『富士学校まめたん研究分室』芝村裕吏
- 富士学校まめたん研究分室
- 著: 芝村 裕吏
- 販売元/出版社: 早川書房
- 発売日: 2013/10/25
Amazon
そんなに厚い本でもなく、小難しい内容でもなさそうなんだけれども、買ってから今まで積読にしっぱなしだった。野崎まどの『ファンタジスタドール』も同様に積読なので、結局、人が本を積読にしてしまうのはその本の厚さでも内容の難しさでもないことにあらためて気がついた。
さて、この本は30歳理系女子の視点による物語で、なおかつ彼女は極度に人とのコミュニケーションが苦手でようするにめんどくさい人物。その人物の視点で物語りが描かれるのでいかにめんどくさい思考をしているのかがよく分かる仕組みになっているが、だからといって読むのがめんどくさいわけではない。というか読みやすい……のは僕自身もめんどくさい人間だからなのかもしれない。
そんな彼女がふとしたことから、小型ロボット戦車の開発に携わることになってしまう。
生産コストや運用用途、耐用年数といったさまざまな要素から全体の仕様を決めていくさまはこういった工学系の開発話が好きな人にとってはたまらなく面白く、そしてワクワクさせる。小型にするという時点で全部有りの兵器にするのは不可能で、何を取り、何を捨てるのか、そしていわゆる妥協点をどこに見出すのかというのは読んでいて身につつまされるというかよく分かるよと言いたくなる。
その一方で、朝鮮半島における緊張が高まっているという背景があり、その結果北朝鮮と韓国、そして中国とアメリカがどのような行動に出るのかというのはなかなかおもしろいシミュレーションであり、ロボット戦車の開発物語とはまた別のレベルで興味深い話になっている。
で、なおかつボーイ・ミーツ・ガールというか30歳理系女子の恋愛話も絡んできて、続編は期待できるような話ではないので続編はむりだけど、こういう話をまた読んでみたいなと思う。
関連記事