怪奇小説という題名の怪奇小説

- 著 都筑 道夫/
- 販売元/出版社 集英社
- 発売日 1980-01
飛ぶ鳥をも落とす勢いであると言ったらちょっと過言かもしれないけれども、そんな勢いのある道尾秀介が選ぶオールタイムベスト3の一つが都筑道夫の『怪奇小説という題名の怪奇小説』。
で、読んでみるとなんとも形容しがたい不思議な小説だ。
主人公は怪奇小説を依頼されたとある作家。得意のジャンルなので簡単に書くことが出来るだろうと思っていたらこれがなかなか書くことが出来ない。子供の頃の体験談を思い出しながらなにか使えそうなアイデアが無いものかと思案するところから物語が始まるのだけれども、これの部分だけ読むと単なるエッセイにしか見えないところが巧妙な部分で、それからいきなり怪奇小説の定義に移り、その成功例の一つとして自分の訳したジョン・スタインベックの「蛇」がまるごと掲載される。おそらく翻訳権とかは取得したはずだろうけれども、小説の中に他人の小説が丸ごと入っているというのはどうも居心地が悪いものだ。しかしそう思い始めてしまうと、もうそれは作者の手中にとらわれてしまったわけで、境界線の曖昧な不思議な世界に翻弄されるのだ。
光文社の都筑道夫コレクションには何故か収録されなかったけれども、ジャンルを決めて収録作品を整えた都筑道夫コレクションに入れるとなると作品自体のジャンルを決めてしまわなければいけなくなるわけで、ジャンル決めをしてしまうと面白みが欠けてしまうこの作品、かえって収録されなくて良かったのかも知れない。
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