名短篇、ここにあり

- 編 北村 薫、宮部 みゆき
- 販売元/出版社 筑摩書房
- 発売日 2008-01-09
食べず嫌いってのは損なんだよなあとつくづく実感してしまった。
半村良や小松左京はSF系なので読んではいるが、ミステリ系の多岐川恭や戸板康二や松本清張あたりは、食わず嫌いでほとんど読んでいない。
とくに松本清張なんかは謎解きミステリとしても凄いのは知っていながらも、「社会派」という印象がこびりついてしまっているので毛嫌いしていた面もあったんだけど、松本清張の「誤訳」を読んで目から鱗が落ちる思いをした。やっぱり凄い。
それ以外の作家となると名のみ知っている程度だったので、吉行淳之介の「あしたの夕刊」のオチの付け方を見て驚いたのなんの。短編の締め切りが今日なのに、どうしても書くことの出来ない作家の家に届いた夕刊がなんと未来の夕刊で、そこには今日書いて渡すはずの小説が掲載されていた。ここで普通ならば掲載された小説を丸写しして編集者に渡すという展開になるのだが、この主人公はこう考える。
ここで自分がどうしようが未来は決定済みなのではないだろうか。未来の新聞に掲載されているって事は、この小説を丸写ししなくったって小説はできあがるってことだ。
そして主人公は何もしないのである。
なんなんだ、この因果律に挑戦する物語は。
一方、黒井千次の「冷たい仕事」は冷蔵庫の中で巨大に成長した霜を取るというだけの話なのだが、巨大な霜をうまく取る事が出来た時のあの何ともいえない高揚感を味わうことが出来る。
しかし一番凄かったのは吉村昭の「少女架刑」。
一人の少女が亡くなった時から話が始まり、母親に献体として病院に売られ、あちらこちらを標本として切り取られ、さらに実習材料としてあちらこちらを切り刻まれ、そしてほとんど骨だけの状態になったとき、始めて火葬され骨壺に入れられるのだが、そこまでの話が全て亡くなった少女の視点で語られるのである。吉村昭がこんな話を書いていたとは。
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