猫の尻尾も借りてきて

Takeman

2007年09月20日 12:30



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この本は作者の久米康之さんからいただきました。

この本が出版された1983年の6月、当時の自分は一体何の本を読んでいたのだろうと思った。
調べてみると、サンリオからプリーストの『逆転世界』が出た月であった。以前から読みたかったので狂喜乱舞して買ったのは覚えているが、読まずに積読状態になったままだったことも覚えている。結局、東京創元社で復刊したときになって始めて読んだのだ。
その他にトマス・ブロックの『亜宇宙漂流』も読んだ記憶がある。前作が面白かったので期待して読んだのだが、前作ほど面白くはなかった。
この他に何を読んでいたのかこれ以上は思い出せないのだが、この本を読まなかったことだけは覚えている。後になってこの本の存在を知ったとき、あの時に買うだけ買っておけば良かったのにと後悔したのだけれども、そんな後悔など、この本だけでなく他の本でも無数にしているので、そう考えると後悔ばかりの人生を送っているようで悲しくなるのだが、それはさておき、複雑な時間遷移をここまでよく旨くまとめたなあというのが正直な感想でこの本が絶版のままというのはもったいない。
今から24年も昔の作品なので古びてしまっている部分もあるけれど、古びていても面白いところが凄いのだ。音声入力の発展型インターフェイスの部分など、現在の状況と照らし合わせると確かにずれてしまっているのだが、それは単に技術の方向がそちらの方に向かわなかったというだけであって、たまたま実現しなかっただけにすぎないのだ。タイムパラドックスの部分だけが注目されるこの作品なんだけれども、小ネタの部分で実はもの凄い工学的センスが炸裂しているのである。
で、ここまで複雑な時間遷移となるとついつい矛盾が存在しないのだろうかと考察してみたくなるのだ。
広瀬正は、ハインラインの「時の門」を読んで「『時の門』を開く」を書いたのだが、まあさすがにあんな芸当は出来ないのでせめて「猫の尻尾に触れてみる」程度にはがんばってみよう。ということでネタバレ全開の考察は後日。

ネタバレ全開で考察してみた猫の尻尾に触れてみるはこちら。
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