『オヤジ・エイジ・ロックンロール』熊谷達也

Takeman

2013年01月29日 15:00


  • 著: 熊谷 達也

  • 販売元/出版社: 実業之日本社

  • 発売日: 2012/12/5

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株式会社パピレスが行ったBL小説(ボーイズラブ小説)に関するアンケートを行った時、その中の質問の一つに、あなたがBLに目覚めたきっかけはという質問があったのだが圧倒的に多かった回答が、「知らずに読んだ」という回答だった。
BL小説はうっかり読んでしまったらはまってしまったというくらい潜在的に面白いジャンルなのか、それとも潜在的にその素養のある人が多いということなのか、僕自身もうっかり読んでしまったらはまってしまう可能性も秘めているのだが、しかし、知らずに読んでしまうという可能性はやはり少なそうなので、本格ミステリ風味のBLとか怪奇幻想小説風味のBLとかが描かれない限りは読むこともないだろう。
しかし、うっかり読んでしまってはまってしまうということはたまにあることで、はまるというところまでは行かないものの、SFに関する記述があるということだけで読んだ熊谷達也の『モラトリアムの季節』がなかなか面白かったので、続いてこの本『オヤジ・エイジ・ロックンロール』も読んでしまった。
バンドをやっていたわけでもなく、楽器を弾いたこともなく、年代的にも少しずれているのだが、しかし、中年おやじが青春時代を振り返ってもう一度何かに夢中になるという物語は読んでいて楽しい。
物語そのものはご都合主義的に主人公の行く手を阻むようなトラブルもほとんど何もなく、順調に進んでいく。普通ならばこの順調に進んでいく様が鼻につくのだが、この場合は不思議と気にならない。というのは根っからの善人は登場しないけれども悪人も嫌な人物も登場せず、どこにでもいそうなおやじが登場するだけだからかもしれない。もっともこのおやじは先にも書いたように順調に物事が進みすぎる幸運な人物なので、そこが少し不満でもあるのだが、主人公を取り巻く人物達が良い人ばかりなのでそれほど気にならない。主人公だけが幸運の持ち主というわけではなく、主人公を取り巻く人達が良い人だから、自然と物語は順調に進んでいくのだ。
つぎは『邂逅の森』を読まねば。

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