『本棚探偵の生還』喜国雅彦
日本でも電子書籍が徐々に普及しつつある。本の収納スペースの問題に悩まされつつある自分にとっては、早いところ電子書籍が主流になってくれないかなと思う面もあるのだけれど、なかなか世の中は思うとおりに進んではいない。もっとも、収納スペースの問題があるので書籍を買うという行為に歯止めがかかっているという点は見過ごすことのできない点で、電子書籍に切り替えてしまったら今以上に本を買ってしまい、未読の山になってしまうだろう。
日本中で電子書籍が普及して欲しいと思っている人がどのくらいいるのかわからないけれども、本が好きでありながらも、明日から全ての本が電子書籍になったとしてもお構いなしの人もいる。
この本の作者とこの本に登場する人たちは、多分、電子書籍などお構いなしの人たちだろうと思う。
しかし、それにしてもこの本はなんと贅沢な本なのだろう。函入りでしかも二冊組み。折り畳めば豆本になる月報まで付いているのだ。いずれこの本も前巻、前々巻と同様に文庫化されるだろうけれども、文庫となったこの本は抜け殻のようなものだ。単行本としてこの本を買ってこそ、本を所有する楽しみというものを味わうことができる。
持っているだけで満足できるのだが、中身の方も満足できる。古本に取り憑かれた人たちの悲喜こもごも、うらやましいと思う反面、ここまでにはなりたくないなと思わせるバランスが上手い。
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