2008年02月29日

灰色の北壁

灰色の北壁 (講談社文庫 し 42-14)

  •  真保 裕一

  • 販売元/出版社 講談社

  • 発売日 2008-01

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『奇跡の人』を積読本にしてしまって以来、なんとなく真保裕一から離れてしまっていたのだけれども、『ホワイトアウト』以来の山岳ミステリということで読んでみることにしてみた。
『ホワイトアウト』が山岳ミステリなのかどうかという問題はさておき、三編からなる短編集で、なおかつそれほど厚くないということが読んでみようと思った一番の理由なのだが。
ミステリといっても殺人事件が起こるわけではなく、どちらかといえば山岳小説といったほうが近いのだが、遭難した登山者を救出する物語「黒部の羆」などでは、どこがミステリなのだろうと思いつつも読み進めていくと最後になってあっと驚く仕掛けがほどこしてあったりして、ああなるほどと思ったりもする。
「雪の慰霊碑」では、山で息子を亡くした父親が、数年後に同じ山に登るという話なのだが、何故山に登るのかというのが謎となっている。その結末はちょっと出来すぎというか安易な感じもしないでもないのだが、読後感が非常に良く、ああ良い話を読んだという気分にさせてくれる。
しかし表題作が一番面白い。
誰一人として制することが出来なかったホワイト・タワーと呼ばれる山の北壁登頂に成功する。しかし彼の写した山頂写真に疑問の声があがる。彼は本当に山頂にたどり着いて写したのだろうかという謎なのだがその真相が分かった時、ひさびさにミステリらしいミステリを読んだという気分にさせられた。そこに悪意が無いのが良いよなあ。  
タグ :真保裕一

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2008年02月28日

むかしのはなし

むかしのはなし (幻冬舎文庫 み 12-1)

  •  三浦 しをん

  • 販売元/出版社 幻冬舎

  • 発売日 2008-02

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ああ、これはいい話だなあ。
なんの予備知識もなくいきなり読んで、そして途中で明かされるある出来事に驚いて、そして最後の話まで一気に読みすすむ、というのが理想的なんだろうけれども、残念ながらそういう読み方は出来なかった。
もともとどんな話なのか知っていた上に、裏表紙のあらすじにどんな話なのかしっかりと書かれてしまっているからだ。
もっとも、あらかじめどんな話なのか知ってしまっていたとしても読み終えて、いい話だなあと感じるには違いないので問題ないわけだけど、やっぱりちょっと惜しかった。
有名な昔話を換骨奪胎して語り直していて、まあそれ自体は別に珍しい事ではないのだが、その語り直し具合が読んでいてなんだか気持ちがいい。あくまで誰かが誰かに語るという形で物語が進む。よくよく考えれば細かな部分で都合の良すぎる展開をしたりして、深く考えると納得のいかない部分もあるのだけれども、ああ、しかし、最後まで読み進めて、そして最後の一文を読み終えたとき、なんだか非常に心地よい気分にさせられるのだ。
誰かが誰かに語って、そしてそれがむかしのはなしになるのである。  
タグ :三浦しをん

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2008年02月27日

名短篇、ここにあり

名短篇、ここにあり (ちくま文庫 き 24-1)

  •  北村 薫、宮部 みゆき

  • 販売元/出版社 筑摩書房

  • 発売日 2008-01-09

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食べず嫌いってのは損なんだよなあとつくづく実感してしまった。
半村良や小松左京はSF系なので読んではいるが、ミステリ系の多岐川恭や戸板康二や松本清張あたりは、食わず嫌いでほとんど読んでいない。
とくに松本清張なんかは謎解きミステリとしても凄いのは知っていながらも、「社会派」という印象がこびりついてしまっているので毛嫌いしていた面もあったんだけど、松本清張の「誤訳」を読んで目から鱗が落ちる思いをした。やっぱり凄い。
それ以外の作家となると名のみ知っている程度だったので、吉行淳之介の「あしたの夕刊」のオチの付け方を見て驚いたのなんの。短編の締め切りが今日なのに、どうしても書くことの出来ない作家の家に届いた夕刊がなんと未来の夕刊で、そこには今日書いて渡すはずの小説が掲載されていた。ここで普通ならば掲載された小説を丸写しして編集者に渡すという展開になるのだが、この主人公はこう考える。
ここで自分がどうしようが未来は決定済みなのではないだろうか。未来の新聞に掲載されているって事は、この小説を丸写ししなくったって小説はできあがるってことだ。
そして主人公は何もしないのである。
なんなんだ、この因果律に挑戦する物語は。
一方、黒井千次の「冷たい仕事」は冷蔵庫の中で巨大に成長した霜を取るというだけの話なのだが、巨大な霜をうまく取る事が出来た時のあの何ともいえない高揚感を味わうことが出来る。
しかし一番凄かったのは吉村昭の「少女架刑」。
一人の少女が亡くなった時から話が始まり、母親に献体として病院に売られ、あちらこちらを標本として切り取られ、さらに実習材料としてあちらこちらを切り刻まれ、そしてほとんど骨だけの状態になったとき、始めて火葬され骨壺に入れられるのだが、そこまでの話が全て亡くなった少女の視点で語られるのである。吉村昭がこんな話を書いていたとは。  

Posted by Takeman at 12:30Comments(1)TrackBack(2)ちくま文庫
2008年02月26日

妙なる技の乙女たち

妙なる技の乙女たち

  •  小川 一水

  • 販売元/出版社 ポプラ社

  • 発売日 2008-02

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今まで小川一水の小説を読んできて、ある種のもどかしさを感じ続けてきていたのだけれども、ようやくやってくれたという感じだ。
小川一水の持っている健全さというものに対して、世の中そんなきれい事ばかりじゃねえよというような反発心があったのだが、もちろんそれは個人的な感情に過ぎないと同時にそれ故の自分自身のあきらめ感に対しての不満でもあったわけである。
だからこそ、そんな自分のふがいなさをぶん殴ってくれるような力強い健全さを期待していたのだ。
で、とうとう小川一水は僕をぶん殴ってくれたのである。
赤道直下のリンガ島に軌道エレベータが建設される。たちまちリンガ島は宇宙産業の拠点となり世界各国から様々な人間が寄り集まってくるようになった。舞台はそのリンガ島、そして語られるのはそこに住む七人の女性の七つの物語だ。
軌道エレベータが登場し、宇宙産業の城下町だからといって必ずしも彼女たちは宇宙に飛び出すわけではない。宇宙食用の弁当箱のデザイナーだったり、保育園の保母さんであったり、水上タクシーの船長だったりと、どちらかといえば地に根付いている方が多い。
むやみに宇宙に飛び出さず、あくまで地に足のついた、そして力強さと強かさの物語なのである。  
タグ :小川一水

Posted by Takeman at 12:30Comments(0)TrackBack(0)ポプラ社
2008年02月25日

二つの月の記憶

二つの月の記憶

  •  岸田 今日子

  • 販売元/出版社 講談社

  • 発売日 2008-01-18

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まったくもって不覚にして迂闊だった。
岸田今日子がこんな話を書くことができただなんて、いやもう自分の視野の狭さと不勉強さを恥じるばかりだ。何しろ僕にとっての岸田今日子ってのはムーミンの中の人であって中の人であって中の人であってそれ以外の何者でもなかったからだ。
つくづく活字の世界ってのは恐ろしく広大で奥深いってことを思い知らされたよ。いや、むしろ岸田今日子の奥深さに驚嘆したってほうが正しいか。
75歳という年齢でありながらも、何故こうも軽やかに飛び跳ねることが出来るのだろうか。
「オートバイ」でのお茶目な真の主人公はともかくとして、ふーん、こういう話を書くんだと思っていたら次の「二つの月の記憶」で愕然。
「K村やすらぎの里」ともなると、エッセイ風の実話的な始まり方をしておきながら、とある女性の、題名から遙かにかけ離れたおぞましい性癖が語られる。
「P夫人の冒険」ともなると、岸田今日子の勢いはもはや止まらず自由奔放、それでいてしっかりとした強かさを見せつける。
ああ、今もどこかできっと岸田今日子は軽やかに飛び跳ねているのだろう、岸田今日子はあまりにも軽やかに飛びすぎてこの世界からさえも飛び出してしまったのだ。
  
タグ :岸田今日子

Posted by Takeman at 12:30Comments(0)TrackBack(0)講談社
2008年02月22日

ベティアンよ帰れ

ベティアンよ帰れ (ハヤカワ文庫 SF 74)

  •  クリス・ネビル矢野 徹

  • 販売元/出版社 早川書房

  • 発売日 1972-11

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「Bettyann」と「Overture」という二つの短編をあわせて長編化したものなんだけれども、基本は「Bettyann」。
「Overture」が未読なのでどの部分が「Overture」の部分なのかは想像するしかないのだけれども、短編版「Bettyann」を水増ししただけに過ぎない感じもする。
三部構成で第一部はベティアンの幼少の頃とアミオ族の惑星遍歴の物語が交互に語られるのだが、第二部以降はベティアンの物語のみ。アミオ族の物語はイーガンの『ディアスポラ』における主人公の旅を彷彿させる部分もあってSF的には面白いのだが、クリス・ネヴィルはそういったセンス・オブ・ワンダーの方向には振り向いてくれない。
ダニエル・キイス『アルジャーノンに花束を』は長編化しても傑作となり得たのだが、『ベティアンよ帰れ』の場合、長編化したのは失敗だったのではないだろうか。
しかし、アミオ族のパートでは滅び行く種族の孤独感がひたすら描かれ続け、ベティアンのパートではどんな場合でも満たされない孤独感が主人公を苛む。それは今、自分がいる場所ではない、此処では無い場所への渇望であり、この間隔はおそらくSFが好きになった人間であれば一度は感じた事のある感覚ではないだろうかと思う。
  


2008年02月21日

燃えるスカートの少女

燃えるスカートの少女 (角川文庫 ヘ 14-1)

  •  エイミー・ベンダー管 啓次郎

  • 販売元/出版社 角川書店

  • 発売日 2007-12

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どうも読んでいて切ない気持ちにさせられる話ばかりだ。
恋人が日々逆進化して猿になり亀になりサンショウウオになり、そして……と、人間-猿-亀-サンショウウオが正しい逆進化なのかどうかという問題はさておき、どの話にも不思議な現象が描かれるのだが、どの話も満たされない悲しみが見え隠れしている。
無くしたものを不思議な能力で見つけることのできる青年の話などは、話の途中で物ではなく行方不明となった少年を捜す展開となるのだが、少年の身につけている物を手がかりに何とか見つけだした後で、彼は何かを探し出そうとする。しかし彼の能力を持ってしても見つけることは出来ない。そして彼はこうつぶやく。

ぼくを見つけにきて。ここにいるよ。見つけにきて。

ああ、なんという切なさ。
もっとも、読んでいて気が滅入るような陰鬱さというのは無いのでその点では救いがあるようなないような、というところだが、似ているからといって川上弘美のような話を期待すると気が滅入ってしまうかも知れない。  

Posted by Takeman at 12:30Comments(0)TrackBack(0)角川文庫
2008年02月20日

SFが読みたい! 2008年版

SFが読みたい! 2008年版―発表!ベストSF2007国内篇・海外篇 (2008)

  •  SFマガジン編集部

  • 販売元/出版社 早川書房

  • 発売日 2008-02

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国内に関しては、菅浩江が善戦したのと桜庭一樹の『赤朽葉家の伝説』が入ったのが意外で、なかなか面白い結果だったけど、海外ではレムが入らなかったのが意外だった程度でまあ妥当なところかな。
ベスト10に関してはまあそんなところだったけど、それ以外の記事としては最相葉月の記事が面白かった。いや、今まで、最相葉月って牽強付会っぽい部分があってあまり好きじゃなかったんだけど、御見逸れ致しました。次は是非とも福島正実の評伝をやっちゃって下さいと思ってしまうのは、私が福島正実びいきなせいもあるんだけど、福島正実って再評価されてもいいと思うんだけどなあ。
各人のベスト5では、国内ベストで朝松健が自作をベスト5に選んでいなかったのにも驚いた。今までは必ず自作をベスト5に入れていたのに、自作を入れないベスト5なんて朝松健のベスト5じゃないぞ。

ひねくれ者の私が2007ベストを選ぶとしたら、誰も入れそうもない作品を中心にこんな感じかな。順位は無し。
海外
ゴールデン・エイジ
星雲組曲
デイ・ウォッチ
真夜中に捨てられる靴
ゴーレム100

国内
水銀奇譚
ジョン平とぼくらの世界
預言者ピッピ(1)
コップとコッペパンとペン
零式


で、各社の刊行予定としては相変わらず国書刊行会が素晴らしすぎるラインナップなんだけど、まあ国書刊行会の場合は今年の予定ではなくって、この先10年の予定といった趣だからなあ。  

Posted by Takeman at 12:30Comments(0)TrackBack(0)早川書房
2008年02月19日

漫画ノート

漫画ノート

  •  いしかわじゅん

  • 販売元/出版社 バジリコ

  • 発売日 2008-01-25

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前作にあたる『漫画の時間』が出てからもう12年も経っていたとは……。
とにかくこの本は面白かった。
今までに多少はいしかわじゅんの漫画を読んだことはあったのだけれども、『漫画の時間』はいしかわじゅんの描く漫画よりも面白かったのだ。
なによりも実作者としての視点を中心として、批評がブレていないところが素晴らしい。
僕自身、感想などと逃げを打って、こんな駄文を書き散らしているけれども、ああ、文章そのものは下手でもいいから視点としてはぶれない文章を書きたいものだ。
それはともかくこの本のおかげで、木崎ひろすけの存在を知ることが出来たのは僕にとって一番の収穫だったのだが、あれから12年。木崎ひろすけは未完の長編二作とかろうじて完結させた長編一作を残して逝ってしまった。
この本で紹介されていた『GOD GUN世郎』をあちこち探し回り、ようやく見つけて買った書店はそれから数年後につぶれ、その跡地は古本屋になり、その古本屋も数年後につぶれ、今ではゴルフ用品店になってしまっている。
で、『漫画ノート』が出た。
とにかく分厚くて読み甲斐があったのだが、読んでいてドキリとしたというか、『失踪日記』を読んだときに心の奥底では分かっていながらも深く考えないでいた、ある真実に触れていたのがこの本の一番最後にある吾妻ひでおの話。
漫画を書くことから逃げながらもガス会社の社内報にイラストを描いていたのはやはりそうだったのだ。
業としか言いようがないよなあ、これは。  

Posted by Takeman at 12:30Comments(0)TrackBack(0)バジリコ
2008年02月18日

来月の気になる本 2008/3

『いつも春のよう 増補版』あすなひろし エンターブレイン
『あすなひろし傑作集(仮)』あすなひろし エンターブレイン
『四畳半神話大系』森見登美彦 角川文庫
『メグとセロン(1)三三〇五年の夏休み(上)』時雨沢恵一 電撃文庫
『『瑠璃城』殺人事件』北山猛邦 講談社文庫
『日の砦』黒井千次 講談社文庫
『シャルビューク夫人の肖像』ジェフリー・フォード ランダムハウス講談社文庫
『芝生の復讐』リチャード・ブローティガン 新潮文庫
『暗い落日』結城昌治 中公文庫
『ライノクス殺人事件』フィリップ・マクドナルド 創元推理文庫
『風前の灯! 冥王星ドーム都市』野田昌宏 創元SF文庫
『遙かなる巨神』夢枕獏 創元SF文庫
『ゴールデン・マン』フィリップ・K・ディック ハヤカワ文庫SF
『まだ人間じゃない』フィリップ・K・ディック ハヤカワ文庫SF
『HAMMERED(仮)』エリザベス・ベア ハヤカワ文庫SF
『あなたに不利な証拠として』ローリー・リン・ドラモンド ハヤカワ文庫HM
『弥勒の掌』我孫子武丸 文春文庫
『君の望む死に方』石持浅海 祥伝社ノン・ノベル
『限りなき夏』クリストファー・プリースト 国書刊行会
『天体の回転について』小林泰三 早川書房
『道化の町』ジェイムズ・パウエル 河出書房新社

気がつかなかったんだけど今月、エンターブレインが立ち上げる漫画文庫の創刊ラインナップとしてあすなひろしの『青い空を、白い雲がかけてった』が上下巻で出る。
選集でしか収録されていなかった「源平じいさん」も収録され、カラー原稿も復刻させた完全版とのこと。で、来月はさらに二冊。
ランダムハウス講談社も文庫化が早くってジェフリー・フォードの『シャルビューク夫人の肖像』が早くも文庫化。
文庫化といえば、この間、六興出版部版がヤフオクで数万の値が付いていたフィリップ・マクドナルドの『ライノクス殺人事件』が東京創元社より文庫化。
野田宇宙大元帥が書いた『風前の灯! 冥王星ドーム都市』もいよいよ刊行でキャプテン・フューチャー全集もこれにて完結。
それにしても夢枕獏の『遙かなる巨神』は「カエルの死」も収録して文庫ってのはどうなのかって気もするけど、せっかく出してくれるんだから文句は言えないよなあ。
映画『NEXT』の原作って、マイケル・クライトンじゃなかったっけ、と思ったフィリップ・K・ディックの短編集が二冊だけ復刊するけど、ああ、やっぱり紛らわしいよなあ『NEXT』って題名は。
石持浅海の『君の望む死に方』は『扉は閉ざされたまま』のあの人が探偵役ということで、今度はどんな内容になるんだろうなあ。
国書刊行会からはクリストファー・プリーストの『限りなき夏』が出る予定で、いよいよ残すは『ダールグレン』のみとなりました。個人的には『ダールグレン』は後回しでいいから第三期のほうを始めちゃって欲しいんだけどなあ。  

Posted by Takeman at 12:30Comments(0)TrackBack(0)ホンの話
2008年02月15日

ウルフヘッド

ウルフヘッド (1979年) (サンリオSF文庫)

  •  チャールス・L・ハーネス

  • 販売元/出版社 サンリオ

  • 発売日 1979-06

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本家ワイドスクリーン・バロックであるのに、寡作で作品数が少ない上に翻訳は短編が三編と長編が一編しかないので日本ではワイドスクリーン・バロックという言葉が登場しても名前すら挙がらない事の多いチャールズ・L・ハーネス。
サンリオが撤退さえしなければ今頃は『リタネルの環』ぐらいは翻訳されていただろうと思うと残念で仕方ない。しかもどこかの出版社が翻訳権を持ったままらしいのに、翻訳される気配など一向に無いのでなおさら悔しくてたまらない。
で、唯一翻訳された長編『ウルフヘッド』はというと残念ながらワイドスクリーン・バロックではない。
地底に住む住人に妻を誘拐された主人公。その時に受けた傷がきっかけとなって超能力を手に入れるのだが、その超能力は24時間で消えてしまうことを知る。自分の脳の一部を移植し、意志の疎通が出来るようになった狼と共に地底に潜り、24時間以内に妻の救出を目論む。というのがおおよそのあらすじなのだが、本家ワイドスクリーン・バロックが書いたとは思えないほどごく普通でまともな展開をする。
解説でも安田均が、ハーネスの評価は『The Paladox Men』か『The Ring of Ritornel』が出たときにするのがいいだろうといっている通りで、この本だけだとハーネスを絶賛したくってもしようがない。
まあ今更あえて読もうとしなくってもいい話なんだけど、冗長な部分が無いおかげでテンポよく進む展開と事件は解決してもハッピーエンドではない終わり方のおかげで読んだら読んだでそれなりの充実感は与えてくれる。  


Posted by Takeman at 12:30Comments(2)TrackBack(0)サンリオSF
2008年02月14日

魔女の隠れ里

魔女の隠れ里 (講談社文庫 は 78-4 名探偵夢水清志郎事件ノート)

  •  はやみね かおる

  • 販売元/出版社 講談社

  • 発売日 2008-01

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都筑道夫に挑んだのか、木をまたいだシュプールの謎が登場する。
スキー場におけるこのような光景は絵的にには素晴らしいんだけど、都筑道夫の他にもたがみよしひさが挑戦していたりして前例があるので、こんな現象不可能じゃないし、なんか仕掛けがあるんだろうなと思ってしまうあたり、謎としては賞味期限切れといった感じかな。
さらには、これを発端として次々不思議な謎がまき起こるのだろうと思っていたのだけれども、シュプールの謎が解けたら第一部があっさりと終了。幕間をはさんで第二部が始まるんだけれどもこれは第一部とは全く違う事件で、変な構成だなあと思っていたら第二部を読み終えたらその構成の妙に感心してしまった。ああ、確かにこの構成じゃないとだめだよなあ、今回の話は。
しかしそれ以上に素晴らしいのは第二部の内容で、村おこしのために推理ゲームが企画されるのだが、招かれざる客や謎の人物による犯行予告と定番の出来事が起こる。
ゲームがゲームでなくなったとき、普通のミステリならば殺人事件が起こるだろうけれども、殺人事件を起こさないところが素晴らしいのだ。子供向けミステリというであるというのがその理由だろうけども、血なまぐさい事件を起こさずにみごとなミステリに仕上げているのだ。
それだけに、この本のみに追加されたあの真相は余分な気がする。まあいやならそこだけ読み飛ばしをすればいいのだけれども。  


Posted by Takeman at 12:30Comments(0)TrackBack(0)講談社文庫
2008年02月13日

猫のパジャマ

猫のパジャマ

  •  レイ・ブラッドベリ中村 融

  • 販売元/出版社 河出書房新社

  • 発売日 2008-01

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本に耳が付いているせいでついつい買ってしまったけれども、やはり読んでいて悲しくなってしまった。
『塵よりよみがえり』を読んで愕然としてしまった事があったのでもう新作は読まないことにしていたんだけど、書いたっきり未発表のまま書斎に眠っていた1940年代から1950年代にかけての作品と、2000年以降の作品とが入り交じった短編集だというせいもあって読むことにしたのだ。
少なくとも1940年代の作品は輝いているだろうと思ったのである。
しかしなあ……。なんだか変なのだ。
そこに書かれているのは確かにいつも通りのブラッドベリの世界だ。
でも輝いていない。
この本の冒頭で、ブラッドベリは「ピンピンしているし書いている」と語っている。そう、ブラッドベリはちょっと年老いてしまったけれども、何も変わってはいないのだ。むしろ変わってしまったのは自分の方なのである。
いつの間にか僕はブラッドベリを卒業してしまっていたのだ。そう気付いたとき悲しくなった。
いつか年老いたとき、『火星年代記』をもう一度読み直してみようと思い続けていたのだが、この本もおそらく、あの頃のように輝いてはいないのだろう。  

Posted by Takeman at 12:30Comments(0)TrackBack(0)河出書房新社
2008年02月12日

夏の涯ての島

夏の涯ての島 (プラチナ・ファンタジイ)

  •  イアン・R・マクラウド浅倉 久志

  • 販売元/出版社 早川書房

  • 発売日 2008-01-09

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『90年代SF傑作選』に収録された「わが家のサッカーボール」を読んだとき、変な話だなあと思ったのだが、あらためてイアン・R・マクラウドの短編をまとめて読んでみるとSFとしては変な話が多い。
おもしろさがSFとしての設定に依存していないというか、一見するとSF的な設定など必要としないのではないかと思ってしまうほど設定と主題が融合しきっている。まあSFでなくても書けそうな話もあるんだけれどもね。
センス・オブ・ワンダーこそないけれども、かみしめればかみしめるほど味が出る話ばかりで、「ドレイクの方程式に新しい光を」なんかはしみじみと胸を打つ切ない話で、ちょっとジャック・マクデヴィット「標準ローソク」を彷彿させる感じでもあったけど、川端裕人の『せちやん 星を聴く人』に置き換えも可能かな。
異星人からのメッセージを探し続けた主人公の元に最後に届いたメッセージが個人レベルのものか個人レベルでは計りきれないものだったのかの違いでもある。私はどちらも好きだ。
ジョーン・D・ヴィンジの「錫の兵隊」っぽい話になるのかなと思っていたらそんな話にならなかった「チョップ・ガール」も切ない話なんだけど、ちょっとだけ救いのある結末で後味が悪くないのが実にいい。
邦題が素晴らしい「夏の涯ての島」は歴史改変モノなんだけど、これもまた切ない話で主人公が戦死した恋人フランシスの実家に訪れるシーンなんかは映画『ブロークバック・マウンテン』を思い出してしまった。
辛くて切ない話が大半。けれどもそれを乗り越えようと一歩踏み出したところまでが描かれているので読んでいて救いがあるのだ。  

Posted by Takeman at 12:30Comments(0)TrackBack(0)早川書房
2008年02月11日

都市に降る雪

都市(まち)に降る雪

  •  波多野 鷹

  • 販売元/出版社 早川書房

  • 発売日 1991-11

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そもそも「ハヤカワ文庫ハィ!ブックス」などというレーベルから出たのが不運だったのかも知れないが、まあ出した時点で「ハィ!ブックス」が鳴かず飛ばずで無惨にも消滅してしまうなどとは思わなかっただろうから仕方なかったとはいえ、素直に「ハヤカワ文庫JA」から出ていたならばもう少し救いもあったかも知れない。
しかしそれ以上に、作者自身がフィクションを書くのを止めてしまったことの方が大きいのかもしれない。奥さんの久美沙織の方は書き続けているのに。
それにしてもまあ後味の悪い話だった。後味が悪いことは承知していたのだけれども、全体を流れる雰囲気からして暗いのである。政界の黒幕に飼われる少女を助けようとして無惨にも殺される青年の話では、少女は一時は逃げようとするが青年の死を見た後、逃げるのを止め自ら黒幕の元の場所へと戻っていってしまう。身も蓋もないというか、絶望とかあきらめとかそんなものを通り越している世界である。食料としてクローン培養された少女の話に関しても同じ事が言える。彼女は自分が食料となることを知っていながら、それを喜びとして感じているのだ。汚職と腐敗の社会、彼女を助けようと潜入した警官はもちろん上司が組織と繋がっていたために組織に捕らえられ、残りの人生を日の当たらない地下で過ごすこととなる。ペットとしてだ。
無情で、悲惨なわりには作者が登場人物を完全に突き放しているためにわりとカラッとしているところがせめてもの救いだ。  

タグ :波多野鷹

2008年02月08日

ラナーク―四巻からなる伝記

ラナーク―四巻からなる伝記

  •  アラスター・グレイ

  • 販売元/出版社 国書刊行会

  • 発売日 2007-11

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四六判のハードカバーで上下二段組700ページと分厚いのだけれども、分量的にダン・シモンズの『ザ・テラー』と対して変わらないわけで、そう考えると分厚さに怯むことなんかないのだけれど、立て続けに分厚い本を読むのはなかなかしんどい歳になってきました。
しかし読み始めてみるとどうにも村上春樹の『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』と比較してしまいがちになってしまいます。
もう二十年以上も前に読んだっきりなので単純に比較出来るものではないのですが、記憶に残っている面白さのレベルでは『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』の方が遙かに上です。
どちらの作品も作者の言葉によれば自伝的な要素が高く、相関関係がある二つの物語とSF的な要素。しかし『ラナーク』の三、四巻でのファンタジー度の具合は『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』の方が上だったし、一、二巻の主人公の駄目さ加減と嫌な奴度の高さは面白さを減少させてしまいます。
もちろんこれは単純な物語の面白さだけの問題であって、エピローグで作者がいきなり登場したあたりでのメタフィクション構造が展開されるあたりは読んでいてゾクゾクする部分で、活字を読む楽しさがあったりもします。
よくもまあこれだけいろんな要素を思いついてぶち込んだものだと感心するのだが、そのあたりは二巻を読めば納得が出来たりするので読み終えてからあれこれ思いめぐらしてみるのも楽しいものです。これだけむちゃくちゃやっていながら結末の付け方が非常にまともというか、後味がいいのには参りました。
でも25年もかけて書き上げたというあたりで、なんとなくヘンリー・ダーガーっぽい部分があるんだよなあ。  

Posted by Takeman at 12:30Comments(2)TrackBack(0)国書刊行会
2008年02月07日

本棚

本棚

  •  ヒヨコ舎編

  • 販売元/出版社 アスペクト

  • 発売日 2008-01-18

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本棚を見るのは楽しい。
からっぽの本棚であれば、これからそこにどんどん本を置くことが出来ると夢想することができる。
いっぱいの本棚であれば、そこに並んだ本を眺めるだけで幸せな気分になれる。
そんなわけで一番楽しいのは書店の本棚を眺めることなのだが、次に楽しいのは他人の本棚を眺めることだ。
誰が言ったか忘れてしまったが、他人に本棚を見られるのはタンスの中の下着を見られるより恥ずかしいと言った人がいた。その時、ああその気持ち、よく判ると思った。
というわけで、世間にはブログで自分の本棚の写真を公開している人がいるのだが、私は恥ずかしくって出来ない。
しかし、よくよく考えてみたら、読んだ本の感想などをこうしてブログでさらしているわけだから、本棚を公開しているのと同じようなものではないのかと思ったりもするのだけれども、わたしにとっては他の書評ブログの膨大な書評のページを眺めるよりも、たった一枚の本棚の写真を眺める方が楽しいわけで、やはり違うのである。
で、川上未映子と桜庭一樹の本棚が載っているという時点で非常にタイムリーというか凄い偶然だなと思うこの本は、他人の本棚を見たいという私の願望を満足させてくれる本だった。
本棚すべてをさらけ出しているのではなく、本棚の一部だけしか見せていないところが想像力をかき立てさせられて実にいい。
桜庭一樹の本棚に『最後の竜に捧げる歌』があったのが、この本が好きだった私にとってはちょっとうれしかった。桜庭一樹の本棚にあったのは漫画版のほうだったけど。  

Posted by Takeman at 12:30Comments(0)TrackBack(0)アスペクト
2008年02月06日

この世界の片隅に(上)

この世界の片隅に 上(アクションコミックス)

  •  こうの 史代

  • 販売元/出版社 双葉社

  • 発売日 2008-01-12

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そもそも題名を見た瞬間から嫌な予感がしていた。
『ぴっぴら帳』とか『こっこさん』とか『さんさん録』などという、どちらかといえばほんわかとした題名をつけていた作者がこういう題名をつけた時には要注意なのだ。
長い道』からしてそうで、表面上はほのぼのとした話なのだけれども、主人公の二人は夫婦でありながら実は形式だけの夫婦であるというシビアな設定と毒が潜んでいた。
で、読み始めてみると時代背景が戦前の日本、雪男みたいに毛もくじゃらの人さらいが登場したり、座敷わらしが登場したりとするので、これはこうの史代の新境地なのかと思っていたら甘かった。
最初の三編は主人公の子供の頃の話でいわば番外編みたいなもの。本編はそれから時代が過ぎさって昭和18年12月から始まる。
舞台は広島だ。
そして一話ごとに月日が経過していくのである。
主人公は呉に住む青年の元に嫁ぐので、それ以降の物語は呉市内を舞台としているが、主人公の実家は広島市江波である。そしてこのまま物語が続けばやがて避けては通ることのできないあの出来事が起こるのだ。
こうの史代が再び何をどのように描くのだろうか、それを思うと恐ろしくてたまらないのである。
ああ、しかしそれとは別にこの本は非常に素晴らしい。「波のうさぎ」の後半、主人公が画用紙に風景をスケッチするのだが、その画用紙が漫画の一コマとなっているのだ。少しずつ絵が完成していく過程が一コマ一コマ描かれそして最後のコマで絵が完成する。
これは読んでいて背筋がゾクリとするくらいに素晴らしかった。  
タグ :こうの史代

Posted by Takeman at 12:30Comments(0)TrackBack(0)漫画
2008年02月05日

怪奇小説という題名の怪奇小説

怪奇小説という題名の怪奇小説 (1980年) (集英社文庫)

  •  都筑 道夫/

  • 販売元/出版社 集英社

  • 発売日 1980-01


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飛ぶ鳥をも落とす勢いであると言ったらちょっと過言かもしれないけれども、そんな勢いのある道尾秀介が選ぶオールタイムベスト3の一つが都筑道夫の『怪奇小説という題名の怪奇小説』。
で、読んでみるとなんとも形容しがたい不思議な小説だ。
主人公は怪奇小説を依頼されたとある作家。得意のジャンルなので簡単に書くことが出来るだろうと思っていたらこれがなかなか書くことが出来ない。子供の頃の体験談を思い出しながらなにか使えそうなアイデアが無いものかと思案するところから物語が始まるのだけれども、これの部分だけ読むと単なるエッセイにしか見えないところが巧妙な部分で、それからいきなり怪奇小説の定義に移り、その成功例の一つとして自分の訳したジョン・スタインベックの「蛇」がまるごと掲載される。おそらく翻訳権とかは取得したはずだろうけれども、小説の中に他人の小説が丸ごと入っているというのはどうも居心地が悪いものだ。しかしそう思い始めてしまうと、もうそれは作者の手中にとらわれてしまったわけで、境界線の曖昧な不思議な世界に翻弄されるのだ。
光文社の都筑道夫コレクションには何故か収録されなかったけれども、ジャンルを決めて収録作品を整えた都筑道夫コレクションに入れるとなると作品自体のジャンルを決めてしまわなければいけなくなるわけで、ジャンル決めをしてしまうと面白みが欠けてしまうこの作品、かえって収録されなくて良かったのかも知れない。  
タグ :都筑道夫

Posted by Takeman at 12:30Comments(6)TrackBack(0)集英社文庫
2008年02月04日

七色の海

七色の海 (ふしぎ文学館)

  •  曽野 綾子

  • 販売元/出版社 出版芸術社

  • 発売日 1994-06


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おおぎょるたこさんの『わしには,センス・オブ・ワンダーがないのか?』のこの記事で紹介されていて気になっていたのだけれども、困ったことに基本的にホラーとか恐怖小説とかがあまり好きではないのだ。いや苦手といった方が良いだろう。
しかし読んでみたいという気は多分にあるわけで読んでみようと思い立ったのだが、ここで紹介されている『異形の白昼』は絶版。この話が収録されている本はというと出版芸術社から出ている『七色の海』が唯一入手可能な一冊だった。しかしこの本、心理サスペンス&恐怖ミステリ傑作集ではないか。読んでみたいという意志があるのだが読もうとする気力が萎えてしまう。というわけで悶々とした日々を送っていたのである。しかしこの先死ぬまで悶々とした日々を送るのがいいのかそれとも思い切って読んで嫌な気分になった方がいいのかを天秤にかけるとやはり後者のほうがいいだろうということで読んでみることにした。
で、読んでみると心理サスペンス&恐怖ミステリ傑作集とあるわりにはそれほど大したことはない。いや話がつまらないというわけではなく怖くはないのだ。どちらかといえば「奇妙な味」という物に近い。不安感を煽っていって最期にどうなるかというと思わず脱力してしまうような結末になってみたり、まあこれは悪くいえばの話だが、曽野綾子がこういう傾向の話を書いていたとは不勉強ながら知らなかったよ。
後半になると恐怖ミステリの度合いが高まって、地味ながらも自分に尽くしてくれる妻のとんでもない性格と行動が次第に明らかとなってくる「お家がだんだん遠くなる」なんかは題名の付け方がとてつもなく素晴らしく、切なさと嫌さかげんをかもしだしている。
そして、肝心要の「長く暗い冬」はといえば、絶対に倒せないラスボスのごとくこの本の末尾に位置して、読む者になんともいたたまれないダメージを与えているのだ。親ならば子供に責任を持てというような説教めいた文章から始まるこの話、読み終えてこの冒頭の文章が胸に重くのしかかるのである。  

タグ :曽野綾子

Posted by Takeman at 12:30Comments(2)TrackBack(0)出版芸術社