2008年04月02日

白い果実

白い果実

  •  ジェフリー フォードJeffrey Ford山尾 悠子谷垣 暁美金原 瑞人

  • 販売元/出版社 国書刊行会

  • 発売日 2004-08

Amazon/楽天ブックス




本当ならば三作目が翻訳されたところで一気に読みたかったのだが、国書刊行会のことなので三作目がいつ出るのかわからないし、出たときには一作目が絶版になっている可能性もあるので、根負けして読み始めることにした。
三部作のうちの一作目なのでこの物語の後、どのような展開をしてくのかはわからないが、これ一作だけでも十分楽しかった。観相学が異様に発達した世界、想像していたよりはグロテスクさやビザールさは少なかったのだが、むしろこのくらいで丁度いいんじゃないかと思う程度のビザールさ。
改造されて、コインを入れなければ動かない赤ん坊とか、掘っているうちに自分自身が青い鉱石化してしまう鉱夫たちとか、体の一部を機械化させられて戦う闘士とか、観相学的に顔を手術されたのだが失敗し、見たものに死を与える顔になってしまったヒロインとか、一つ一つはそれほど驚くガジェットではないものの、ジェフリー・フォードの手に掛かるとグロテスクさとビザールさを伴ってなんともいえない奇妙な世界が立ち上ってくるのである。
  

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2008年02月08日

ラナーク―四巻からなる伝記

ラナーク―四巻からなる伝記

  •  アラスター・グレイ

  • 販売元/出版社 国書刊行会

  • 発売日 2007-11

Amazon/楽天ブックス




四六判のハードカバーで上下二段組700ページと分厚いのだけれども、分量的にダン・シモンズの『ザ・テラー』と対して変わらないわけで、そう考えると分厚さに怯むことなんかないのだけれど、立て続けに分厚い本を読むのはなかなかしんどい歳になってきました。
しかし読み始めてみるとどうにも村上春樹の『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』と比較してしまいがちになってしまいます。
もう二十年以上も前に読んだっきりなので単純に比較出来るものではないのですが、記憶に残っている面白さのレベルでは『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』の方が遙かに上です。
どちらの作品も作者の言葉によれば自伝的な要素が高く、相関関係がある二つの物語とSF的な要素。しかし『ラナーク』の三、四巻でのファンタジー度の具合は『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』の方が上だったし、一、二巻の主人公の駄目さ加減と嫌な奴度の高さは面白さを減少させてしまいます。
もちろんこれは単純な物語の面白さだけの問題であって、エピローグで作者がいきなり登場したあたりでのメタフィクション構造が展開されるあたりは読んでいてゾクゾクする部分で、活字を読む楽しさがあったりもします。
よくもまあこれだけいろんな要素を思いついてぶち込んだものだと感心するのだが、そのあたりは二巻を読めば納得が出来たりするので読み終えてからあれこれ思いめぐらしてみるのも楽しいものです。これだけむちゃくちゃやっていながら結末の付け方が非常にまともというか、後味がいいのには参りました。
でも25年もかけて書き上げたというあたりで、なんとなくヘンリー・ダーガーっぽい部分があるんだよなあ。  

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2007年07月10日

すべての終わりの始まり

すべての終わりの始まり

  •  キャロル・エムシュウィラー/

  • 販売元/出版社 国書刊行会

  • 発売日 2007-05


Amazon/Bk1/楽天ブックス


もっと気軽に読むことの出来る短編集だと思っていたんだけども、やはり<短篇小説の快楽>というシリーズの中の一冊、快楽という文字にこめられている意味が違います。
ケリー・リンクに似ている雰囲気だなあと思ったものの、やっぱり違う。ケリー・リンクならば意味がわからなくっても表層レベルで楽しむ事ができたんだけど、表層レベルの物語ではさっぱり楽しめないのだ。
数学の図形証明で補助線というものがある。補助線を引くことで見えなかった部分が見えるようになって全体を理解出来るようになるんだけれども、キャロル・エムシュウィラーの小説の場合、その補助線を何処に引いたらいいのか、かなり気合いを入れないと見えてこないのだ。
もっと気軽に楽しむことが出来る話だろうと勝手に期待をしてしまっていたので、自分の頭の悪さ加減に情けなくなってきたんだけれども、なんでこんな苦労をしてまでもお前の本を読まなければいけないのだと作者に文句を言うことで自分の頭の悪さに関しては気づかなかったことにしてしまった。まあそのくらい辛かった。
しかし、補助線をどこに引けばいいのかがわかって、全体を見回すことが出来るようになると面白くなるのもまた事実で、読んでいる最中よりも、読み終わった今現在、あの話はこういう見方ができるのだといろいろと思い繰り返してそれなりに楽しんでいるのである。  


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2007年07月05日

ゴーレム100

ゴーレム100

  •  アルフレッド・ベスター/

  • 販売元/出版社 国書刊行会

  • 発売日 2007-06


Amazon/Bk1/楽天ブックス


一瞬で、ダン・シモンズの『オリュンポス』が色あせてしまった。
話の整合性なんか無視して、場面単位で面白さの最大風速をねらった『オリュンポス』でさえ、この本には敵わなかった。まあシモンズ先生には感動という味付けがあるので一概に比較してしまうのも間違いではあるけれども、一見すると狂気の産物にしか見えない造りでありながら、物語の裏にきわめて冷静かつ明晰な作者の存在が見えているところがたまらない。極悪な話を書いていながら実は暖かい視点がシモンズ先生にはあるのに対して、ベスターは極悪な話を書いて、しかも突き放している。
何でも突き詰めれば傑作になるんだなあと思ったけれど、ここでいう「傑作」は、突き詰めたことに対するご褒美みたいなもので、一般的な意味での「傑作」とはちょっと違う。惜しむらくは縦書きの日本語に訳してしまったために右開きになってしまったことで、せっかくの楽譜の部分でテンポが少しそこなわれてしまうこと。ここまでしたんだったら横書きにして左開きにしてしまった方が良かったんじゃないのかな。
それにしても書いた人間も凄いけど、これを訳した人間も凄いよ、ほんと頭おかしいんじゃないのかって思った。
まさに悪趣味としかいいようがなく、それでいてまっとうなSF。これはベスター版スネークマンショーだよなあ。

「いいものもある。だけどわるいものもある」  


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2007年05月31日

星雲組曲

星雲組曲

  •  張 系国/

  • 販売元/出版社 国書刊行会

  • 発売日 2007-05


Amazon/Bk1/楽天ブックス

長編かと思っていたら短編集でした。
明確な繋がりは無いものの、いくつかの短編では共通の設定が登場したりするので、『星雲組曲』という題名からして全体としては共通の世界史となっているのかも。
個人的には非常に懐かしい感じのする話が多く、今日泊亜蘭の『まぼろし綺譚』を読んだときと同じ薫りがしました。
台湾でSFが読まれるためには台湾の文化に即した物語でなくてはならないという作者の言葉どおりというべきか、この物語たちが書かれた当時、台湾でSFというものがまだ根付いていないのだとすれば今日泊亜蘭と同じ薫りがしたとしても不思議ではありません。
オチが強烈だとか、奇抜な発想の話というのは無く、印象に残るのは感傷的な話のほうなのだけれども、作者の思想的部分が面白いのです。
脳に小型の受像器を埋め込み、受信した仮想世界を楽しむようになった未来、文学や詩などの本はほとんど書かれることがなくなり、それを憂いた人々がそのシステムを破壊しようとする。ブラッドベリが書いたのであれば主人公たちは文学を取り戻して万歳、もしくは失敗して嘆く話になるだろうけれども、主人公はなんと廃れるものは何をしても廃れるのだと文学の方を否定してしまうのです。
西洋の物語が文化的な側面から、90%は理解できても10%は理解出来ないとした場合、この本は90%は理解できて、残りの10%も理解できる。ただ90%の部分と10%の部分が何故組み合わさるのか理解できない。そんな感じの話でした。  

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2007年03月29日

大失敗

大失敗

  •  スタニスワフ・レム/

  • 販売元/出版社 国書刊行会

  • 発売日 2007-01


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「失敗する可能性のあるものは、失敗する」というマーフィーの法則みたいな話。
それにしてもやたらと密度の高い小説で、読み終えるのに時間がかかりました。悪くいえば偏執狂的、良くいえばストイックでもあるけれど、読みながら、なんでここでこんな話が飛び出してくるのだと驚くことがしばしば。もちろん何の意味もなくそんなことが書かれるわけではなく、むしろそこまで書かなければ話を進めることができないのかこの人は、と呆れるやら感心するやら。
長編数冊分のアイデアをつぎこんで、哲学、医学、物理学などのペダントリーで武装するのがワイドスクリーン・バロックの方法論であるのだけれども、同じ事をしているのにワイドスクリーン・バロックとは遙かにかけ離れた場所に位置しているのは不真面目な部分が無いせいなんだろう。
しかし、不真面目な部分が無いにも関わらず、そしてレム自身も真面目に書いていただろうにも関わらず、やることなすこと全てが裏目に出てどうしようもなくなっていく様は読んでいて思わず吹き出してしまったよ。ああ、不真面目な読者で申し訳ない。
巻末の用語解説の一番最後に「Sezam」という短編の紹介があって、それがフレーム問題の話だったこともちょっと驚いた。いやレムがこの問題を扱っていたことは全然不思議でもなんでもないんだけれども、人工知能に癌の治療方法を考えさせるという話で、その答えがバリントン・ベイリーの「光のロボット」のいちエピソードと同じだったので驚いたわけですよ。
つくづくレムという人は凄い人だったんだなあと思い知らされました。  

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2007年03月16日

眠りをむさぼりすぎた男

世界探偵小説全集 10
クレイグ・ライス 著 / 森英俊 訳
  

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2006年09月19日

グラックの卵

グラックの卵
ハーヴェイ・ジェイコブズ〔ほか〕著 / 浅倉 久志編訳
  

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2006年07月12日

ぼくがカンガルーに出会ったころ

ぼくがカンガルーに出会ったころ
  

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2006年06月15日

ベータ2のバラッド

ベータ2のバラッド
サミュエル・R.ディレイニー〔ほか〕著 / 若島 正編訳 / 浅倉 久志〔ほか〕訳
  

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2006年06月01日

完全な真空

悪漢と密偵さん経由で青空文庫で小栗虫太郎の「黒死館殺人事件」が公開されたことを知る。
作業が行われていることは知っていたけれども、いやまさか本当にブラウザー上でこいつを読むことが出来る日が来るとは思ってもなかったよ。しかし考えてみると、こいつをパソコン上で読もうなどと思う人間は既にこの本を読んだことがある人間だけなんじゃないかって思うわけで、未読の人がこいつをパソコン上で読み切ることができるのかちょっと気になったりもします。印刷してから読むって手もあるけど。
作中のしっかりと図版もしかる場所に表示されているのでこいつの公開に関係した全ての人に惜しみない拍手を送りたいと思います。

実際に読むかどうかは別として一度は目にしておく価値はある奇書ですなあ。

で、奇書といえば……。

完全な真空
スタニスワフ・レム著 / 沼野 充義〔ほか〕訳
  

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2006年03月14日

デス博士の島その他の物語

デス博士の島その他の物語
ジーン・ウルフ著 / 浅倉 久志訳 / 伊藤 典夫訳 / 柳下 毅一郎訳
  

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2005年12月23日

宇宙舟歌

宇宙舟歌
R.A.ラファティ著 / 柳下 毅一郎訳
  

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2005年12月01日

枯草熱

天の声
スタニスワフ・レム著 / 深見 弾訳
  

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2005年11月30日

天の声

来年4月号でSFマガジンが通算600号を迎えます。ついこの間500号の記念号が出たばっかりのような感覚ですが、もう八年も前のことです時の経つのがずいぶんと早い気持ちがします。前回と同様今回もオールタイムベストを募集しています。私も応募してみようと思っているのですが、いざベストを選ぼうとするとあれも入れたいこれも入れたいと悩む悩む。なかなか悩ましいのです。
オールタイムベストなんて所詮お遊びごと、そんなに真剣に悩まなくてもいいじゃないかとも思うのですが、遊びだから真剣なのです。

で、悩ましいといえばなかなか出版されなくて悩ましいのがこれ。

天の声
スタニスワフ・レム著 / 深見 弾訳
  

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2005年07月15日

「愛」の作家

ヴィーナス・プラスX
大久保 譲 / Sturgeon Theodore
  

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