2008年05月15日

来月の気になる本 2008/6

『日本沈没 第二部(上下)』小松左京/谷甲州 小学館文庫
『ガダラの豚(上下)』中島らも 双葉文庫
『冒険小説論』北上次郎 双葉文庫
『耳をふさいで夜を走る』石持浅海 徳間書店
『回送電車』堀江敏幸 中公文庫
『愚者と愚者(上下)』打海文三 角川文庫
『血みどろ砂絵 なめくじ長屋捕物さわぎ』都筑道夫 角川文庫
『明治開化 安吾捕物帖』坂口安吾 角川文庫
『ひげのある男たち』結城昌治 創元推理文庫
『高城高全集2 凍った太陽』高城高 創元推理文庫
『氷』アンナ・カヴァン バジリコ
『白昼堂々』結城昌治 光文社文庫
『ポドロ島』L・P・ハートリー 河出書房新社
『日本SF全集1 1957-1971』日下三蔵編 出版芸術社
『ボルヘスと不死のオランウータン(仮)』ルイス・フェルナンド・ベリッシモ 扶桑社ミステリー
『緑のヴェール』ジェフリー・フォード 国書刊行会
『遠すぎた星 老人と宇宙2』ジョン・スコルジー ハヤカワSF
『野獣の都』マイクル・ムアコック ハヤカワSF
『楽園の日々』アーサー・C・クラーク ハヤカワSF
『晴れた日は、お隣さんと。』福田栄一 MF文庫

『日本沈没 第二部』が早くも文庫化。それにしても最近は文庫化されるのが早くなったなあ。
早いといえば打海文三の『愚者と愚者』も文庫化されます。本当は三作目の『覇者と覇者』の刊行に合わせて文庫化される予定だったようなんだけど、ああ……。
しかし、来月の角川文庫のラインナップはなんだか復刊ブームといった感じで都筑道夫や坂口安吾、半村良や高木彬光、横溝正史まで復刊。横溝正史の『髑髏検校』なんてこの間復刊したばかりだし、高木彬光の『大東京四谷怪談』なんて墨野隴人シリーズの三作目だよ。いきなり三作目ってのも凄いよなあ。
凄いといえば結城昌治の復刊も凄い。来月は二作も復刊で、今まで未読だった身としてはうれしい限りだけれども、一体どうなっているんだろうか。
バジリコからはいよいよアンナ・カヴァンの『氷』が復刊。しかしなあ、一度読もうと思って手に取ったはいいけれども読み切れる自身がなくってあきらめた過去があるからなあ。今回はいけそうかどうか不安。
『日本SF全集』もラインナップも発表されてようやく動き出したみたいなのでうれしい限りですが、今日泊亜蘭は「カシオペヤの女」でしたか。うーん、やっぱりそうだろうなあ。
国書刊行会は、いよいよ三作目が登場。もっとも確実に出るとは限らないのだけれども、ようやくこれで積読のままにしてある『記憶の書』が安心して読めます。
L・P・ハートリーの『ポドロ島』は「豪州から来たお客」が収録されていないのがちょっと残念。まあ欲張っても仕方ないのだけれども。
  

Posted by Takeman at 12:30Comments(0)TrackBack(0)ホンの話
2008年05月14日

ぼくたちのアニメ史

ぼくたちのアニメ史 (岩波ジュニア新書 587)

  •  辻 真先

  • 販売元/出版社 岩波書店

  • 発売日 2008-02

Amazon/楽天ブックス



辻真先のアニメ史といえば、過去に『TVアニメ青春記』があり、おまけに岩波ジュニア新書というレーベルなのでそれほど濃い内容ではないだろうと高をくくっていたら驚いた。
いや、軽くみていた自分に猛省を促し、申し訳ありませんでしたと謝りたくなった。
確かに『TVアニメ青春記』と比べれば中身は薄いし資料的な価値も乏しいのだが、だからといってけっして手を抜いているわけではない。さすがは『デビルマン』は当たり前として『一休さん』や『魔女っ子メグちゃん』においてさえトラウマになりそうな酷い話、もとい、厳しい現実を描いた辻真先である。
『TVアニメ青春記』と重なっている部分もあるのだけれども、予想以上に重なりが少なく、『TVアニメ青春記』で語られた以降のアニメにもかなり言及されているのでお得感も倍増なのだ。
で、ついつい比較してしまうのが小松左京の『SF魂』と『小松左京自伝 実存を求めて』だ。
こちらの方は聞き語りというせいもあってか内容に重複が多く、しかも小松左京自身からも往年のパワーが消えてしまっている。辻真先の方が一歳年下とはいえ、あまりの違いに愕然としてしまい、自伝など書いている暇があったらもっと他にやることがあるだろうと言いたくもなるのだが、停滞していた小松左京がようやく動き始めたのだと思うことにしよう。  
タグ :辻真先

Posted by Takeman at 12:30Comments(0)TrackBack(0)岩波書店
2008年05月13日

時果つるところ

超原子爆弾の爆発によって一つの都市がまるごと百万年後に吹っ飛ばされてしまうという設定は非常にそそるものがあった。
初めてこの話の存在を知ったときに、読んでみたいものだと思ったんだけれども、残念ながらこの話が収められた本はその当時であっても入手困難な状態で、文庫化されないものかとひたすら待ち続ける日々だった。
しかしいくら待っても文庫化される気配すらない。もっとも気配があったらそれを感じることができたのかといわれればそんなことなど出来るはずもなかったけれども、そのおかげで文庫化されていた『虚空の遺産』の方も読む気が起きなくって、読んでみようかと思い始めたときにはこちらの方も入手困難になってしまっていた。
まあ、さすがに文庫化されていたので、それほど苦労せずに読むことはできたんだけれども、『時果つるところ』の方はなかなか読むことができない状態だった。
で、まあなんとか入手することが出来て読んだんだけれども、期待感が高すぎてしまったせいか、うーむ、悪くはないけど良くもないといったよくあるパターンになってしまった。
都市ごと吹っ飛ばされて、廃虚と化したドーム都市を発見し、そこで無線機を動かして誰か応答してくれないものかと通信するところまではまあいい。しかし問題はその後だ。
通信を受信して飛んできたのはなんと遙か宇宙の彼方の異星人たちだったというあたりから全体のトーンが変わってくる。いやまさか地球上のどこかから応答が来るかと思ったら遙か宇宙の彼方から応答に答えてやってくるとは思わなかったよ。
しかし、まあハッピーエンドで終わる結末はそんなに悪くないのもまた事実なんだけど、『虚空の遺産』の身も蓋もない虚無感的なアンハッピーエンドの方が個人的にはしっくりとくるなあ。多分もっと若いときに読んでいたら『時果つるところ』の方がよかったと思ったかも知れないけれど。
  

Posted by Takeman at 12:30Comments(0)TrackBack(0)早川書房
2008年05月12日

ロボット宇宙船

ロボット宇宙船 (1968年) (Q-TブックスSF)

  •  A・E・ヴァン・ヴォークト

  • 販売元/出版社 久保書店

  • 発売日 1968

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原題が『The Mating Cry』なのでそのまま翻訳しては使えない事は理解できるんだけれども、その変わりになったのが『ロボット宇宙船』とは……。
いや、何ともインパクトのない題名だなどというのは読む前の話で、読み終えてみると、見事なまでにネタバレの題名なのである。
もっとも、ヴァン・ヴォクトの書いた話なのでちょっとやそっとのことではネタバレなど起こしようがないというかネタバレをしようと思うととてつもない労力を強いられることになるので『ロボット宇宙船』などというネタバレの題名をつけられてもこの物語の破壊力は微塵もしないのである
まあ、ヴァン・ヴォクトの他の話と比べると数段落ちる話ではあるが、それでも終盤における登場人物たちの仮面が次々とはがれていくシーンは圧巻である。もちろんヴァン・ヴォクトの世界なので文字通り仮面が剥がれるのである。
もう一つ特筆する点は、さすがは『The Mating Cry』とつけただけあってベッドシーンがやたらと入る点だ。無論、書かれた時代が時代なのであっさりとしているのだがヴァン・ヴォクトがこんな話を書いていたとは思わなかったよ。  


Posted by Takeman at 12:30Comments(0)TrackBack(0)Q-Tブックス
2008年05月09日

地球最後の砦

地球最後の砦 (ハヤカワ文庫 SF 28)

  •  A・E・ヴァン・ヴォクト

  • 販売元/出版社 早川書房

  • 発売日 1971-06

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マイクル・スワンウィックの『グリュフォンの卵』に収められていた「時の軍勢」がヴァン・ヴォクトっぽいなあと思っていたら『地球最後の砦』のオマージュだという話を知って、探し出して読んでみた。
おお、これは確かにそうだ。うれしくなるほどスワンウィックはヴァン・ヴォクトを真似している。
それにしてもヴァン・ヴォクトって人は自分のことを神か何かそれに近い存在だと思っていたんじゃないのだろうか。
ここまで無茶で破綻しきっている物語を圧倒的なパワーで最後まで押し切ってしまうのは普通の人間じゃ出来っこない。まあ大抵は書き上げても恥ずかしくって世に出せないだろう。
後にも先にもこんな芸当が出来て、そしてそれが許されるのはヴァン・ヴォクトだけなような気もする。いやちょっと言い過ぎか。
しかし登場する人物のどいつもこいつも超人的な能力を発揮し、というか凡人として登場したはずの人間ですら物語が進むと驚くべき能力を発揮するのだから呆れて物も言えないのだが、何よりもラストの一文が凄まじすぎる。

可哀相に、何も知らないスーパーマン。

超人ですら「可哀想」といわれる扱いなのである。ヴァン・ヴォクトは自分のことを神か何かそれに近い存在だと思っていたに違いない。  

2008年05月08日

縹渺譚

縹渺譚 (1977年) (ハヤカワ文庫―JA)

  •  今日泊 亜蘭

  • 販売元/出版社 早川書房

  • 発売日 1977-01

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たまに、ひょっとしたらこの人は死なないんじゃないかと思ってしまう人がいる。
山田風太郎がそんな感じだったし、アーサー・C・クラークもそんな感じだった。不謹慎な言い方になるのだが、もうそろそろ死んでしまうんじゃないかというような雰囲気を漂わせておきながら、飄々として生き続けている人たちなのである。
そういう雰囲気を漂わせている人が亡くなった場合、不思議と悲しくはならない。
で、今日泊亜蘭も僕にとってはそんな一人なのである。
それはともかくとして、困ったことにこの人は、なかなか本を書いてくれない。
とくに、三部作の構想をしておきながら二作で止まってしまうのである。
<根岸物語>シリーズも「瀧川鐘音無」と「新版黄鳥墳」で止まったままだし、『光の塔』とその続編『我が月は緑』も三作目の構想があるといっておきながらいつまでたっても続きがでない。
そして『縹渺譚』も、あとがきで三部作を構成すると書いておきながら、三作目を出さないのである。
ある意味、完結させるのを良しとしない性格なのだろうか。しかし、今もおそらく飄々と生き続けていること、そしてこの人は死なないんじゃないかと思えて仕方ないことを考えると、わざと書かないで読者を焦らしているんじゃないのかと思ってしまう。
まあそれはともかく、こういう文章に触れると、ああ日本人として生まれてきてよかったなあと実感するのだ。何よりもこの本には日本語のおもしろさと美しさが詰まっている。  

タグ :今日泊亜蘭

2008年05月07日

SCARDOWN―軌道上の戦い―

SCARDOWN―軌道上の戦い― [サイボーグ士官ジェニー・ケイシー2] (ハヤカワ文庫 SF ヘ 9-2 サイボーグ士官ジェニー・ケイシー 2)

  •  エリザベス ベア前嶋 重機月岡 小穂

  • 販売元/出版社 早川書房

  • 発売日 2008-04-09

Amazon/楽天ブックス



前巻と同様、相変わらずあらすじが先走ってしまっているのはどうかと思うわけでとにかく話が進まない。半分近く読み進めても中国側の熾烈な攻撃は起こらないのである。
もっともこれはあらすじに影響されて読んでしまった場合のことで、そんなもの気にせず読んだ場合はどうかといえば、やっぱり展開が遅い。前巻で行方知れずとなった人物がどうなったかなんてかなり後にならなければ判明されず、前巻の終わりで主人公が船に乗り込んだと思いきや、いつのまにか地球に戻ってきているし、予想外の展開が多い。
主人公のライバルになりそうな人物はライバルになる以前に危うく物語から退場しかけるし、中国側の描写も登場するけれども、中国側がとんでもない事をしてくる割には中国側の視点人物はいい人なので、落差が激しいし、主人公が憎んでいる人物は終盤でいきなりかっこいい見せ場を作ったりする。
というわけで、逆に考えれば予想を裏切る展開の応酬というわけであり、これほど意外性に富んだ物語というのも近年まれにみる存在だとも言える。まあどんな物語でも楽しもうと思えば、いくらでも楽しむための読み方というのあるのだ。
  

2008年05月02日

ライノクス殺人事件

ライノクス殺人事件 (創元推理文庫 M マ 8-3)

  •  フィリップ・マクドナルド

  • 販売元/出版社 東京創元社

  • 発売日 2008-03-24

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あまり過剰な期待などせずに読めばけっこう楽しめる作品なので、文庫という形態で出たのはじつにありがたい。
「結末」から始まって最後が「発端」で終わるとくるとついつい過剰な期待をしがちなんだけれども、構成そのものにはあっと驚く仕掛けがしてあるわけではない。
しかし、だからといって単にやってみたかったからやってみたというようなレベルの物でもなく、この結末を効果的に生かすためだったらこのようにするしかなかっただろうなあという代物なので、読み終えた後に冒頭の「結末」を思い出して思わずニヤリとしてしまうのだ。
死人が出るのにそれほど悲壮感というか読後感は悪くなく、かといって不真面目でもなく、どちらかといえばコンゲーム小説を読んでいるような感じに近い。
とくに後半、一難去ってまた一難の状況において、ライノクス社の経営陣がそれを解決するための場面は読んでいて爽快。なによりも最後に決め手が知力ではなく腕力に訴える点が素晴らしい。知力で勝負ではなく殴り合いで決着をつけるのだ。  

Posted by Takeman at 12:30Comments(2)TrackBack(0)創元推理文庫
2008年05月01日

SFはこれを読め!

SFはこれを読め! (ちくまプリマー新書 81)

  •  谷岡 一郎

  • 販売元/出版社 筑摩書房

  • 発売日 2008-04

Amazon/楽天ブックス



新書サイズなのでそれほど期待はしていなかったんだけども、読んでみたらやっぱりその通りの内容だった。
海外作品が大半を占めてしまっていて国内の作品が少なく、採りあげられた海外作品に関してもその選択に偏りがあったりするのは、本書で取り扱っているテーマ分類ががちょっと変わった視点のものだったりするので仕方ないけれども、もう少し中身が濃くってもよかったような気もする。
『SFはこれを読め!』と挑戦的なタイトルなので読む方もそれなりの気合いを入れて読みがちなんだけれども、それはさておき、本書で採り上げるのはサイエンス・フィクションとしてのSFだけで、スペース・ファンタジーやスペキュレイティブ・フィクションは扱わないと言っておきながら、その境界線が曖昧なままだったりするのはちょっとまずいんじゃないのかな。
ジョー・ホールドマンの『終わりなき平和』が『終わりなき戦争』の続編と言ってしまっているあたりは、まあテーマ上の続編だとホールドマン自身も言っているので厳密には間違ってはいないけど、普通は続編という扱いはしないだろうから、本当に読んでいるのかお前、とつっこみを入れたくもなった。しかし一番大笑いしたのは、サイバーパンクを「サイバーパンクと呼ばれるアクションもの」と言い切ってしまっていた部分だ。この文章をブルース・スターリングが目にしたら、血の涙を流しながら激怒するんじゃないのかな。
というわけで、人によってこうも見方が変わるものだと思わず感心してしまった。そういう意味では実にワンダーにあふれた一冊だったよ。  
タグ :谷岡一郎

Posted by Takeman at 12:30Comments(2)TrackBack(0)筑摩書房