2008年01月08日

倒立する塔の殺人

倒立する塔の殺人 (ミステリーYA!)

  •  皆川 博子/

  • 販売元/出版社 理論社

  • 発売日 2007-11


Amazon/楽天ブックス




はっきりいって自分の好みではなく、買ってしまったいじょうは読まなくてはもったいないという気持ちのみで読み進めていったわけだが、読み終えてみると凄い物を読まされてしまったという気持ちでいっぱいになってしまった。
ページをめくる手が止まらないとかそういう問題ではなく、嫌々読んでいたうえに、読み終えてみればやっぱり好きな話ではなかったことが実感できて、さらにいえば好きな話ではなかったので全然満足できなかったわけだが、読み終えてみればそんなことなどどうでも良くなってしまう。
皆川博子には脱帽せざるを得ないというのが本音だ。
太平洋戦争の終わりごろ、登場人物たちによって手書きで書かれた一冊の本。その本はそれを書いた少女の手記であり、さらにその中には『倒立する塔の殺人』と題されたミステリが書かれている。
そして作中作である『倒立する塔の殺人』はある事件の存在を浮かび上がらせることとなるのだが、皆川博子の手に掛かるとそれが全く別な物へと変貌させられるのだ。
殺人があり、探偵役もいるし、トリックもある。表層レベルにおいてはどうみてもミステリなのだが、そこで語られているのは何か別なものなのである。
私の男』を書いた桜庭一樹も凄いと思ったけど、その先にまだまだ凄い作家がいることに不覚ながら気付かせてもらった。
あやうく、一生ついていきますと宣言しそうになってしまったよ。  
タグ :皆川博子

Posted by Takeman at 12:30Comments(0)TrackBack(0)理論社
2007年08月23日

水銀奇譚

移動都市』の続きは出ないのかなあと思っていたら、同じ作者の別シリーズが理論社から出たとは知らなかったよ。やるなあ理論社。

しかし、

1851年イギリス、初の万博の準備が進む頃…月のはずれに浮かぶ<ラークライト>で暮らす一家に大変な事態が!

って、一体どんな設定なんだろう。

で、理論社といえば……

水銀奇譚 (ミステリーYA!)

  •  牧野 修/

  • 販売元/出版社 理論社

  • 発売日 2007-08


Amazon/楽天ブックス




『水銀奇譚』というタイトルからして稲生平太郎の『アクアリウムの夜』を想像してしまう。
だからというわけではないが、多分あのような物語なのだと勝手に思いこんでしまうのである。
で、読み始めると、やはり違う。まあそれは当たり前のことだけれども、しかし、読んでいてどこか同じ感覚を覚える。同時に天沢退二郎の『光車よ、回れ!』とも同じものを感じる。やはり「水」が重要な役割を持っているせいなのだろう。
勝手な思惑とは違う物だったけれども、この物語もやはり同じ系統に属する物語なのだと思う。作中ではひたすら雨が降り続き、読んでいてもじめじめとした雰囲気がそこここに居座り続けて読んでいいるのだ。ああうれしくなるようなこの陰鬱感。ボクの望んでいた恐怖はここにあるんだと感じる。
事の真相は意外と明確で、もっと得体の知れない恐怖のほうが良かったと思うんだけれど、ハッピーエンドでありながらもラストの何ともいえない喪失感は素晴らしい。
これで町内の地図があれば完璧だっただろうけど、物語としても地図の必要はそれほど無いので仕方ないところだ。  

Posted by Takeman at 12:30Comments(0)TrackBack(0)理論社
2007年06月07日

漱石先生の事件簿 猫の巻

漱石先生の事件簿 猫の巻

  •  柳 広司/

  • 販売元/出版社 理論社

  • 発売日 2007-04


Amazon/Bk1/楽天ブックス

『贋作「坊っちゃん」殺人事件』を書いたくらいなのだから、今度は『我が輩は猫である』の世界に謎を求めても全然不思議ではないけれども、実際に書いてしまうとなるといやはや脱帽するしかない。
しかし、タイトルに「漱石先生の事件簿」とあるくらいなので今度は夏目漱石が探偵役となるのかと思ったら漱石先生のところに押し掛けてきた書生さんが探偵役だったのにはちょっと拍子抜けしてしまった。
島田荘司の『漱石と倫敦ミイラ殺人事件』では漱石の目から見たホームズは変人と化していたけれども、この作品では漱石先生が変人と化している。しかも最初のうちは主人公の謎解きの役に立つようなことを、偶然であっても言ったりしているのだけれども、後半になるとただ奇妙な言動を吐くばかり。では全くの変人なのかといえばそうでもなく、時として意味深なことを言ったりもするので、このあたりはうまく作者に手玉に取られてしまっているのかもしれない。
後半になると謎がどんどんと小粒になっていくのはミステリとして読んだ場合、物足りないのだが、その分『我が輩は猫である』の世界の比率が高くなっていき、そして最終話のあの結末だ。ミステリとして物足りないのも許してしまえるものである。  

Posted by Takeman at 12:30Comments(0)TrackBack(0)理論社