2008年03月21日

300:1

300:1 (1960年)

  •  J・T・マッキントッシュ一ノ瀬 直二

  • 販売元/出版社 早川書房

  • 発売日 1960

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私の場合は<ハヤカワSFシリーズ>に間に合わなかった年代なので、<ハヤカワSFシリーズ>のラインナップが文庫化されるのを待ち望んでいた側なのだが、100冊あまりの作品が未だに文庫化されないままでいる。
1995年に50周年記念事業として、
『ドノヴァンの脳髄』カート・シオドマク
『超生命ヴァイトン』エリック・フランク・ラッセル
『ラルフ124C41+』ヒューゴー・ガーンズバッグ
『影が行く』ジョン・W・キャンベル・ジュニア
の四冊が何の前触れもなく復刊したことがあったけれども、あくまで<ハヤカワSFシリーズ>としてである。
そんなわけだからこの本も長いこと読むことが出来ないでいたのだ。
長編の翻訳はこれ一作だけ、短編も申し訳程度に訳されただけなので、作者の名前もそれほど知れ渡っているいるわけではない。しかしこの本は、知らない人は知らないだろうけど、知っている人にとっては古典的名著といっても過言ではないだろう……というのはさすがに言い過ぎか。
人類滅亡の危機が訪れ、助かるのは約300人に一人という確率。それがこの本の題名の由来なのだが、破滅ものが好きな人間にとっては実にワクワクする設定ではないだろうか。
そしてこの本は三部構成になっていて、第一部が「300:1」、第二部が「1000:1」、最後が「∞:1」という題名になっている。先へ進めば進ほど生存確率が下がってくるのである。否が応でも高まる期待感だ。
しかし、読み進めていくと反比例する形でワクワク感がしぼんでいく。というのも途中から、ジョン・ブラナーの『原始惑星への脱出』と同じような展開になっていくからである。最初の「300:1」では主人公は、約3000人の町のなかから10人の人間を選び出すという生殺与奪権を与えられた立場、つまり生存確率からはずれた状態であり、それ故の苦悩という部分が描かれていたのに対して、それ以降は主人公も選ぶ側の立場から落とされ、自分自身も生存確率に身を任せる立場になってしまう。
神のごとき立場だった主人公が徐々にその力を失い、ごく普通の人間になってしまうという展開そのものが作者の狙い目だったのかも知れないが、やはり物語として失速したと見た方がいいのだろう。
読み終えてみると文庫化されなかった理由もわからないでもない。というか今となっては賞味期限の切れた古典扱いというのが妥当なところかな。  


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2008年03月17日

Boy's Surface

Boy’s Surface (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)

  •  円城 塔

  • 販売元/出版社 早川書房

  • 発売日 2008-01

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こういう話は二年に一冊くらいのペースで読むことができたらいいなあと前作の時に書いたんだけれども、それから半年後に出てしまいました。それも二冊続けて。
そんなにハイペースで大丈夫なのかと作者の方を心配したくなるんだけれども、それと同時に、そんなハイペースで刊行されて読みこなすことができるのだろうか私はと自分自身の事も心配になってくる。
それならいっそ文庫化されるまで待てばいいのではないかと思うのだけれども、ピンクの表紙は卑怯だ。ついつい手に取ってレジへと向かってしまったではないか。
で、買ったはいいけれどもなかなか読もうとする決心がつかない。
しかし、どうあがいてもこの本を読みこなすことができないのであればいつ読んでも構わないわけだし、それだったならば今読んでしまって心残りは無くしてしまおうと読み始めてみたわけだけれども、やっぱり全体像が見えない話なんだよなあ。
細部は確かに面白いのだ。日本語の中に遺跡を発見だとか、21世紀が回頭するとか、どこからそんな発想が出てくるのだとただひたすら感心するやら呆れかえるやらするのだけれども、なんだかひたすら核心の部分をはぐらかされているかのようだ。
というわけで、全体を見ようとするとするりとすり抜けられてしまって結局のところ、入力はできるのだけれども処理をすることができなくって、いつまでたっても頭の中でぐるぐる回り放しな話なのである。  
タグ :円城塔

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2008年02月20日

SFが読みたい! 2008年版

SFが読みたい! 2008年版―発表!ベストSF2007国内篇・海外篇 (2008)

  •  SFマガジン編集部

  • 販売元/出版社 早川書房

  • 発売日 2008-02

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国内に関しては、菅浩江が善戦したのと桜庭一樹の『赤朽葉家の伝説』が入ったのが意外で、なかなか面白い結果だったけど、海外ではレムが入らなかったのが意外だった程度でまあ妥当なところかな。
ベスト10に関してはまあそんなところだったけど、それ以外の記事としては最相葉月の記事が面白かった。いや、今まで、最相葉月って牽強付会っぽい部分があってあまり好きじゃなかったんだけど、御見逸れ致しました。次は是非とも福島正実の評伝をやっちゃって下さいと思ってしまうのは、私が福島正実びいきなせいもあるんだけど、福島正実って再評価されてもいいと思うんだけどなあ。
各人のベスト5では、国内ベストで朝松健が自作をベスト5に選んでいなかったのにも驚いた。今までは必ず自作をベスト5に入れていたのに、自作を入れないベスト5なんて朝松健のベスト5じゃないぞ。

ひねくれ者の私が2007ベストを選ぶとしたら、誰も入れそうもない作品を中心にこんな感じかな。順位は無し。
海外
ゴールデン・エイジ
星雲組曲
デイ・ウォッチ
真夜中に捨てられる靴
ゴーレム100

国内
水銀奇譚
ジョン平とぼくらの世界
預言者ピッピ(1)
コップとコッペパンとペン
零式


で、各社の刊行予定としては相変わらず国書刊行会が素晴らしすぎるラインナップなんだけど、まあ国書刊行会の場合は今年の予定ではなくって、この先10年の予定といった趣だからなあ。  

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2008年02月12日

夏の涯ての島

夏の涯ての島 (プラチナ・ファンタジイ)

  •  イアン・R・マクラウド浅倉 久志

  • 販売元/出版社 早川書房

  • 発売日 2008-01-09

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『90年代SF傑作選』に収録された「わが家のサッカーボール」を読んだとき、変な話だなあと思ったのだが、あらためてイアン・R・マクラウドの短編をまとめて読んでみるとSFとしては変な話が多い。
おもしろさがSFとしての設定に依存していないというか、一見するとSF的な設定など必要としないのではないかと思ってしまうほど設定と主題が融合しきっている。まあSFでなくても書けそうな話もあるんだけれどもね。
センス・オブ・ワンダーこそないけれども、かみしめればかみしめるほど味が出る話ばかりで、「ドレイクの方程式に新しい光を」なんかはしみじみと胸を打つ切ない話で、ちょっとジャック・マクデヴィット「標準ローソク」を彷彿させる感じでもあったけど、川端裕人の『せちやん 星を聴く人』に置き換えも可能かな。
異星人からのメッセージを探し続けた主人公の元に最後に届いたメッセージが個人レベルのものか個人レベルでは計りきれないものだったのかの違いでもある。私はどちらも好きだ。
ジョーン・D・ヴィンジの「錫の兵隊」っぽい話になるのかなと思っていたらそんな話にならなかった「チョップ・ガール」も切ない話なんだけど、ちょっとだけ救いのある結末で後味が悪くないのが実にいい。
邦題が素晴らしい「夏の涯ての島」は歴史改変モノなんだけど、これもまた切ない話で主人公が戦死した恋人フランシスの実家に訪れるシーンなんかは映画『ブロークバック・マウンテン』を思い出してしまった。
辛くて切ない話が大半。けれどもそれを乗り越えようと一歩踏み出したところまでが描かれているので読んでいて救いがあるのだ。  

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2008年01月29日

残虐行為記録保管所

残虐行為記録保管所 (海外SFノヴェルズ) (海外SFノヴェルズ)

  •  チャールズ・ストロス/

  • 販売元/出版社 早川書房

  • 発売日 2007-12-14


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シンギュラリティ・スカイ』といい『アイアン・サンライズ』といい、大ネタの部分で面白そうなものを使っていながら実際に読んでみると大ネタの部分はそれほど面白くなく、あちらこちらにちりばめられた小ネタの部分の方が面白かったのだけれども、今回もやっぱり同じだった。
設定レベルでは面白そうな設定なんだけれども作者の力の入れ具合は小ネタの方に偏っているので物語全体に緊張感が全然ない。確かに「SF+クトゥルー+スパイスリラー」なんだけれども、足した後お湯で割ったといった感じだ。同じネタでも古橋秀之に書かせたら三倍ぐらい手に汗握る燃える展開の話になったんじゃないかな。
もっとも、真面目に書かずにひねくれたユーモアをまぶしてしまうところがチャールズ・ストロスの持ち味みたいだから文句を言っても仕方ないか。
そのあたりをわきまえた上で読めばけっこう面白かったし、ハッカーネタなんかはツボにはまって楽しかったよ。特に安全なコンピュータの定義なんて素晴らしすぎる定義だった。
しかし一番素晴らしかったのは著者のあとがき。冷戦とホラーとの関係に対する考察やレン・デントンに対する敬愛など、ストロスの意外な一面を見せられたというか、ちょっと愛着が湧いてしまったよ。  

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2007年12月21日

日本SF全集・総解説

日本SF全集・総解説

  •  日下 三蔵/

  • 販売元/出版社 早川書房

  • 発売日 2007-11


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非常にコンパクトによくまとまったブックガイドだねえ、これは。なので分量的には物足りない部分も多分にある。
選択された作品の善し悪しに関しては、実物が存在するわけではないので自分だったならこの作品を選ぶ、なんて気持ちはまったくないんだけど、それにしても読んでいない作品が多すぎる。こんなに読んでいないのにSFが好きだなどと公言していて良いのだろうかと自分自身を問いつめたくもなると同時に穴があったら入りたくなるほど自分自身を恥じている。
しかし問題なのは、ここで改心しようと思っても絶版で読むことが出来ない作品が多すぎるということだ。
というわけで、読む前からわかっていたことだけど、その内容云々という以前に個人的に非常に嫌な気分にさせられた本だ。原因は読むことがで来た時代に読んでこなかった自分にあるんだけどさ。
一冊にまとめるにあたって、連載時以降のデータも書き加えられているところなどを見つけてしまうと、詳細な作品データや、SF以外の作品も書いている作家に関してはSF以外の作品情報も欲しくなったりと、ついつい我が儘な要望が出たりする。
ところで、この本では今日泊亜蘭の生年が1912年となっていたんだけど、1912年説が正しかったのかな?  
タグ :日下三蔵

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2007年10月04日

バーチウッド

バーチウッド (ハヤカワepi ブック・プラネット) (ハヤカワepi ブック・プラネット)

  •  ジョン・バンヴィル/

  • 販売元/出版社 早川書房

  • 発売日 2007-07-24


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原文がどんな感じなのかわからないんだけども、共訳という形ではあるが翻訳者に佐藤亜紀を持ってきたのは最強に近い組み合わせではないだろうか。
というのも、読んでいて違和感が無く、むしろ本当のところはジョン・バンヴィルの名を騙って佐藤亜紀が全てを創作したのではないのだろうかとほんの少し思ったくらいである。
そもそも、作品の紹介文からして異常だ。

冷酷な父、正気でない母、爆死した祖母を持つ主人公は、荒廃した屋敷にひとり残り、記憶の断片をかきあつめる。

冷酷な父はまあ別に良くある設定でこれはこれで構わないだろうし、正気でない母だって別にそれほど不自然ではない。しかし祖母は爆死するのである。どこかしら何かがおかしいとしか言わざるをえない。
一体どんな話なのだろうかと読もうとすると、これが一筋縄ではいかない。そもそも佐藤亜紀が翻訳をしているのである。ストーリーを追いかけようとする以前に、文章が立ちはだかるのだ。といっても難解な文章ではない。あまりにも凄すぎる文章の前に、ああ、ただひたすらこの文章に浸りまくりたいと言う気持ちになってしまうのである。
もはや物語がどんな内容であっても構わない。ただ、この文章をひたすらひたすら、いつまでも読み続けていたいと思ってしまうのであった。  

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2007年10月01日

日本SF・幼年期の終り

日本SF・幼年期の終り―「世界SF全集」月報より

  •  早川書房編集部/

  • 販売元/出版社 早川書房

  • 発売日 2007-08-25


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確か、全集は全35巻だったはずなのに、この本で収録されているのは34篇と数が合わないなあと思っていたら、月報の方は各3篇の計105篇で、その中から厳選した34篇を収録したということで数に関しては納得したのだけれども、問題は選択した内容の方である。
目次をざっと眺めてみるとそれなりにまんべんなく拾い集めた感じがするわけで、そうなると34篇でなくって35篇にした方が良かったんじゃないのかと思ったりもするし、本文の方を見ていくと思いの外活字が大きく、これだったなら上下二段組みにして全部収録すれば良かったのに、中途半端な本を出しやがってと傲慢にも思ったりもしたのだが、読み終えてからいろいろと思いふけってみると、まあここまでが限界だったのかも知れないなあと思ったりもするのだ。
まあなんというかエッセイなので、こういう時代があったのだという程度でしかなく、あまり資料的な価値は無い。これを読んで懐かしいなあと感じる人たちにとってはおそらくこの活字の大きさというのは親切であろうし、厳選してこの内容というのであれば、残りのエッセイに関しても推し量るべしというものだ。
それにしても、当時の熱気のようなものがあまり感じられず、逆に一歩間違えれば「中二病」と思われても不思議ではないような内容があったりして、読んでいて恥ずかしさを覚えるのは私だけだろうか。
都筑道夫ファンとしては都筑道夫のエッセイが収録されていたのが収穫。後は、福島正実のエッセイがいろいろと思うことがあった。巻末の資料を見ると、福島正実はかなりの数の月報を書いているのだが、その中から選ばれたのがE・E・スミスの巻のエッセイなのである。
スペース・オペラを毛嫌いしていた福島正実が信じられないことにE・E・スミスの巻でエッセイを書いていたのだ。しかもそのエッセイの中でスペース・オペラの魅力を認めているのである。全集の刊行という大儀の中で自己を殺したのであろうか。いや、そもそも福島正実がスペース・オペラを排除しようとしたのは日本にSFを根付かせるためだったのである。
それを考えると、福島正実の苦難と苦渋を感じさせるエッセイであった。  

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2007年09月19日

今日の早川さん

今日の早川さん

  •  coco/

  • 販売元/出版社 早川書房

  • 発売日 2007-09-07


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クラークの代表作といえば『幼年期の終わり』ではなく『地球幼年期の終わり』と答える私は非常に偏ったSFマニアなんじゃないかと思うことがあるのだが、なんだ、松岡正剛氏だって『地球幼年期の終わり』じゃないか。

ほとんど毎日楽しませてもらっているので、この本を買うのはそのお礼であり、それ以上でもそれ以下でもない。というか楽しませてもらっているのであれば普通は買うだろう。
そもそも私は、ウェブ上でいつでも見ることが出来るものを書籍という形で手元に置いておきたいなどというビブリオマニアでは無いのだ。
所有している本が四桁、積読状態の本が三桁台なので数字だけ見ればビブリオマニアじゃなのかと言われる可能性はあるけれども、本人はビブリオマニアなどとは思っていないのである。
もっとも、積読本が三桁にも登るのは買うだけかって読まないという立派なビブリオマニアだと言いたいかも知れないけれど、とりあえず積読本は出来るだけ消費するように心がけているのである。心がけているにもかかわらず積読本が三桁にも登るというのは、努力が足りないと言うよりも時間が足りないせいであって、読むスピードよりも買うスピードの方が若干上回っているだけに過ぎない。
では何故それだけの本を家人に文句を言われながらも処分せず保持し続けているのだ、やっぱりなんだかんだ言ってお前はビブリオマニアじゃないかと言われそうだが、信じられないかも知れないがそうではないのである
家人に文句を言われようが、それだけの本をため込んでいるのはそこに書かれている知識を頭の中に詰め込んでおくことが出来ないからである。恥を忍んで自分の記憶力の無さ加減をさらしているのに何故あなたは信じてくれないのだろうか。頭の中に詰め込んでおくことが出来ればとっくに処分をしているのだ。もっともあなたの目を見つめて言い切る自身は無いが多分ビブリオマニアではない。目線をずらせば多分そうだと言い切れるだろう、私が愛しているのは本という物理的な物ではなくそこに書かれた知識なのであると。
だったら、いつでも知りたい情報が探し出せるように整理整頓されているのだなと問われると、返答につまるのだが、とりあえず今は積読本をこれ以上増やさないでおくだけで手がいっぱいなのである、まあそんなことどうでも良いじゃないかあんたに迷惑をかけているわけじゃないし、整理整頓は老後の楽しみなんだよ。
そんな細かいことはとにかく、子供の頃ならばともかく大人になって本を沢山読もうとすると、思いがけないところからいろいろな邪魔が入るのである。本を読みたいだけで、別に誰にも迷惑をかけていないはずなのに何故か理解されない。
例えば、少しでも本をため込むと床が抜けるなどと文句を言ってくるのである。そんなもの抜けたら修理すればいいだけなのだ、そもそもそんなことを心配する前にドカドカと床が抜けそうな歩き方の方を止めたらどうかと我が家の老夫婦には言いたい。お互い様だといえる。まあ大抵こういうことを言ってくる人間は本を読まない人間なのだが、本を読む人間だって信用ならない。
こういう本読みの実体を漫画に書いて笑い物にしている始末である。本好きな人々は、日夜文句を言われ、そしてウェブ上で笑い物にされているのである。なんとかわいそうなことではないだろうか。幸いなことに私はどちらでもないので他人事のように笑っているのだが、読んでいて多少なりとも心が痛まないわけではない。何故だろうか不思議だ。
それはともかく、本読みが本読みでない人と結婚したらどうなるのであろうか。
円満な趣味活動を行うことが出来るかどうかは、どれだけお互いが理解しあうことができるかで決まるのだが、幸いなことに我が家ではお互いの趣味が読書なので、そんな心配をしなくても済んでいる。
そう、確かに相方は本を読むのが好きなのである。
若干の問題は一冊の本を読むのに平気で二年近くかかることだ。
それでは読書は趣味とは言えないのではないかと問いただしたことがある。誰でもそう思うだろう。しかし、ただ単に読むスピードが極端に遅いだけなのであって本を読むことは好きなのである。感覚的には非常に理解しがたいのだが、理性で考えるとやはりどう考えても彼女が趣味は読書だということは間違ってはいない。
とはいえ、感覚的にはそれを否定し続けているので定期的に、読書を趣味と言うのは止めたまえなどとついつい文句を言ってしまう。
もはや読書傾向が違うなどという以前に、読書スピードのタイムラグがありすぎて趣味における会話が成り立たないのだがまあ世の中、何でも思い通りに行くわけではない。
付き合った相手の趣味が読書で、しかも読書傾向がほぼ同じであったとしても、最後に落とし穴が待ち受けているのである。  

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2007年08月21日

マジック・フォー・ビギナーズ

マジック・フォー・ビギナーズ (プラチナ・ファンタジイ)

  •  ケリー・リンク/

  • 販売元/出版社 早川書房

  • 発売日 2007-07


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最初の「妖精のハンドバッグ」を読んだとき、ケリー・リンクってこんなにわかりやすかったっけと思い、これなら楽勝だなとなにが楽勝なのかよく判らないながらも、その次の「ザ・ホルトラク」では<聞こ見ゆる深淵>という何だかわからない存在とそのほとりのコンビニで働く人という組み合わせに仰天し、それでも面白いなあと楽しんだんだけど、家族小説の傑作だなんて書かれている「石の動物」で、がっかり。なにが悲しくて問題を抱えている一家族の話を読まされなければいけないのだ。なんか読んでいるうちに身につまされて悲しい気分になってくる。
アメリカ人って、こういう話を読んで楽しんでいるのだろうか。
しかし「大いなる離婚」あたりのぶっ飛び具合になるとまあ読んでいてもなんとか平気なのだが、それにしてもケリー・リンクの話ってのはあらすじだけ抜き出そうとしても全然別な話になってしまうよなあ。表題作なんて表紙見返りに書かれている内容と全然違うよ。そもそもここに書かれている内容の通りになるのが残り十ページを切ったあたりでもう終盤である。
でもって、最後の「しばしの沈黙」には愕然とした。入れ弧構造なのだが、どんどんと物語が内側に入っていき、語り手が消えていく。おまけに物語のはどんどんと後ろに進んでいき、よくもまあこんなことを考えたもんだと思う。
何だか凄い物を読んだという気持ちでいっぱいだったのだが、その気持ちを読み終えたらすぐに感想を書いておくべきだった。
佐藤哲也の『ぬかるんでから』を読み始めたのだが、佐藤哲也のあまりの凄さにケリー・リンクがどこかへ吹っ飛んでしまったのである。
最初から日本語として書かれたものには敵わないというか、読んでいて言葉の重みが全然違うことがわかるのだ。
というわけで、佐藤哲也がいればケリー・リンクなど翻訳されなくっても構わない気分なのである。  

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2007年08月06日

スペースプローブ

スペースプローブ (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)スペースプローブ (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)
機本 伸司

早川書房 2007-07
売り上げランキング : 41742

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物語の前半、半分以上がカラオケボックスでのディスカッションという前代未聞のSF。
幸運指数なんて物が登場したときには思わずにんまりしてしまったのだが、ラリイ・ニーブン以外にこんな物を持ち出す人がいたとは思わなかったよ。それとも私が知らないだけでわりとポピュラーな物なのか幸運指数って。作者に幸運指数なんてものを持ち出されてしまったら、如何にご都合主義的な展開をしたとしても、はいそうですかと受け止めるしかないのである。
まあそれはともかく、一番の難点は宇宙飛行士としての資質に問題があるんじゃないのかと思える人物がそろいもそろって宇宙飛行士であること。そして一番高い幸運指数の持ち主が宇宙飛行士としての資質以前に、社会人としてどうかと思える人物だったりする点である。この本を楽しむことができるかどうかはこの人物の行動を許すことが出来るかどうかにかかっている。まあこの人物はいないものだとして読むのが一番かも知れない。
そもそも、有人月着陸というミッションを行おうとしているのに、月からさらに12万キロメートルも先にある場所のどこかに何かが存在するらしいと、有人月着陸のミッションを放棄して勝手に探索を行おうとする時点で何かが決定的に間違っている。まあ月着陸よりも浪漫はあるけど、知りたいというだけでそこまで暴走してしまっていいものだろうか。
月面着陸のための機器でもって、あるのかどうかもわからないものを探索するということが果たして可能なのかどうなのか計算してみたくなる。作者もそのあたりは微妙にぼやかして、明確な解答は出していない。まあ、帰還ということを考慮しないカミカゼ特効的な行動をとったために、そういうことであれば可能だったのかもしれないなと思わせられるのであるが、浪漫のためなら死んでもいいのか、お前らと主人公たちには言いたい。帰還を考えなければ成功しないミッションなんて、運良く助かったからよかったものの、作中での時代には宇宙はそれほど恐ろしくない時代となっているのであろうか。いきるか死ぬかのサバイバル状態であってもひたすらディスカッションにふける主人公たちを見ていると、なんだかそんな風にも思えてしまう。
若さ故の暴走と過ちをしたけれども驚異的な幸運指数の持ち主のおかげでなんとかうまくいったのだと考えれば我慢は出来る範囲内である。  

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2007年07月17日

虐殺器官

虐殺器官

  •  伊藤 計劃/

  • 販売元/出版社 早川書房

  • 発売日 2007-06


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この本が一年ほど早く書かれ、そして出版されていたのであれば衝撃度は今よりも上回っただろうけれども、「グローバル化と奈落の夢」といった本を読んだりした後ではそこに書かれている状況がずいぶんとぬるく感じられてしまうのである。といっても、まあそれはそれであってこの本は別に告発本ではないので、読むタイミングがちょっと悪かっただけであるし、作者もそんな部分に主眼を置いてはいないだろう。そもそも衝撃を受けたいというのであれば他の本を読めばいいのだし、過去に目を向ければハリイ・ハリスンの『人間がいっぱい』とかいろいろとある。
メインのネタはどことなく川又千秋の『幻詩狩り』を彷彿させるようなネタでもあるけれども、長編でこのネタを仕掛けてくるとは思わなかった。しかし、ネタが割れるのが中盤過ぎで、ここからどのように話が収束していくのかと思ったらモンティ・パイソンネタの応酬には思わずニヤリとしてしまった。黒騎士とか馬鹿歩きとか、そんな物を世界観をぶちこわさずに登場させているところが凄すぎる。もっともモンティ・パイソンネタはともかくとして、最後のエピローグは大満足。終末感漂う破滅SFとして幕を閉じるとは思いも寄らなかった。  


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2007年06月27日

Self-Reference ENGINE

Self-Reference ENGINE

  •  円城 塔/

  • 販売元/出版社 早川書房

  • 発売日 2007-05


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『アトモスフィア』という前例があって、あちらはコミックなのでまあ仕方ないかという気持ちも少しはあるのだけれども、五周年だからといって背表紙まで黄色にしてしまうのはちょっと反則なんじゃないかとも思うけれども、まあ内容からして反則気味だから仕方ないか。
というわけで、楽しいお話でした。
こういう話を一ヶ月に一冊のペースで出されたらたまったものじゃないけれども、一年に一冊、いや二年に一冊くらいの間隔で読むことがで来たらうれしいよなあ。
とりあえずSF者としてはこれを傑作だということに異論はなくって、最初の一頁を読んでみてこれはひょっとして凄いSFなんじゃないかと感じる物があったならそれは多分正解なので読んでみてくださいと言っておこう。気軽に読むべき話なんだけれども、もの凄く密度が高いのでそう簡単には気軽に読めないところがちょっとやっかいだが、天城一の作品のように一文字すらも気を許すことが出来ないほど密度は高くないからまだ安心だ。
理解できる話もあればよく判らない話もあったけれども、長編じゃなくって18の短編が集まった物なのでそのうちの一つや二つくらい判らない話があっても構わないよなあと思ってしまう。ほんとはもうちょっと多かったんだけれどもさ、判らない話の数は。  


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2007年06月18日

擬態 カムフラージュ

擬態―カムフラージュ

  •  ジョー・ホールドマン/

  • 販売元/出版社 早川書房

  • 発売日 2007-05


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いや、つまらなくはないんだけど想像していたような面白さじゃなかったなあ。
一つ一つのエピソードが実に短くて読みやすく、そしてエンターテイメント性も高いんだけれども、そのせいかひたすら軽い。
50年代の娯楽SFを最新のSFだと偽られて読まされたような気分というのが一番近いかな。ネビュラ賞とティプトリー賞を取ったってことも変な先入観を持ってしまった原因のひとつだけれども。
何にでも変身できるほぼ不老不死の生命体という設定を、何のひねりも説明もなしに導入して、とりあえず質量の問題さえクリアしておけばそれで良いのかと問いつめたくもなる。もっとも海底で発見した謎の物体のパートもあれこれやって、何にも判りませんでしたという展開だったので、もともとハード的な側面に関しては描くつもりは無かったんだろう。
といっても、謎の生命体が人間に擬態して、いろいろと学んで最後に「愛」という感情を学びました、終わり。という話で満足できるのかというと、満足できるはずもない。
そもそも、一番最初に人間に擬態しようとした時点で、何の罪もない少年をぶち殺しているのである。昔はワルだったけど今は更正しました、といわれてもなあ。  

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2007年06月05日

ロング・グッドバイ

ロング・グッドバイ

  •  レイモンド・チャンドラー/

  • 販売元/出版社 早川書房

  • 発売日 2007-03-08


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『長いお別れ』を読んだのは二十年以上も昔のことなので、テリー・レノックスとの友情の話といことと、後はT・S・エリオットの詩を論じ合う運転手が登場したことぐらいしか内容を覚えていなく、新鮮な気持ちで読むことがで来ました。
その為、『長いお別れ』とどちらが良いのかなんてのは判断ができないわけだけれども、どちらの訳が生き残るのかといえば、村上春樹は残りのチャンドラーの長編全部を翻訳しない限りは『長いお別れ』の方が生き残りそうな気がする。
今回は新訳であり、なおかつ完訳ということだけれども清水俊二がどのくらい省略して訳したのかは判らないけれども、神は細部に宿るというけれども、省略された細部を楽しもうと思うのであればやはり原著を読むしか無いだろうと思うのです。
そんなふうにちょっと否定的に考えてしまうのも、この話が初期の村上春樹の世界にそっくり、とくに『羊をめぐる冒険』と同じである、というか『羊をめぐる冒険』がこの話と同じ構造であることをあらためて再認識してしまったからで、やはりチャンドラーを訳すのは分が悪すぎたよなあ。
しかし、そんなことは些細なことであって、純粋に物語として楽しむことが出来たのは確かなことだし、『銀河ヒッチハイク・ガイド』が新訳されたとき、「あわてるな」が「パニクるな」になった時ほどの違和感は感じませんでした。  


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2007年05月30日

双生児

双生児

  •  クリストファー・プリースト/

  • 販売元/出版社 早川書房

  • 発売日 2007-04


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今でこそシミュレーションゲームといえばコンピュータ上で遊ぶものなのですが、昔はテーブルの上で六角形のます目の書かれたボードを広げて遊ぶものでした。もっとも、ボードシミュレーションが無くなってしまったわけではなく、今でも存在します。
ボードシミュレーションゲームはボードの上に数百の四角い駒を配置してサイコロを振って勝敗を決めるのですが、駒の配置は誰かが勝手に配置してくれるわけではないので、自分で置かなければいけません。数十個ならともかく数百もの駒を配置するとなるとけっこうな時間がかかります。おまけに紙で出来ていますから風にも注意しなければいけません。冬ならばまだしも夏場は迂闊に窓を開けるわけにもいかず扇風機をまわすのにも細心の注意が必要です。
さらには何十頁もあるルールブックを事前に読んでルールを把握しておく必要さえあるのです。今にして思えばそこまでの苦行をしてまでも遊ぶ価値があったのだろうかとも思うのですが、暇だった当時はあったのですよ。
しかし、物事には限度というものがあって、SPI社が出した『第二次欧州大戦』というゲームはすべてのマップを広げるためには最低限でも六畳一間の空間が必要な程の巨大ゲームで、家の間取りの大きいアメリカならともかく、日本の一般家庭ではほぼ不可能なゲームだったし、同じくSPI社の『War in the Pacific』は太平洋戦争を扱ったゲームなのだけれども、補給の概念があらゆる要素に付いて回り、戦闘をするよりもひたすら補給を計算するゲームで補給をどのようにするのか考えるだけでも平気で半日くらいかかっってしまう、実質的にプレイ不可能なゲームでした。
それというのもSPI社のはゲーム性よりもシミュレーション性を優先する傾向にあったからだけど、『War in the Pacific』ほどの偏執狂的なシミュレート性は無いもののホビージャパンの『太平洋艦隊』などをプレイしてみると太平洋戦争で日本がいかに無謀なことをしようとしていたのががよく判るものです。
しかしそれが無謀なことであることが判るのも全てを把握できる、いわば神の視点から見ることができるわけで、プリーストの『双生児』も神の視点から見ているからこそ面白く、そして不思議な話なのでありました。もっとも、神の視点から見なかったとしたら面白い話だったのかというと、物足りなかっただろうなあ。
起こった出来事だけを抜き出せば波瀾万丈の物語だけれども、その部分に割かれた分量が少なく、時として書き割りみたいになっている部分も感じられます。
まあ、今をときめくというか、何にもしなくてもみんな褒めるだろうし、難解だといってもそれほど難解でもなく解説を読めばどういう仕掛けなのかは判るし、といっても解説は先に読まずに丁寧に本文の方を読んでいくほうがやはり面白いのですが、というわけで、似たようなネタだったら何もしなかったら誰も褒めそうにないスティーブ・エリクソンの『黒い時計の旅』のほうが好みだったと書いておく事にします。  

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2007年05月02日

死刑執行人のセレナーデ

死刑執行人のセレナーデ

  •  ウィリアム・アイリッシュ/

  • 販売元/出版社 早川書房

  • 発売日 1975-01


Amazon


後期のウールリッチは駄目だというのがわかっていながらも手をつけてしまいました。
だって、ウールリッチの長編はまだまだ未読が多いと思っていたら初期の長編は読み尽くしてしまっていて、残っているのは後期のものだけだったんですから。
主人公はニューヨーク市警の刑事。ある事件で怪我を負い、その怪我の療養でやってきたのどかな村で起こる連続殺人事件という筋立て。
主人公は刑事だし、何者かに追い詰められているわけでもない。さらには次々と人が殺されるわりにはサスペンス性はまったくありません。もっとも殺されるスピードが早いぶん展開も早く、読んでいて飽きないのですが、このペースでいくと十人以上の人間が殺される大量殺人の話になるんじゃないかと思うくらいの早さで次々と人が殺されていくので逆に心配になってしまうほどです。
殺された人間のミッシングリンクが大きな謎であり、ミッシングリンクはウールリッチの十八番といってもいいのですが、やはりそこにサスペンスが絡まない分、面白味に欠けてしまいます。
素材は悪くないだけに、全盛期のウールリッチが書いていればなあと、思ってしまうのでありました。  

Posted by Takeman at 12:30Comments(0)TrackBack(0)早川書房
2007年04月23日

オリュンポス

オリュンポス 上 (1)

  •  ダン・シモンズ/

  • 販売元/出版社 早川書房

  • 発売日 2007-03


Amazon/Bk1/楽天ブックス

オリュンポス 下 (3)


  •  ダン・シモンズ/

  • 販売元/出版社 早川書房

  • 発売日 2007-03


Amazon/Bk1/楽天ブックス

物語の幕は見事に閉じたけれども、風呂敷は広げたままで全然たたんでいない。
最初からたたむつもりがなかったのか、登場人物たちの行動も謎の解決のためというよりも、新たな謎を呼び起こすための行動に近く、まあこれでもかといわんばかりに次々と話を広げていく。
俺の物語は理屈で考えようとするなとでも言っているかのようで、話を盛り上げるための設定ならば後先考えずに投入し、全体の整合性よりも、その場面場面での面白さの最大瞬間風速をねらって書いているかのごとくだ。
ある意味、少年ジャンプの人気連載漫画と同じ方法論をとっているとも言えるのだけれど、物語をまとめようとする気持ちが働いているのか、全体的に『イリアム』よりはおとなしめ。あれだけ引っ張った最後の大勝負もあっさりと決着が付いてしまうし、思わせぶりに臭わせていた対決は結局無くなってしまうし、冷静に考えれば失敗作だよなあ。
しかし、それでも読んでいる最中が面白かったし、読み終わっても充分な満足は得られたわけで、まあこれだけ面白い話を読ませてくれたのでは文句を言ったら罰が当たると言うもの。そもそも、『イリアム』で宇宙船が火星上空で、古代戦車に乗った神々の投げた槍で大破させられる場面を読んだ時点でまともな話になるわけがない。
もっとも、セテボスが人間の苦しみを食べて生きているというところで『超生命ヴァイトン』思い出して、ちょっと期待したりもしたんですが……。
それにしても自分の娘の作った詩まで作中に取り入れてしまうあたり、シモンズ先生も親バカだなあ。

ちなみにここから「ヴォイニッチ写本」を見ることが出来る。  


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2007年04月11日

エソルド座の怪人

エソルド座の怪人

  •  ナギーブ・マフフーズ/

  • 販売元/出版社 早川書房

  • 発売日 2007-03


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『キス・キス』から始まった新装異色作家短編集何だけれども、最終巻がこんな色になるとは思っても見なかったよ。ってことはイギリス編が金でアメリカ編は銅になるのか。
全二十巻、ずらりと本棚に並べれば壮観かもしれないけれども全巻そろえてあるわけじゃないので想像してみるしかないのがちょっと残念。
世界編ということで、これはなかなか面白かったというか満足のいった巻でしたよ。
ミステリ色の強い「容疑者不明」と「奇妙な考古学」。前者の結末の付け方も面白かったけれども、後者のやるせなさはまさかこういうアンソロジーで読まされる羽目になるとは思っても見なかったので不意打ち的な面白さ。
フランケンシュタインの怪物ならぬ猫を作り出してしまう「トリニティ・カレッジに逃げた猫」や「オレンジ・ブランデーをつくる男たち」は面白うてやがて悲しきお話。
ひたすらオッパイな話の「セクシードール」なんかを読むと、世界中どこにでも変な話を書く人がいるんだなあと思わせられる。
で、問題はエリック・マコーマックの「誕生祝い」だ。読みながらその展開に次第に唖然としていったのだけれども、それは昔、日本人作家が書いた話でこの話とそっくりな話を読んだことがあったからだ。誰が書いた作品だったのかいつもの事ながらどうしても思い出せないんだけれども、こんな馬鹿な話を書く人がこの世に二人もいたことに驚いたよ。  

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2007年04月10日

棄ててきた女

棄ててきた女

  •  ジョン・ウインダム/

  • 販売元/出版社 早川書房

  • 発売日 2007-03


Amazon/bk1/楽天ブックス

アメリカ編と同様、全体的には悪くはないんだけれども物足りない。古くさい雰囲気が漂っていて、私の思うところの異色作家短編集っぽさという雰囲気は満点なんだけれども。ってのはなんだかもの凄くわがままな事を言っているような気もするけれども、やっぱり物足りない物は仕方ない。
冒頭のジョン・ウインダムって、いやあ懐かしい名前。ウインダムは長編しか読んだことがないけれども、短編も悪くはないなあ。今の視点で見てしまうと、時間ものとしての新味はないけれども、けっこういい話というか好きな話ですよこれは。
冒頭の一作こそはいかにもSFらしい話だったけれども後は比較的怪奇色の高い話で、ジョン・キア・クロスの「ペトロネラ・パン 幻想物語」はなかなか怖い話。いつの時代でも一番怖いのは人の心といったところ。ロバート・エイクマンの「何と冷たい小さな君の手よ」はリチャード・マシスンのあれと同じ系統の話、どっちが好きかといえばマシスンの方かな。
ちょっと前に短編集が出たウィリアム・トレヴァーはこんな感じの作品を書く人だったのか。確かにうまいけれどもちょっと好みじゃないなあ。  

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