2008年04月23日

とある飛空士への追憶

とある飛空士への追憶 (ガガガ文庫 い) (ガガガ文庫 い 2-4)

  •  犬村 小六

  • 販売元/出版社 小学館

  • 発売日 2008-02-20

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その昔、『空戦マッハの戦い』というウォー・シミュレーションボードゲームがあった。
戦闘機によるドッグファイトという三次元の世界を二次元のボード上でシミュレートする、まあ、まさにゲームデザイナーの執念の固まりによって生み出されたようなゲームだった。
空中戦を楽しめるようにゲーム化したのではなく、かろうじてゲームとして遊べるレベルまで仕方なくシミュレートを簡略化したというゲームなのでとにかく覚えなくてはいけないルールは膨大だった。2秒程度のドッグファイトを30分以上かけてシミュレートして遊ぶのである。それなりの覚悟がなければ苦行に近い。しかもスプリットSやらバレルロールといったマニューバでさえシミュレート可能だったのだが、二次元上でシミュレートするので、盤上では小さな駒が右へ左へとちょっとだけ動くだけという視覚的には恐ろしく地味なゲームだった。
それはともかくとしてこの物語は、何処かで見たような設定、何処かで見たような展開、何処かで見たような結末でありながら、実によくできたウェルメイドの物語だ。
こう書くと全然褒めていないように見えるのだけれども、そんなことはない。いや実際、ここまですがすがしい物語は久しぶりなのである。
確かに欠点をあげればきりがない。どういう条件がそろえばこんな環境ができあがるのかさっぱり判らない大瀑布などは、まあファンタジーということでその設定に関しては目をつぶりまくったとしても、それでもせっかくこれだけのビジュアル的な要素を作り出しておきながら、世界設定の一要素としてだけしか使っていないあたりは文句の一つも言いたくもなる。
さらには、お前はドラえもんの四次元ポケットかと突っ込みたくなるほど、次から次へと奥の手を繰り出す主人公もどうかと思うのだが、終盤のドッグファイトにおける高速かつ高密度な展開は燃える。
ここまで見せてくれれば、我慢できない欠点でさえ何処かへと吹き飛んでしまうのだ。
まあ人によって見所は違ってくるだろうけれども、終盤のドッグファイトだけで私は十分に満足したのだった。  
タグ :犬村小六

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2008年03月13日

脳Rギュル(2)ショートツ心臓とヤネ裏のタマゴ

脳Rギュルショートツ心臓とヤネ (ガガガ文庫 さ) (ガガガ文庫 さ 1-3)

  •  佐藤 大

  • 販売元/出版社 小学館

  • 発売日 2008-02-20

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どうも跳び立つ前に勢いがつかなくって失速してしまった気がするガガガ文庫の<跳訳>シリーズなんだけど、とりあえずは言い出しっぺの人が参加している作品だけは後が続くようだ。
ますますもって夢野久作から離れてしまい、何だかむりやり夢野久作の作品を引用して誤魔化しているような気もするんだけど気のせいかな。まあ「起承転結」でいえば「承」の部分にあたるだろう本編、これ単体だけで判断してしまうのは間違いで、やはり完結してから判断するべきなんだよなあ。
そもそも主人公の二人は今回は最初から最後まで別行動で、片一方は事件に巻き込まれて死に目にあっているのにもう片方は休暇中でのんびりと休暇を楽しんでいる始末。瓶詰めの手紙を拾ったり、謎の老人と出会って映画談義をしたり、愛の告白をされたりと、死に目にあっている片方からしてみればなんとも脳天気な描写が続くのだ。
しかしそんなあってもなくても構わないような出来事が、最後まで読み通せば次巻に対する猛烈な期待感とドキドキ感にすり替わっているという巧妙さが実にあざとい。
それにしても、ラインナップに上がっていた小栗虫太郎を凄く楽しみにしていたんだけど、虫太郎は難しいよなあ。国枝史郎はとりあえず、石川賢が中断してしたその後の部分まで描ききった石川賢版『神州纐纈城』があるので個人的には満足しているんだけど。  

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2008年01月24日

リバース・ブラッド 1

リバース・ブラッド 1 (ガガガ文庫 い 3-2)

  •  一柳 凪/

  • 販売元/出版社 小学館

  • 発売日 2007-12-19


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前回は変化球だったので今回は直球で来たと、あとがきで作者が語っているとおりの内容だった。
何処かで読んだことのあるような設定、登場人物ばかりの学園異能バトル物なんだけれども、『みすてぃっく・あい』を書いた作者だけあってありふれた素材を使っていながらも味付けが一風変わっている。
強いていえば、ごく普通のうどんだと思って食べてみたら麺つゆがコンソメスープだった、といったところか。違和感はあるけれどもけっしてまずくはなく、いやむしろこれはこれで美味しいではないかと思ってしまう味付け。
三人称形式でありながら地の文で一人称的な書き方が行われているのはいかがなものかというか、文章の書き方が下手になってしまっているのは残念だけれどもまあ二作目ということで次に期待しようではないかということでそれはさておき、主人公の能力が他人の心を読むことができるだけということで全然戦力にならないあたりが面白いところ。
宇宙とは決定論的なのかなどと思わせぶりなセリフがでてきたりと次作に対する期待感は大きいんだけれども、はたしてどうなることやら。  
タグ :一柳凪

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2007年10月17日

みすてぃっく・あい

みすてぃっく・あい (ガガガ文庫) (ガガガ文庫 い 3-1)

  •  一柳 凪/

  • 販売元/出版社 小学館

  • 発売日 2007-09-19


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オビに「幻想百合ミステリー」なんて書いてあるので最初っから読むつもりは無かったんだけど、終盤でとんでもない展開をするということで恐る恐る読んでみることにした。まあ240ページ程度の厚さなので駄目だったとしてもそれほどダメージを受けることもないだろうし。
とりあえず『乙女ケーキ』を読んでいるのでそれなりの耐性のようなものは出来ているつもりだったけれども、まあ「百合」の部分に関してはそれほど身構える必要もなくって、まあ曖昧とした霧がかっている雰囲気はあるものの淡々とした日常が延々と続く。表面上のお話としては、こういうのが好きな人はともかく、特別好きでもない人間にとっては退屈とまでは行かないけれども、まあ平凡。痛みが伴わない分だけ痛々しさは増しているんだけどね。しかし、あからさますぎる伏線故に多分そうなんじゃないかと思っている結果へと突き進むんだけれども、それはあくまで見せかけの伏線に過ぎず、それまでの雰囲気からは想像も出来ない要素を放り込んでくる。
アレイスター・クロウリーとか魔術とか、そんなものは登場するんだけども、それだけじゃなくって量子力学まで投入してくるとは思わなかった。最期に見せつけてくれるビジョンはちょっと目眩がしそうなくらいにクラクラしていいなあ。不確定世界の探偵物語ならぬ不確定世界の百合物語といったところか。  
タグ :一柳凪

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2007年08月10日

脳Rギュル ふかふかヘッドと少女ギゴク

脳Rギュル ふかふかヘッドと少女ギゴク (ガガガ文庫 さ 1-1)

  •  佐藤 大/

  • 販売元/出版社 小学館

  • 発売日 2007-07-18


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比較するべきことではないのだけれども、『18時の音楽浴 漆黒のアネット』が原本に驚くほど忠実で、翻案という言葉に嘘偽りのないものだったのに対して、こちらは驚くほど原本とかけ離れている。原本を細切れにして、使いたい部分だけ使って好きなように物語ったという感じである。「跳訳」なので、どちらが良い悪いという問題でもないのだけれども、夢野久作の雰囲気を期待した人がいたら、おそらくがっかりしてしまうだろう。個人的には夢野久作世界というよりも藤原カムイの世界に近いような気がした。脳R化した姿とかいかにも藤原カムイが描きそうな感じなんだよなあ。
で、肝心の内容の方はといえば、四百ページ以上ありながら全然完結していない。脳Rの謎もなにも解けていなくて、最後のページに次回の作品名が書かれているくらいなのだ。続ける気なのかこの話を。
まあ、夢野久作らしくはないという点を除けば面白い話なのでシリーズ化されても不思議ではないのだけれども、今のままだと、ビジュアルとしての部分の方が面白さが上回っているので、活字で読むよりかは漫画で読んだ方がより楽しめそうだなあ。  

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2007年07月04日

十八時の音楽浴―漆黒のアネット

十八時の音楽浴―漆黒のアネット

  •  ゆずはら としゆき; 海野 十三/

  • 販売元/出版社 小学館

  • 発売日 2007-06-19


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作者には申し訳ないんだけれども「跳訳」なんて言葉を使われると読むのをためらってしまうわけで、それでも読もうとするのであればそれこそ地雷原に飛び込む覚悟がいる。しかし直前に読んでいた本が悪かった。『大久保町は燃えているか』である。なんとなく地雷原に飛び込んでも構わないかなという気分になってしまったのだ。
まあそれはともかく、実際に読んでみると意外なほど原本に忠実な展開をしていることに驚く。未読だった「火葬国風景」のパートなど、この設定は原本通りのものだろうと思っていたら、作者によるオリジナルな追加部分だったりして、追加された設定もそれほど違和感無く組み込まれている。ただ、非常に残念なのは原本の方が面白いということだ。
一方で「十八時の音楽浴」のパートになると意表をつかれる展開を見せる。あくまで原本に忠実な展開を見せるのだけれども、妄想力全開で跳訳にいどんだのか、まるで『家畜人ヤプー』を読んだときのような感覚。まああそこまで凄まじくはないけれども、まさか原本をひたすらエロ方面への解釈を試みるとは思わなかったよ。  


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