心を捨てる一日

Takeman

2015年06月02日 20:00

心の病を持つ人と向き合うときに一番苦労するのは、その人の負の感情をどうやって受け止めるかということだ。
一緒に住んでいる家族となると、否が応でもそれに向かわなければならない。
大変なのはやはり平日の朝だ。
これから仕事をしに出かけないといけないという時に、負の感情が破裂するとその対応で精神的に参ってしまう。

今日もそうだった。
トイレから出てくるといきなり妻は怒っていた。
怒っている時は誰でもそうだけれども、理論整然と怒ってはくれないので原因が何なのかわからない。
僕と結婚したのは人生最大の失敗だとか、あなたのせいでこうなった、とか、ありとあらゆる怒りを僕にぶつけてくる。
ただ、僕はそれを受け止めるしかない。
家を出なければいけない時間が刻々と迫ってくるのであせるのだが、話を聞いているうちにだんだんと、妻が何故怒っているのか理由がわかってくる。

隣の家の幸せそうな会話が引き金となったようだ。
自分には決して手に入れることのできない幸せ、それが大金持ちとか美人の顔をかそういったものではなく、ただ、結婚して子供が生まれてという、ごく普通の生活すらできなくなってしまったことに対しての悔しさに耐え切れなくなったようだ。
こんな時に僕はどう答えてあげればいいのかわからない。
妻の言う言葉にうなずくだけだ。

ただ、次のときは、ごめんねと言ってあげよう。

家を出なければいけない時間がきてしまった。
こんな日は、一日生きていくだけの気力さえ失ってしまう。
かといって死んでもいいかなという気持ちになるわけではない。
これから仕事をするために、心を切り離して、機械のようになろうとするだけだ。
それでも、ときおり、そんな状態の妻をひとり残して行かざるをえないことに悲しくなり涙がこぼれ落ちる。

出かける間際に玄関で妻が、私は不満をあなたにぶつけるだけだけど、あなたはそれを受け止めるだけなのよね、と言ってくれたことだけが唯一の救いだ。


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