映画篇

Takeman

2007年08月27日 12:30



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二年ぶりの新作である。
タイトルもあの名作『対話篇』を彷彿させる『映画篇』とくると否が応でも高まる期待感。で、読み終えてみれば期待通りの面白さ。
登場人物も内容も別々の短編集なのだが、『ローマの休日』と自己満足のとあるフランス映画がそれぞれの話を一つにまとめる縦糸となって怒濤のごとき最終話になだれ込む。やってくれるぜ金城一紀と言いたくもなる。
とにかく物語の持つ力に絶大な信頼をおいて、そしてその力を存分にふるおうとしているのである。第一話の「太陽がいっぱい」では主人公は最後になって物語の力で友達を救おうとする。彼らは実際にあのようなハッピーエンドを迎えたのかも知れないけれども、あくまで物語の力だけで現実を吹き飛ばそうとする力強さ。
第二話はブルース・リーである。いやもうそれだけで社会の諸悪に立ち向かおうとする元気が出るのだ。重いテーマを扱いながらも暗くならない描き方も素敵だ。徹底的に明るく楽しく元気良くである。そして最終話は泣ける。
どうしてここまで楽しく読めたのだろうかと考えるに、おそらく映画という物に対する愛情が自分とほとんど一致しているからなのだろう。明かりが徐々に暗くなり、いよいよこれからスクリーンに映画が映し出されるという瞬間に感じるワクワク感や、二本立ての映画を立て続けに二周して観たりしたこと、『太陽がいっぱい』は嫌いな映画なんだけれども、読んでいて、うんそうだよなあと思うことはいっぱいなのだ。

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