2008年04月02日

白い果実

白い果実

  •  ジェフリー フォードJeffrey Ford山尾 悠子谷垣 暁美金原 瑞人

  • 販売元/出版社 国書刊行会

  • 発売日 2004-08

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本当ならば三作目が翻訳されたところで一気に読みたかったのだが、国書刊行会のことなので三作目がいつ出るのかわからないし、出たときには一作目が絶版になっている可能性もあるので、根負けして読み始めることにした。
三部作のうちの一作目なのでこの物語の後、どのような展開をしてくのかはわからないが、これ一作だけでも十分楽しかった。観相学が異様に発達した世界、想像していたよりはグロテスクさやビザールさは少なかったのだが、むしろこのくらいで丁度いいんじゃないかと思う程度のビザールさ。
改造されて、コインを入れなければ動かない赤ん坊とか、掘っているうちに自分自身が青い鉱石化してしまう鉱夫たちとか、体の一部を機械化させられて戦う闘士とか、観相学的に顔を手術されたのだが失敗し、見たものに死を与える顔になってしまったヒロインとか、一つ一つはそれほど驚くガジェットではないものの、ジェフリー・フォードの手に掛かるとグロテスクさとビザールさを伴ってなんともいえない奇妙な世界が立ち上ってくるのである。
  

Posted by Takeman at 12:30Comments(0)TrackBack(0)国書刊行会
2008年04月01日

道化の町

道化の町 (KAWADE MYSTERY)

  •  ジェイムズ・パウエル森 英俊白須 清美

  • 販売元/出版社 河出書房新社

  • 発売日 2008-03

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短編集が三冊も出たせいでジャック・リッチーがちょっと食傷気味になるという我が儘病が発生したわけなんだけど、まあ仕方がない。
で今回、ジェイムズ・パウエルの短編集が出た。
表題作の「道化の町」はこの間、『山口雅也の本格ミステリ・アンソロジー』で読んだばかりだったのでちょっと期待をしていたんだけれども、これが期待を受け止めてくれるだけの面白さだった。
ジャック・リッチーがあくまでミステリという大枠からはみ出さないでいるのに対してジェイムズ・パウエルは、はみ出るはみ出る。まあとにかく、そこまでやるかというくらいに物語にいろいろなものをくっつけるのだ。
ジャックと豆の木の後日譚である「魔法の国の盗人」などは後日譚である必要がないほどその世界を作り込んで、その上でさらにその物語自身にとんでもないエピローグを用意するのである。まったくどっちが後日譚なんだか。
「詩人とロバ」では十年という期間を与えてくれればロバに会話をさせてみせると王様に大見得を切ってしまった詩人の物語なんだけど、期日がきて王様に言い訳をし始めるのだが、これが物語になっておりしかも入れ弧構造となっているのでどんどんと内側に入っていく。それでいてその物語が何かの役に立つのかといえば対して役に立たない。作者自身が書いてみたかったから書きましたといった感じでもある。
そんな人を食ったような話があるかと思えば、「最近のニュース」は衝撃のラストめがけて一直線の直球だったりするし、どうしてそんな結末に向かうのだと作者に問いつめたくなるような「時間の鍵穴」なんて話もある。
というわけで無駄に凝りまくった話が実に素晴らしい。  

Posted by Takeman at 12:30Comments(0)TrackBack(0)河出書房新社
2008年03月31日

一日 夢の柵

一日 夢の柵

  •  黒井 千次

  • 販売元/出版社 講談社

  • 発売日 2006-01

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いつの間にか中年と呼ばれる歳になってしまった。
まあその前には、いつの間にか大人と呼ばれる歳になってしまっていたわけなんだけれども、あと何十年か経ってまだ生きていたとしたら、老人と呼ばれる歳になってしまうのだろう。
しかし、問題なのは自分自身にその自覚がないことだ。いつの間にか大人と呼ばれる歳になってしまっても大人という自覚はまあ全くないわけではないけれども、子供ではなくなってしまったという気持ちはあまりない。
それがなにか問題があるのかといえば、今のところ特別問題があるわけではないのでそれほど気にする必要もないのかも知れない、というか気にするつもりなど、毛頭ない のだが。
というわけで、この本を読んだとき、主人公が老人といっても差し支えない年代であることになかなか気がつかなかった。いや、気付いてはいたのだけれども物語の世界に入り込んでしまうとそんなことを忘れてしまう。
おそらくこの本の主人公たちも、自分と同じように、自覚などせずいつの間にか老人となってしまったのだろう。
ただ単純に、肉体だけが老化していっただけなのだ。
自分もあと何十年かしたら、この本の主人公たちと同じようなことをしているのだろうなあ、などと思ってしまった。
そして読み終えてそのことに気付いた時、なんだか未来へとタイムスリップし、そして未来の自分を体験して帰ってきたような感覚におそわれたのである。  

Posted by Takeman at 12:30Comments(0)TrackBack(0)講談社
2008年03月28日

刈りたての干草の香り

刈りたての干草の香り (論創海外ミステリ 74)

  •  ジョン・ブラックバーン霜島 義明

  • 販売元/出版社 論創社

  • 発売日 2008-02

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ブライアン・オールディスが終末物と言っていなかったら読まなかっただろう。
ということで、読み終えた今現在、ブライアン・オールディスには感謝している。
論創海外ミステリというレーベルから出たいじょうはそれなりにミステリよりというか、結末としてはSFの方面へは行かずに着地するだろうと思っていたらいやはや驚いた。
解説でも書かれているように、ジョン・ブラックバーンという人はジャンルという概念など考えていないかのごとく、好き放題にやってくれている。この感覚は、読者を驚かすためならどんな手段でも用いるマイケル・スレイドと同じなのだよなあ。どおりで読んでいてワクワクしたわけだ。
もっとも、スレイドほどむちゃくちゃではないので、そっちの方面を期待するとがっかりするだろうけど、スレイドには無い落ち着き具合というかそこはかとなく絶望感に打ちひしがれている登場人物たちの物語はなかなか味わいがあっていいなあ。
時代設定が1958年という設定なのでそのあたりを理解しておかないととまどう部分もあるけれども、これがデビュー作というのであれば他の作品には大いに期待できるというもので、遅ればせながらジョン・ブラックバーンのファンになってしまった。
  

Posted by Takeman at 12:30Comments(0)TrackBack(0)論創社
2008年03月27日

蒸気駆動の少年

蒸気駆動の少年 [奇想コレクション] (奇想コレクション)

  •  ジョン・スラデック柳下毅一郎

  • 販売元/出版社 河出書房新社

  • 発売日 2008-02-19

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こうして読み終えてみると、やっぱり自分はSF作家としてのスラデックよりはミステリ作家としてのスラデックの方が好きだと言うことがよく判った。
なんだかスラデックのふざけ具合がどうも自分の好みからちょっとだけずれているんだよなあ。
感触としては筒井康隆に近い感触なんだけれども、筒井康隆をもっとあっさりとさせた感じかな。おそらくその差の部分が好きか嫌いかの分かれ目になっているのだろうなあ。
しかし、なんだかんだ言っても全23編も収録されていると、一つ一つの短編は短いもののかなり読み応えがある。そもそも、わけのわからない話やら、ただ単純に言葉遊びに終始している話もあったりするので、そのあたり真面目に受け止めようとすると疲れるのだ。
スラデックというと不条理ギャグといったイメージが強かったんだけれども、今回はそういった話はわりと少な目で、スラデックにしてはわりとまともな話というか、こんな話も書いていたんだというような話が多いので、ちょっとは安心して読むことが出来たのがよかったよ。
  

Posted by Takeman at 12:30Comments(0)TrackBack(0)河出書房新社
2008年03月26日

燃えつきた水星人

箆棒な人々』では康芳夫の他に石原豪人、川内康範、糸井貫二についても書かれていた。糸井貫二はさすがに接点がないのだが、川内康範はレインボーマン、石原豪人は本の表紙や挿絵などで子供の頃から接点があったりする。
というわけで、『燃えつきた水星人』を読んでみた。
作者は、トーマス・エジソンの秘書もしていたレイ・カミングスである。
女子校のサマー・キャンプ場で生徒たちが誘拐されるという事件が起こり、記者である主人公が調査に乗り出すのだが、どうやら異星人による誘拐らしいことがわかる。そこへ謎のカプセルが地球へ飛来。そのカプセルの差出人は十年前に単独で月へと向かったまま行方不明になっていた青年で、このカプセルには青年による驚くべき警告文が入っていた。
なにしろ月へ向かおうとして失敗し水星まで行ってしまったという発端からはじまり、水星には水星人が住んでいて彼らは背中に羽を持ち空を飛ぶことが出来るのだが男尊女卑の世界で、結婚したら女性は羽を切り取られるという風習、それに対しての不満がとうとう爆発し女性たちの反政府活動の勃発とそれに巻き込まれる青年……という話が詰まっているのである。
全部で170ページほどの分量でありながらこの警告文の内容は70ページにも渡るのだ。章立てされているので、所々、「警告文はまだ続く」などという注釈はいる始末。
水星人による反政府運動が地球に関係あるのかといえばほとんど関係はなく、追放された水星人の悪人が地球の女性を誘拐しにきただけで、なおかつ水星は重力が小さいので地球人よりも力が弱いという、中途半端に正しい設定のおかげで肉弾戦になった時点であっさりと悪は滅ぶ。
おまけに裏表紙の紹介文は主人公と悪人の対決シーンの抜粋で、見事なまでのネタバレ。これを読めば悪人がどういう末路を辿ったのかがわかってしまうのだが、まあ勧善懲悪の物語なのでネタバレというほどでもないよなあ。
今更レイ・カミングスでもあるまいと思うのだが、実際そのとおりだ。表紙の絵を石原豪人が描いていなかったら読まなかっただろう。



中央にいる男が悪人なのだが、まるで江頭2:50だ。
表紙は石原豪人、そして解説は福島正実というもの凄い贅沢な一冊で、これが恐ろしいことに新刊として今でも入手可能なのだ。

ちなみに『水星征服計画』という題名の続編もある。続編はは多少はプロットが複雑になり、派手な戦闘シーンがあったりするのだが、そのせいでかえってまともなSFになりすぎてしまい、前作と比べると今一つ面白くない。
  

Posted by Takeman at 12:30Comments(0)TrackBack(0)Q-Tブックス
2008年03月25日

司政官 全短編

司政官全短編 (創元SF文庫 ま 1-1)

  •  眉村 卓

  • 販売元/出版社 東京創元社

  • 発売日 2008-01

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『日本SF全集・総解説』を読んだときにそのあまりにも高い未読率に思わず絶望しかけたのだが、こうしてめでたく一冊の本にまとまった『司政官 全短編』を読み終えて、当時読まなくって良かったと思ってしまった。
これはけっして負け惜しみなどではなく、本を読む時間だけは有り余るほどあった時代に読んでもこの本の面白さは分からなかっただろうと、当時の自分の知識や考え方を振り返ってみてそう思うのだ。もっとも、今だったら大丈夫なのかと問われると返答に困ってしまうんだけど。
まあそれはともかく、このシリーズは恐ろしいほど贅沢で密度の濃い作りをしている。
各話それぞれ異なる惑星を舞台とし、奇妙な文化や奇妙な生態系を持つ現住種族がいる。スタニスワフ・レムとまでは行かないけれども、突き詰めればそこまで到達可能なファーストコンタクト物でもあり、ジャック・ヴァンス……というよりもル=グウィンばりの文化人類学的なアプローチがあったり、司政官制度そのものにロボットの存在が組み込まれ、なおかつそれが司政官の補助ではなくそれ以上の役割を担っているためにアシモフのロボットシリーズ的な要素さえも持つ。なので、眉村卓のインサイダーSF論といった小難しい考えを頭に入れながら読まなくっても、土台となる部分で既に面白いのである。
その上で、司政官制度の矛盾と問題といった骨太なテーマがバックボーンとして浮かび上がってくるのだからたまったものじゃない。まったくもって凄すぎるよ眉村卓は。
というわけで、この歳になってから読むことができて本当に良かったと思った。  
タグ :眉村卓

Posted by Takeman at 12:30Comments(0)TrackBack(1)創元SF文庫
2008年03月24日

トライガン

トライガンマキシマム 14 (14) (ヤングキングコミックス)

  •  内藤 泰弘

  • 販売元/出版社 少年画報社

  • 発売日 2008-02-27

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主人公に対して、絶対に人は殺さないという制約を設けた話というのはそれほど珍しいわけではない。
『トライガン』の主人公も腕は立つのに絶対に人を殺さない主人公だ。
思い起こせば『トライガン』と出合ったのは、一巻のオビでたがみよしひさが絶賛してくれたおかげだった。あのたがみよしひさが絶賛するのだからそれなりのものだろうと思って読んだらあまりの凄さに驚いた記憶がある。
続きが出るのを楽しみにしていたのだが、三巻目がでたあとで掲載紙が休刊となってしまいそこで終わってしまった。
しかし幸運なことに同じ出版社の別の雑誌で続きを出すことになった。少年誌から青年誌へと舞台が移り、タイトルにも「マキシマム」という言葉がついたのだが、そのせいなのかどうなのかはわからないが、「無印トライガン」に比べてハードな展開になっていった。
それまで、少年誌という足かせがあったので押さえていたのか、それともいずれは同じようなハードな展開をさせる予定だったのか作者のみぞ知るというわけだが最終巻で主人公は決断を強いられることとなる。
絶対に人を殺さないと誓った主人公に対して作者は、主人公が人を殺さなければいけない状況を作り出すのである。
さて、作者がどのような結論をだしたのかは読めばわかるのだが、そこまでが『トライガン・マキシマム』の物語なのだ。
そしてその後が「無印トライガン」の結末へと続く。
いや本当はそうじゃないだろうけれども、三巻で中断してしまった「無印トライガン」の着地地点はここなのだ。「マキシマム」になって何処かへ消えてしまったかのように思えて仕方の無かった「無印トライガン」の物語がそこにはあった。
ここまで無事たどりついて、本当によかった。  
タグ :内藤泰弘

Posted by Takeman at 12:30Comments(0)TrackBack(0)漫画
2008年03月21日

300:1

300:1 (1960年)

  •  J・T・マッキントッシュ一ノ瀬 直二

  • 販売元/出版社 早川書房

  • 発売日 1960

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私の場合は<ハヤカワSFシリーズ>に間に合わなかった年代なので、<ハヤカワSFシリーズ>のラインナップが文庫化されるのを待ち望んでいた側なのだが、100冊あまりの作品が未だに文庫化されないままでいる。
1995年に50周年記念事業として、
『ドノヴァンの脳髄』カート・シオドマク
『超生命ヴァイトン』エリック・フランク・ラッセル
『ラルフ124C41+』ヒューゴー・ガーンズバッグ
『影が行く』ジョン・W・キャンベル・ジュニア
の四冊が何の前触れもなく復刊したことがあったけれども、あくまで<ハヤカワSFシリーズ>としてである。
そんなわけだからこの本も長いこと読むことが出来ないでいたのだ。
長編の翻訳はこれ一作だけ、短編も申し訳程度に訳されただけなので、作者の名前もそれほど知れ渡っているいるわけではない。しかしこの本は、知らない人は知らないだろうけど、知っている人にとっては古典的名著といっても過言ではないだろう……というのはさすがに言い過ぎか。
人類滅亡の危機が訪れ、助かるのは約300人に一人という確率。それがこの本の題名の由来なのだが、破滅ものが好きな人間にとっては実にワクワクする設定ではないだろうか。
そしてこの本は三部構成になっていて、第一部が「300:1」、第二部が「1000:1」、最後が「∞:1」という題名になっている。先へ進めば進ほど生存確率が下がってくるのである。否が応でも高まる期待感だ。
しかし、読み進めていくと反比例する形でワクワク感がしぼんでいく。というのも途中から、ジョン・ブラナーの『原始惑星への脱出』と同じような展開になっていくからである。最初の「300:1」では主人公は、約3000人の町のなかから10人の人間を選び出すという生殺与奪権を与えられた立場、つまり生存確率からはずれた状態であり、それ故の苦悩という部分が描かれていたのに対して、それ以降は主人公も選ぶ側の立場から落とされ、自分自身も生存確率に身を任せる立場になってしまう。
神のごとき立場だった主人公が徐々にその力を失い、ごく普通の人間になってしまうという展開そのものが作者の狙い目だったのかも知れないが、やはり物語として失速したと見た方がいいのだろう。
読み終えてみると文庫化されなかった理由もわからないでもない。というか今となっては賞味期限の切れた古典扱いというのが妥当なところかな。  


Posted by Takeman at 12:30Comments(0)TrackBack(0)早川書房
2008年03月20日

名誉除隊―星条旗が色褪せて見えた日

名誉除隊

  •  加藤 喬

  • 販売元/出版社 並木書房

  • 発売日 2005-12-15

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福島正実という名前はペンネームなのだが、福島正実はこの名前以外にも複数のペンネームを使っていたことがあってその一つに加藤喬という名前がある。
この本の作者と同じ名前なのだがそれもそのはず、この本の作者は福島正実の長男なのである。
日本SFに良くも悪くも多大な影響を与えた福島正実であるからして私生活においても彼の家族に何らかの影響を与えたと考えるのはたやすい。
もっとも、実際のところ本当に影響を受けていたのかどうだったのかなどというのは知る由もないのだが、アメリカ人にあこがれてアメリカ人になろうとしてアメリカに行き、そして愛国心の表しの手段として軍人にまでなってしまうバイタリティは父親ゆずりなのかもしれないなと思ってしまう。
しかし、第二次世界大戦における442連隊のように、異国人がその国に対する愛国心を示そうとするのであれば、軍隊に入るというのはもっとも簡単でありながらもっとも難しい問題を抱える選択肢だ。
軍人である以上、アメリカのために戦わなければならない。そこでもしその戦う相手が日本だったとしたら、はたしてアメリカの軍人として戦うことが出来るのだろうか。
選択肢は二つ。軍人であることを止めるか、それともアメリカという国の行動を信じて戦うかだ。
だけれどこれは軍隊における異国人という状況だから起こり得る問題だけではない。つまるところ他人に死んでもらうか自分が死ぬかという問題は普段の生活でも起こり得る問題だ。まあ普通はめったに起こらないけれど。
他人が死ぬか自分が死ぬかの場合、どちらを選択するかはそれほど困難ではなくって、よほど特殊な状況でない限り他人に死んでいただくほうを選択する。
では、他人であるAさんと、同じく他人であるBさんのどちらかが死ななければならないとしよう、そしてどちらかを選ばなければならないとしたら、どうすればいいのだろうか。
決断の下せない私は、そのような事態が起こらないことを祈るしかないのである。しかしそんなのんきな結論を出してしまえるのも、平穏な日常生活を送ることが出来る今現在だからであって、ああ自分は温室の中で生きているのだと思ってしまう。  

Posted by Takeman at 12:30Comments(0)TrackBack(0)並木書房
2008年03月19日

来月の気になる本 2008/4

『BLOODLINK雪花(下)』山下 卓 ファミ通文庫
『あばれはっちゃく』山中 恒 角川文庫
『ミステリクロノ(3)』久住四季 電撃文庫
『海を失った男』シオドア・スタージョン 河出文庫
『水没ピアノ〈鏡創士がひきもどす犯罪〉』佐藤友哉 講談社文庫
『美月の残香(仮)』上田早夕里 光文社文庫
『ゴメスの名はゴメス』結城昌治 光文社文庫
『東京バンドワゴン』小路幸也 集英社文庫
『人類は衰退しました(3)』田中ロミオ ガガガ文庫
『河岸忘日抄』堀江敏幸 新潮文庫
『子供たち怒る怒る怒る』佐藤友哉 新潮文庫
『クラリネット症候群』乾 くるみ 徳間文庫
『SCARDOWN』エリザベス・ベア ハヤカワ文庫SF
『拷問者の影』ジーン・ウルフ ハヤカワ文庫SF
『SFはこれを読め!』谷岡一郎 ちくまプリマー新書
『久生十蘭 『魔都』『十字街』 解読』海野弘 右文書院
『ゾロ』イサベル・アジェンデ 扶桑社ミステリ
『日本SF全集1 1957-1971』 日下三蔵編 出版芸術社


とりあえず、来月は気になる本が少ない。といってもあいかわらず積読本がたっぷりあるし、旧刊で未読の物も読むだろうから合計すれば来月読む本の数はあまり変わらないんだよなあ。
『あばれはっちゃく』って懐かしいなあ。山中恒が原作者だったってのは知りませんでした。
スタージョンの『海を失った男』が早くも文庫化。晶文社ってなかなか文庫化をさせないところだったって聞いたことがあったんだけど、今はもうそんなことはこだわらなくなってしまったのかな。
今月は『暗い落日』が復刊して来月は『ゴメスの名はゴメス』と結城昌治も再評価されつつあるのかな。まあいずれにせよ定期的に復刊してくれるのはありがたいことです。
乾くるみの『クラリネット症候群』というのが気になるんだけど『マリオネット症候群』と同じ系列の話なのかな。
早川からはいよいよジーン・ウルフの<新しい太陽の書>シリーズが復刊。もっとも四作目までは既読なので最後の五巻目だけを待っているだけなんだけど。
『SFはこれを読め!』の谷岡一郎って『「社会調査」のウソ』の人なのかな。そうだったらちょっと楽しみです。
扶桑社ミステリは、今月出るのか不明だけど相変わらず不意打ちが得意というか多い。イサベル・アジェンデがまた出るなんて驚いたよ。
  

Posted by Takeman at 12:30Comments(2)TrackBack(0)ホンの話
2008年03月18日

オブ・ザ・ベースボール

オブ・ザ・ベースボール

  •  円城 塔

  • 販売元/出版社 文藝春秋

  • 発売日 2008-02

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前二作と比べると恐ろしく読みやすいので驚いた。あまりに読みやすいので自分の頭の中に円城塔解析ルーチンができあがって、もうどんな話が来ても大丈夫な状態になったのだろうと勘違いしそうになったくらいだった。
そもそも二作読んだ程度で頭が急に良くなるわけでもなく、むしろ自分の年齢のことを考えると理解力はどんどんと落ちていると考えた方が正しい認識力というものである。
しかしそれはともかく、「オブ・ザ・ベースボール」は面白い。中身はまったく無いに等しいのだけれども、ほぼ一年に一回のペースで人が落ちてくる町での話は、それがどんな着地をするのか、ワクワクするわけではないのだけれども興味深く読むことができた。
ああ、こんな円城塔ならばもっと読んでもいいなあと思ったのだが、それは次の「つぎの著者につづく」を読むまでのことだった。
こちらは一気に自分が歳を取って理解力と読解力が衰えてしまったんじゃないかと真剣に考えてしまったほど難解。表層を追いかけるだけで手一杯でもう勘弁してくださいといいたくなるほどだったのだが、果たして円城塔の紡ぎ出す物語はどこへと続くのだろうか。  
タグ :円城塔

Posted by Takeman at 12:30Comments(0)TrackBack(0)文藝春秋
2008年03月17日

Boy's Surface

Boy’s Surface (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)

  •  円城 塔

  • 販売元/出版社 早川書房

  • 発売日 2008-01

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こういう話は二年に一冊くらいのペースで読むことができたらいいなあと前作の時に書いたんだけれども、それから半年後に出てしまいました。それも二冊続けて。
そんなにハイペースで大丈夫なのかと作者の方を心配したくなるんだけれども、それと同時に、そんなハイペースで刊行されて読みこなすことができるのだろうか私はと自分自身の事も心配になってくる。
それならいっそ文庫化されるまで待てばいいのではないかと思うのだけれども、ピンクの表紙は卑怯だ。ついつい手に取ってレジへと向かってしまったではないか。
で、買ったはいいけれどもなかなか読もうとする決心がつかない。
しかし、どうあがいてもこの本を読みこなすことができないのであればいつ読んでも構わないわけだし、それだったならば今読んでしまって心残りは無くしてしまおうと読み始めてみたわけだけれども、やっぱり全体像が見えない話なんだよなあ。
細部は確かに面白いのだ。日本語の中に遺跡を発見だとか、21世紀が回頭するとか、どこからそんな発想が出てくるのだとただひたすら感心するやら呆れかえるやらするのだけれども、なんだかひたすら核心の部分をはぐらかされているかのようだ。
というわけで、全体を見ようとするとするりとすり抜けられてしまって結局のところ、入力はできるのだけれども処理をすることができなくって、いつまでたっても頭の中でぐるぐる回り放しな話なのである。  
タグ :円城塔

Posted by Takeman at 12:30Comments(0)TrackBack(0)早川書房
2008年03月14日

ジャンパー グリフィンの物語

ジャンパー グリフィンの物語 (ハヤカワ文庫 SF ク 8-7) (ハヤカワ文庫 SF ク 8-7)

  •  スティーヴン・グールド公手 成幸

  • 販売元/出版社 早川書房

  • 発売日 2008-03-07

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小説版『ジャンパー』の前日譚だと思っていたら映画版『ジャンパー』の前日譚だったので読もうかどうしようか迷ったんだけど結局読むことにした。
小説版『ジャンパー』を読んだのは遙か昔のことなので、どんな話だったのかすっかり忘れてしまっている上に、映画はまだ未見なので果たして大丈夫なのかとも思ったんだけど、前日譚なのでそのあたりは特に問題は無い。
はっきりいってしまえばSFとしての面白さってのは全然なくって、こりゃSFジュブナイルだよなあ。
とはいえども最初からSFとしての面白さってのは期待していなかったのでそのあたりは全然平気だったわけだが、お話としては予想以上に面白かったので驚いた。
強いていえば筒井康隆の『七瀬ふたたび』といったところで、ちょっと話がうまく行きすぎるきらいはあるけれども、まあそのあたりは許容範囲内で、主人公の成長物語としては意外に掘り出し物だったかな。
ただ一つ残念なのは、いよいよこれからというところで話が終わってしまうところで、映画の前日譚として書かれたものだから続きは映画でというわけなんだろうけど、うーむ、この先、主人公が幸せになることが出来たのかどうなのかがちょっと気になる。  

2008年03月13日

脳Rギュル(2)ショートツ心臓とヤネ裏のタマゴ

脳Rギュルショートツ心臓とヤネ (ガガガ文庫 さ) (ガガガ文庫 さ 1-3)

  •  佐藤 大

  • 販売元/出版社 小学館

  • 発売日 2008-02-20

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どうも跳び立つ前に勢いがつかなくって失速してしまった気がするガガガ文庫の<跳訳>シリーズなんだけど、とりあえずは言い出しっぺの人が参加している作品だけは後が続くようだ。
ますますもって夢野久作から離れてしまい、何だかむりやり夢野久作の作品を引用して誤魔化しているような気もするんだけど気のせいかな。まあ「起承転結」でいえば「承」の部分にあたるだろう本編、これ単体だけで判断してしまうのは間違いで、やはり完結してから判断するべきなんだよなあ。
そもそも主人公の二人は今回は最初から最後まで別行動で、片一方は事件に巻き込まれて死に目にあっているのにもう片方は休暇中でのんびりと休暇を楽しんでいる始末。瓶詰めの手紙を拾ったり、謎の老人と出会って映画談義をしたり、愛の告白をされたりと、死に目にあっている片方からしてみればなんとも脳天気な描写が続くのだ。
しかしそんなあってもなくても構わないような出来事が、最後まで読み通せば次巻に対する猛烈な期待感とドキドキ感にすり替わっているという巧妙さが実にあざとい。
それにしても、ラインナップに上がっていた小栗虫太郎を凄く楽しみにしていたんだけど、虫太郎は難しいよなあ。国枝史郎はとりあえず、石川賢が中断してしたその後の部分まで描ききった石川賢版『神州纐纈城』があるので個人的には満足しているんだけど。  

Posted by Takeman at 12:30Comments(0)TrackBack(0)ガガガ文庫