は込み入っており、意外な真相が待ち受けているのである。それ故に主人公が超人的な洞察力でもって一気に終盤を突き抜けてしまっている部分が惜しいのだが、それはまあ真相を見抜けなかった人間のひがみかもしれない。
というわけで欠点を挙げればきりがないのだが、読み終えてずっしりと響いてくる題名の意味とこの全体を流れる雰囲気の前にはそんな欠点をあげつらう気など起こらなくなってくるのだ。  
タグ :高城高

Posted by Takeman at 12:30Comments(0)TrackBack(0)創元推理文庫
2008年04月16日

悪夢の五日間

悪夢の五日間

  •  フレドリック・ブラウン

  • 販売元/出版社 東京創元社

  • 発売日 2000

Amazon

さて、フレドリック・ブラウンのミステリである。
昨日から今朝ににかけて妻と喧嘩した主人公が仲直りしようと思いながら帰宅すると妻が誘拐されていた。
唯一の手がかりはタイプライターに残された犯人からのメッセージのみ。そこには身代金の金額と二人の名前が書かれてあった。一人は妻を誘拐され、それを警察に届けたために妻を失った男の名。もう一人は犯人の要求通りにしたために妻を失わなかった男の名。そして主人公に与えられた猶予は五日間。
コーネル・ウールリッチが書いたらさぞかしサスペンスフルな物語になったのかも知れないが、この物語を書いたのはブラウンである。
サスペンス要素には重きを置かず、主人公はきわめてシステマティックに考え、そして行動する。
主人公は、犯人探しなどせずに犯人が要求した身代金の額を用意するために手持ちの資産を現金化するためにただひたすら飛び回るのである。
それのどこが面白いのかと問われるとまあ確かにそれほど面白くはないのだけれども、警察の手を借りることの出来ない身である以上、いかにして身代金を用意するかという問題に終始するのはあたりまえのことだ。
しかし、ブラウンの筆運びは軽妙でだれるところが無く意外な結末も用意されている。そして何よりも洒落たラストの一文も含めて読後感が非常に良いのである。  


Posted by Takeman at 12:30Comments(0)TrackBack(0)創元推理文庫
2008年03月04日

原子の帝国

原子の帝国 (創元推理文庫 609-6)

  •  A・E・ヴァン・ヴォークト吉田 誠一

  • 販売元/出版社 東京創元社

  • 発売日 2000

Amazon


なんとなくヴァン・ヴォクトの『原子の帝国』を読んでみた。いや、なんとなくというのは嘘で、続編の『銀河帝国の創造』が手に入り、ようやく気持ちよく読むことができる状態となったので読むことにしたのだ。
原子力戦争によってそれまでの高度な科学技術の知識が失われ、宇宙船や原子力機関を持ちながらもその動作原理は知らない状態で、科学者たちでさえ迷信を信じ四柱の原子の神を奉っている世界。
主人公は皇帝の孫でありながら、母親の胎内にいるときに放射能を浴びたために奇形児として生まれたため殺される運命にあったのだが、宮廷科学者の一人によって救われ、科学者としての教育を受ける。
名門の出身でありながら身体的ハンディキャップのある主人公が、知性でもってのし上がっていくという物語はロイス・マクマスター・ビジョルドの<ヴォルコシガン・サーガ>にも共通するのだが、この本の場合、主人公は表舞台に出てくることはほとんど無く、主人公の祖母であり皇帝の妻でありながら野心家のリディアによる権謀術数の物語となっている。
遙か未来の物語でありながらどことなくローマ帝国を彷彿させる設定はロバート・グレーヴスの『この私、クラウディウス』が元ネタらしく、未読なのでどこまでそっくりなのかはわからないのだが実際の展開も同じらしい。
というわけでかなり地味なというか歴史書を読んでいるかのような話だったので驚いてしまった。
もう一つ驚いたのが併録されている「見えざる攻防」の主人公の名前で、なんとマイクル・スレード。だからなんなんだと言われるとまあ確かにそうなんですけど。  


Posted by Takeman at 12:30Comments(0)TrackBack(0)創元推理文庫
2007年12月06日

手斧が首を切りにきた

バットマン、スーパーマンときたら次はスパイダーマンしかないのだが、あいにくこれといっためぼしい物が見あたらない。

というわけで、全然関係ない話になる。

手斧が首を切りにきた

  •  フレドリック・ブラウン/

  • 販売元/出版社 東京創元社

  • 発売日 1973-04


Amazon




手斧が首を切りにきた。

といって、あなたがどんな内容を想像したのか知らないが、ここで語られるのはフレドリック・ブラウンの話だ。
才人ブラウンの手によるものだから手堅くまとまっているけれども、まあ正直言ってわざわざ読むようなものでもない。とくにブラウンの奇抜な発想みたいなものを期待しているような場合は。
基本となるストーリーの合間に、ラジオ放送・映画・スポーツ放送・テレビ放送などがはさまれるのだが、そこで語られている内容は主人公の物語なのである。スポーツ放送ではいきなり中継を中断し、主人公の行動を追いかける。そしてレポーターは主人公に話しかけたりするのである。もちろんそれはブラウンのお遊びでありメタフィクション的な展開にすぎないのだが、そこまでする必要があったのかといえば、多分無い。ブラウンの才気による勇み足だろう。
しかし、それでも<エド・ハンター>シリーズにおいて顕著なブラウンの登場人物に対するやさしい視点の物語を望んでいる場合、この本を読む価値はある。そして何よりも、最期の一頁でそれまでの展開全てをぶちこわしてしまう衝撃はなんとも形容しがたい切なさと悲しみをもたらすし、その構成はアイデアの元となったマザーグースの歌と全く同じであることに気付いたとき、ブラウンの才人ぶりに感心するのだ。

Gay go up and gay go down,
To ring the bells of London town

Bull's eyes and targets,
Say the bells of St. Marg'ret's

Brickbats and tiles,
Say the bells of St. Giles'.

Oranges and lemons,
Say the bells of St. Clement's.

Pancakes and fritters,
Say the bells of St. Peter's.

Two sticks and an apple,
Say the bells at Whitechapel.

Old Father Baldpate,
Say the slow bell sat Aldgate.

Maids in white aprons,
Say the bells at St. Catherine's.

Pokers and tongs,
Say the bells at St. John's.

Kettles and pans,
Say the bells at St. Anne's.

Youu owe me five farthings,
Say the bells of St. Martin's.

When will you pay me?
Say the bells at Old Bailey.

When I grow rich,
Say the bells at Shoreditch.

Pray, When will that be?
Say the bells at Stepney.

I'm sure I don't know,
Says the great bell at Bow.

Here comes a candle to light you to bed,
Here comes a chopper to chop off you head.

レスリー・ポールズ・ハートリーの「遠い国からの訪問者」もこの歌が関係する話だそうなのだが、KAWADE MYSTERYで企画されている『ポドロ島』にこの話が収録されるといいなあ。  

Posted by Takeman at 12:30Comments(0)TrackBack(0)創元推理文庫
2007年11月16日

千の脚を持つ男―怪物ホラー傑作選

千の脚を持つ男―怪物ホラー傑作選 (創元推理文庫 F ン 8-1)

  •  シオドア・スタージョン/

  • 販売元/出版社 東京創元社

  • 発売日 2007-09-22


Amazon/楽天ブックス




初っぱなからのいかにもというかあまりの古くささにちょっとついていけず、これがSFだったならば平気なんだけどなあなどと思ってしまうあたり、やっぱり私はホラーマニアなんじゃないんだなあと思った。ウルトラQもリアルタイムで見ていたわけじゃないし、まああの雰囲気は嫌いじゃないけどそれほど思い入れがあるわけでもないのだ。
もっとも、ついていけない部分があったというだけで、つまらなかったわけではなく、「存在の環」で有名なP・スカイラー・ミラーの「アウター砂州に打ちあげられたもの」なんかの終盤の展開は思わずニヤニヤしてしまったし、編者が怪作だといっている表題作、フランク・ベルナップ・ロングの「千の脚を持つ男」なんかはけっこう自分好みの話だった。
とりわけ、ジョン・コリアの「船から落ちた男」の中でUMAを追い求める登場人物が、闇雲にUMAを探し回るのではなく、情報を集めて怪物の大きさや生態を理論的に計算している部分に思わず感動してしまったりするのであった。このあたりはハードSFだよなあ。
全体としてモンスターは出てくるけれども、それほど怖い話ではなかったところが自分としては良かったかな。  

Posted by Takeman at 12:30Comments(0)TrackBack(0)創元推理文庫
2007年09月17日

記憶をなくして汽車の旅

記憶をなくして汽車の旅 (創元推理文庫 M リ 5-1)

  •  コニス・リトル/

  • 販売元/出版社 東京創元社

  • 発売日 2007-08


Amazon/楽天ブックス




気が付くと列車に乗っていたのだが、記憶を無くしていて何故列車に乗っているのか、自分が誰なのかさえも判らない。
やがて親戚と名乗る一行と合流し、オーストラリア横断列車の旅が続くのだが、殺人事件が起こる。果たして終着駅に着くまでに記憶は戻るのか、そして殺人事件は解決するのだろうか。
という設定はもの凄く魅力的でそれだけでも期待感は高まるうえに、おまけにスクリューボールコメディでもあるということで、どう転んでもつまらないことは無いだろうと思った。しかし、今まで翻訳されなかったということは、やはりそれなりの理由があるわけで、掘り出し物というのはめったに出るものではないということを実感してしまった。
もっとも、これは過剰に期待しすぎてしまった自分が悪いわけで、期待をしなければそれなりに面白いし、まあなんといっても260ページと短い。無駄に長い小説を読まされるよりはこのくらいの長さであれば少々期待はずれだったとしても我慢が出来る。
列車の旅ということでもう少し旅の雰囲気を味わうことが出来れば良かったのだが、旅の雰囲気はあまり味わえなかったのが少し残念。しかし事件の真相はけっこう意外で後味も良いし、終わりよければ全てよしという気分になるから不思議だ。  

Posted by Takeman at 12:30Comments(0)TrackBack(0)創元推理文庫
2007年08月30日

通り魔

通り魔

  •  フレドリック・ブラウン/

  • 販売元/出版社 東京創元社

  • 発売日 1963-03


Amazon




フレドリック・ブラウンといえば、SF作家としてのイメージが定着してしまっているのではないだろうか。
ブラウンの中で好きな話を一つだけ挙げるにといえばたいていの人はおそらく『発狂した宇宙』か『火星人ゴーホーム』かそれともSF短編のどれかを挙げるに違いない。『天の光はすべて星』を挙げる少々ひねくれた人もいるかも知れないがこれもSF小説だ。
『まっ白な嘘』や『復讐の女神』だって数々のSF短編の延長線上で読んでいてミステリとしては読んでいないのではないだろうか。
しかし、ブラウンは長編に関していえばSFよりもミステリのほうを沢山書いているのである。
まあ、沢山書いているから凄いというわけではないし、ブラウンの本領発揮といえば長編よりも短編だし、持ち味である奇抜な発想もミステリよりはSFとしての方が自由度が高くなるわけで、SF系の作品と比べてしまうとミステリ系の長編はワンランク落ちてしまうのも事実だ。
しかし、10代の頃にブラウンのSF短編を読んで熱狂的にSFにはまり込んだ時代を経て、やがて年を取り中年に差し掛かった今現在、ブラウンのSF短編を再読して再び熱狂的になるには少し照れくささや、ひねくれた考えが出てくる程度に年を取りすぎた身にとっては、ブラウンのミステリは心地よく感じられるのである。とくに<エド・ハンター>シリーズなんて主人公エドの成長物語となっていて、最高なのだ。シリーズ第一作なんてMWA最優秀処女長編賞を取っているのだよ。
それと同時に、コーネル・ウールリッチが当時の都会の雰囲気を余すところ無く伝えていたのと同様、ブラウンの長編ミステリも当時の風俗を旨く伝えているのである。
というわけで前置きが長くなってしまったのだが、この本はブラウンのおそらく唯一の映画化された作品である。しかも監督はダリオ・アルジェントだ。
もっとも、まだデビュー前のダリオ・アルジェント、新人にとっては版権料が高すぎて手が出なかったので、アイデアだけ借用して別な話にしてしまえばOKだよねってことで、勝手に話の方をでっち上げて撮ってしまったやつなので、正式な映画化というわけじゃないんだけどさ。
じゃあ映画化されたとは言えないんじゃないのかというと、1958年にガード・オズワルド監督がちゃんと版権取って映画化していたりもする。
内容はといえばまあ、正直なところ語るべくもない。意外な真相はあるけれども、今となってはあちらこちらで使いまわされてしまって古びてしまっているせいもある。
しかし、主人公が通り魔事件の被害者に惚れてしまい、その女性と一夜を共にしようと事件解決にのりだし、そして最後に彼女と一夜を共にすることが出来たというこの物語は、この内容に嘘偽り無く、ハッピーエンドで幕を閉じる話なのだなあなどと思いながら実際に読み終わってみると、この簡単なあらすじから想像するものとは全然違う物語になっていることに気付かされ、やっぱりブラウンなのだと思わされるのである。ああ、このひねくれ具合がブラウンらしいのだ。
残念なのはこの本も含めてブラウンの長編ミステリは全て絶版であることだ。
『3,1,2とノックせよ』とか『手斧が首を切りにきた』とか『死にいたる火星人の扉』など、題名からして魅了的なのにもったいないなあ、などと思っているのは私だけかもしれないが。  

Posted by Takeman at 12:30Comments(0)TrackBack(0)創元推理文庫
2007年08月14日

三人目の幽霊

三人目の幽霊

  •  大倉 崇裕/

  • 販売元/出版社 東京創元社

  • 発売日 2007-06


Amazon/楽天ブックス




落語は話芸なのでそれを活字で表現しようとするのはいささか分が悪いのですが、それでも作者自身が落語家だったりすると『ファイティング寿限無』のような面白い話が出来てしまうし、書き手が落語家でなくっても『しゃべれどもしゃべれども』のような元気の出てくる話が出来てしまうわけです。一方で『滝田ゆう落語劇場』のような、落語の話そのものを漫画にしてしまうものもあったりして、こうなるともう滝田ゆうによる漫画という形式での話芸といってもいいかも知れません。
ミステリに目を向けると、落語とミステリというのは相性がいいのか、北村薫の<円紫さんと私>シリーズや田中啓文の<笑酔亭梅寿謎解噺>シリーズがあります。この二作は落語家が登場するわけですが、都筑道夫の『きまぐれ砂絵』になると落語家は登場せず、落語の話そのものがモチーフとして使われたりもします。
で、大倉崇裕の『三人目の幽霊』となると落語家が登場し、落語の世界の話も出てくる上に、落語の話がモチーフとして使われるのだけれども、まったく落語と関係のない話があったりと、意外とまとまりがなかったりします。まあ良くいえばバラエティにとんでいるともいえるのですが。
しかし、読んでいて驚いたのが想像していた以上に「推理」の部分が欠如していたことで、思わず柳広司の『百万のマルコ』を思い出してしまいました。まああそこまで凄くはないのですが、もう少し「推理」の過程があってもいいんじゃないのかなあと、続編に期待するところです。  

Posted by Takeman at 12:30Comments(0)TrackBack(0)創元推理文庫
2007年08月08日

ルピナス探偵団の当惑

ルピナス探偵団の当惑

  •  津原 泰水/

  • 販売元/出版社 東京創元社

  • 発売日 2007-06


Amazon/Bk1/楽天ブックス

津原泰水という作家は実にやっかいな作家で、ど真ん中の直球を投げているようなふりをしてもの凄く変な球を投げてくるのである。しかもそれが直球のままだったりするからやっかいなのだ。
表紙裏の登場人物一覧からして既に変である。「謎の老人」などという人物が何喰わぬ顔をして紛れ込んでいるし、第一話の犯人と説明されている人物さえいる。そもそも第一話はいきなり倒叙ミステリで、読者は一ページ目にして既に誰が犯人なのかわかるのだ。そして謎の焦点は、犯人が何故、犯行を犯した後で側にあったピザを食べたのかという問題に集約されることとなる。謎としては魅力的な謎である。
しかし、この謎が解けても犯人を捕まえる証拠とはなり得ないところがやっかいというか、犯人逮捕の決め手は別のところにあるというのがひねくれている。そもそも、第一話でピザの謎を解くのは吾魚彩子という少女で、彼女がこのシリーズの探偵役になるのだろうと思っていると、第三話では彼女はほとんど活躍せず、観察力の鋭い祀島君が犯人を指摘するのである。あくまで探偵団としての活躍を描こうとしているのであろうか、今後が楽しみなシリーズである。  


Posted by Takeman at 12:30Comments(0)TrackBack(0)創元推理文庫
2007年06月14日

夢館

夢館

  •  佐々木 丸美/

  • 販売元/出版社 東京創元社

  • 発売日 2007-04


Amazon/Bk1/楽天ブックス


どういう傾向の話になるのかということはおぼろげながらも知ってはいたものの、いざ読んでみるとやはりそれなりの衝撃は受けるものです。
佐々木丸美の世界ということでは確かに繋がっており、これでもって三部作としてしまうのは何も不思議ではないのですが、それでも一作目の『崖の館』を本格ミステリとして読んでいる身としては、この作品がそこから離れたジャンルへと移ってしまっていることに衝撃を受けるのです。
特に、一作目での犯人の告白に中井英夫の『虚無への供物』を思い出してしまった身としては、ああ、佐々木丸美はそこからこういう方向へと向かっていったんだなと思う部分があって、自分が期待していた方向へとは向かわなかったことに少しがっかりもするわけです。もっとも、だからといってこういう方向へ向かっていったことが駄目というわけではありません。
鈴木光司の『リング』三部作がホラーから始まって科学、そしてSFへと変化したのとはある意味逆方向でもあるけれども、本格ミステリから幻想小説へとシフトして、そして何よりもハッピーエンドとなったのだから良いではないですか。  

Posted by Takeman at 12:30Comments(0)TrackBack(0)創元推理文庫
2007年06月13日

水に描かれた館

水に描かれた館

  •  佐々木 丸美/

  • 販売元/出版社 東京創元社

  • 発売日 2007-02-28


Amazon/Bk1/楽天ブックス


とりあえず前作の『崖の館』を読んで、これが佐々木丸美の世界かと思っていた自分があさはかだった。まだまだあれは序の口というか、入り口に過ぎなかったのである。
なるほど、たしかに佐々木丸美の虜になってしまう人がいるわけだ。こいつは強烈というか凄まじいなあ。しかし、これでさえもまだまだ佐々木丸美の世界の全てではないとしたら、それは末恐ろしい。
ミステリとしてみた場合、これが佐々木丸味の世界であるということを受け入れてさえしまえば、この反則的な事件の真相でさえ反則でも何でもなく、これ以外の答えなど考えつかないほどの合理的な真相である。従ってこれを反則だなどという人間は、真相解明に至るまでに作者が書き連ねてきた事柄を、そんな馬鹿なことがあるものかと話半分で読みふけってきただけなのだ。俺もそうだけど、途中で気がついて猛省したよ。
佐々木丸美の世界においては、作者が書いた事柄のみが真実であり、全てである。たとえそれが現実世界の事象と食い違っていてもだ。
虜にはならないのだけれども、もう少しこの世界を見つめてはいたくなる世界だなあ。  

Posted by Takeman at 12:30Comments(0)TrackBack(0)創元推理文庫
2007年06月12日

崖の館

崖の館

  •  佐々木 丸美/

  • 販売元/出版社 東京創元社

  • 発売日 2006-12-21


Amazon/Bk1/楽天ブックス

読者にとっても作者にとってもある意味災いをもたらせてしまった不幸な作品であります。
この作品に関してのでたらめな書評が新聞に掲載されたことで作者がマスコミ嫌いになり、まあこれが全ての原因ではないものの、作者の生存中は全ての作品の復刊がかなわなくなってしまったからです。
体言止めの多い癖のある文体は最初のうちは慣れないと読みにくさを感じてしまうけれども、うーむ、これは慣れてしまうと確かにはまる文章であります。
ミステリというレーベルで復刊されたけれども、文章の合間から醸し出される雰囲気は謎解き小説というよりも幻想小説寄りで、外部から遮断された館の中で、徐々に張り巡らされていく登場人物たちの間の緊迫感は、読んでいてこのまま事件など起こらずに幕を閉じて欲しいと思ってしまったほどです。
しかしそんな思いも叶わず、殺人事件が起こります。それまでの雰囲気からは想像していなかったというか、意外なほどミステリとしての骨格はしっかりしており、ある種のアンバランスさがこれまた堪りません。
そして何よりも一番の驚きは犯人の動機とラストでの一大演説。それまでの雰囲気を全てぶち壊すかのような凄まじさなのですが、中井英夫の『虚無への供物』を思わず思い出してしまいました。
そういう意味では、この物語も昭和という時代の物語だったのでありましょう。  

Posted by Takeman at 12:30Comments(0)TrackBack(0)創元推理文庫
2007年06月11日

エデンの黒い牙

エデンの黒い牙

  •  ジャック・ウィリアムスン/

  • 販売元/出版社 東京創元社

  • 発売日 2007-05


Amazon/Bk1/楽天ブックス


遙か大昔、あまりにも強力すぎるので封印されてしまった魔法があった。
月日が流れ、一人の皇帝が世界征服をもくろむ。そして世界は戦乱の渦にまきこまれた。
そこでこの魔法の封印を解き、皇帝を倒そうとしたのだが、この魔法の威力は思っていたほど強くはなかった。
魔法技術の未発達だった大昔は強力だったけれども、魔法技術が発達した現在では既に時代遅れとなってしまっていたのだ。

というような設定のゲームが昔ありました。
この本を読み終えて思い出したのが、このゲームのこの設定。さすがに60年近く昔に書かれた本です。書かれた当時は危険だったのかも知れませんが、時の流れというものは情け容赦ありません。
もっとも、危険じゃないからつまらないかといえばそんなことはないし、そもそも危険だから面白いというわけでもありません。
それにしても驚くのは物語の展開の早さです。こんな早い段階でこんな展開をしてしまっていいのかと思うくらいにスピーディ。おまけに怪しげな人物は登場した瞬間から既に怪しく、あまりにも怪しすぎるのでひょっとしたら怪しそうに見えて実は怪しくない人物なのではないかと裏の裏を読みたくなってしまうのですが、そんな複雑なキャラクター設定などなく、怪しい人物はやっぱり怪しいのです。
文章を軽くし、いわゆるラノベ文体にしてしまえばライトノベルとしても立派に通用してしまうんじゃないのかとも思えるこの話、歴史は繰り返すのか、いやそれはともかくジャック・ウィリアムスンって凄いなあと思いましたよ。  

Posted by Takeman at 12:30Comments(0)TrackBack(0)創元推理文庫
2007年04月18日

砂の城の殺人

砂の城の殺人

  •  谷原 秋桜子

  • 販売元/出版社 東京創元社

  • 発売日 2007-03-10


Amazon/Bk1/楽天ブックス

なんだか細かい部分がいちいちと引っかかってしまう話だった。
そもそも探偵役がストーンヒーリングを始めた部分でいきなりつまずいてしまった。何なんだこの後出しじゃんけんみたいな設定は。
論理的思考の持ち主とストーンヒーリングがどうにも結びつかないというか水と油の関係なんじゃないのかと思ってしまうのは俺の偏見なんだろうか。
まあそれはそれとして、次に引っかかったのが舞台となる家の見取り図だ。
普段は綾辻行人の「迷路館」のようなとんでもない館でさえ許容出来るのだけれども、この中途半端に変な屋敷は許容する事が出来なかった。
そもそも何でトイレに小便器が二つもあるのだ。普段からよく客を呼ぶためだからかもしれないのだが、それにしても人里離れたへんぴな場所である、納戸や物置があるくせに客室は何もない、泊まらせることなど考えていなかったのだろうか。ついでに言えば浴室にも便器がある。見た瞬間吹き出してしまったよ。
まあそれもよしとしておこう。
しかし、ミイラ化した人間の首というものは、人がぶら下がってももぎ取れないほど丈夫なのだろうか……。
どれもこれも本筋には影響のない部分である。書かなければぼろが出なかったのにと思うと非常にもったいない気持ちでいっぱいになってしまう。
シリーズ物なので仕方ないとはいえ、どうも基本設定に無理がありすぎて全体に影響を及ぼし始めているんじゃないのかとも思うのだけれども、ミステリとしての部分は悪くないだけに惜しいとしか言いようがない。  

Posted by Takeman at 12:30Comments(0)TrackBack(0)創元推理文庫
2007年04月09日

百万のマルコ

百万のマルコ

  •  柳 広司/

  • 販売元/出版社 東京創元社

  • 発売日 2007-03


Amazon/Bk1/楽天ブックス

マルコ・ポーロといえば『東方見聞録』でイタロ・カルビーノの『見えない都市』あたりを引き合いに出して語ったりなんかするとちょっとかっこいい感想が書けそうな気もするけれども、私の場合、マルコ・ポーロといえばファミコン末期の時代に出たカルトゲーム『東方見文禄』である。
よくもまあ任天堂がこんなゲームを出すことを許可したもんだと思うのだけれども、そんなゲームを喜んで買った自分も自分だ。
柳広司の新作『百万のマルコ』もマルコ・ポーロのほら吹き話である。
十三の連作短編で、一話一話がかなり短いお話だ。そしてマルコの語る話は謎が提唱された瞬間にいきなり幕を閉じる。

かくして、私は莫大な財宝を手にすることが出来たのである。
神に感謝。アーメン、アーメン。

といった感じだ。登場人物でさえ「なんじゃそりゃ」と叫ぶ不条理さ。
この不条理感は『東方見文禄』の不条理感を彷彿させてしまう。おまけに「山の老人」の話も登場する。
ああ、山の老人といえば『東方見文禄』の山のボケ老人である。海の寝たきり老人までも登場する非常に危ないゲームだったよあのゲームは。
一つ一つが短いだけあって、そこに登場する謎は論理クイズとかとんち問題みたいな感じで、そういう問題が得意な人であれば面白いくらいに答えが判るだろうけれども、答えが判らなくっても楽しめる話だった。

かくして、私は『東方見文禄』の不条理感を思い出しつつ非常に楽しい読書時間を過ごしたのである。
神に感謝。アーメン、アーメン。  

Posted by Takeman at 12:30Comments(0)TrackBack(0)創元推理文庫
2007年04月06日

饗宴 ソクラテス最後の事件

饗宴 ソクラテス最後の事件

  •  柳 広司/

  • 販売元/出版社 東京創元社

  • 発売日 2007-01-30


Amazon/Bk1/楽天ブックス

今度の探偵役はソクラテス。よくもまあ次々といろいろな人物を探偵役に仕立て上げるものだと思うのだけれども、それ以上に凄いのは起こる事件がそれに見合う内容であることで、もはやただただ感心するばかり。
しかし、それ故にだろうか、柳広司の書くミステリをごく普通のミステリとして期待するとがっかりしてしまう部分もでてきてしまう。
起こる事件は不可能犯罪が多く、今回は手足を引き裂かれたかのようなバラバラ死体が登場し、普通の人間の力ではとうてい不可能だと登場人物の一人は言う。さぞかしもの凄いトリックがあるのかと思えばそうではなく、事件の真相は究めて、というよりも拍子抜けするくらいに単純且つ矮小化されてしまう。
ではつまらないのかと言えばその逆で、事件の真相が語られた後の部分がもの凄く面白いのだ。まったくもって柳広司という人は、本当はミステリなんて書きたくないんじゃないのかと思うくらいである。しかし、ミステリのフォーマットがあるから寄りいっそう面白くなっているのもまた事実なんだけど。
この読後感っていうのは強いて言えば京極夏彦のミステリと同じ系統のもので、それを考えると京極夏彦の読者がもっと柳広司の本を読んでくれればいいのにとも思うのだけれども、そう単純には行かないのはやはり歴史上の人物を探偵役としている部分なんだろうなあ。  

Posted by Takeman at 12:30Comments(0)TrackBack(0)創元推理文庫
2007年01月29日

竜の館の秘密

竜の館の秘密
谷原 秋桜子著
  

Posted by Takeman at 12:30Comments(0)TrackBack(0)創元推理文庫
2007年01月26日

天使が開けた密室

天使が開けた密室
谷原 秋桜子著
  

Posted by Takeman at 12:30Comments(0)TrackBack(0)創元推理文庫