髑髏島の惨劇

今回はアレイスター・クロウリーと切り裂きジャックと悪魔召還、そして後半はマイケル・スレイド版「そして誰もいなくなった」。
相変わらず何でもありのこの世界です。もちろんいつもどおりに警察捜査とサイコキラーが組み合わさります。
「カットスロート事件」から五年経過したという設定で、前作で酷い目に遭わされたジンク・チャンドラーはリハビリ休暇中として登場。薬を飲み続けていなければ後遺症で癲癇の発作が起こるというものすごい設定です。そして今回もディクラーク警視正が知り合いのミステリ作家に頼まれた髑髏島で開かれる推理ゲームに参加してしまったために悲惨な目に遭います。
もちろん悲惨な目に遭うのはチャンドラーばかりではなくディクラーク警視正も相変わらず自宅で殺人鬼に襲われます。それを助けるのは愛犬ナポレオンで、戦闘訓練を受けた犬とされていますが、殺人訓練を受けたんじゃないかと思うくらい強い。しかし今回は相手が悪く瀕死の重傷を負ってしまいます。レギュラーであれば犬でさえ容赦なく悲惨な目に遭わせますよこの作者。
この時の「これ以上奪わないでくれ」というディクラークの悲痛な叫びは胸を打ちますが、それはシリーズを通してディクラークという人の人生が描かれていたからであって、今回初めて登場する人物の死は非常に軽い。後半で舞台となる孤島では人物紹介がほとんど行われないまま殺戮が始まり、命の重みがこれだけ違っていてもいいのかと思うほど彼らはあっさり軽く殺されます。
その上、ここは小栗虫太郎の黒死館かと思わんばかりに殺戮手段が無駄に凝りまくっています。ああ、トイレで殺されるのだけは勘弁してもらいたい。