アルファ・ラルファ大通りの脇道

期待通り、いや期待以上の面白さでした。
そもそも贋電気ブランが登場した時点でもうノックアウトですよ。須藤真澄の漫画で初めてその存在を知り、一度飲んでみたいものだと思い続けてながらもおいてある店が少なく、京都にそれが飲める店があると聞いて京都まで出かけながらも、店の場所がわからず、涙ながらに断念したりしたことも。そしてひょっとしたら一生飲むことが出来ないんじゃないだろうかと半ば諦めていた頃、富士市で偶然入った店のメニューに「電気ブラン」という文字を見つけたときには、自分の眼を疑いました。ここに書かれている文字は「電気ブラン」じゃなくって「電気ブラシ」じゃないだろうか、なんでメニューにブラシが載っているかは謎だけど。もしくは本当にオレの求めていた「電気ブラン」がここで飲めるのだけれども、精算時に目の前のマスターがとても怖いお兄さん変貌してとてつもない額を請求されるんじゃないだろうかなどと、ええそれはもうその瞬間だけはオレの頭脳はフル回転して頭の中で妄想を繰り広げたものです。しかし、十数年の想いと共に飲み干した電気ブランは、そりゃうまかったですよ。そんな「電気ブラン」を求めての苦難の日々も今となっては昔のこと。今じゃネット通販で簡単に飲むことが出来ます。ああ、なんと味気ない世の中になったものだろうか。

そして今度は贋電気ブラン。ああ、飲んでみてぇ。

三階建ての路面電車や古本の神様。実際にそんな物が存在してもおかしくないような摩訶不思議な京都を舞台にご都合主義炸裂の恋愛小説。ああこれはマジックリアリズムだよねえ。
中でも圧巻は第三話の学園祭で、パンツ総番長が素敵すぎますよ。米澤穂信の「クドリャフカの順番」もそうだったけれども学園祭の話というのはやはり楽しくって面白いなあ。まあそればかりじゃないんだけども。
パンツ総番長は素敵だけれども、その他、謎の李白老人や、樋口さんも愉快で素敵な人物。特に樋口さんの樋口式飛行術には吹き出してしまいました。これに匹敵するのは「銀河ヒッチハイク・ガイド」のあの飛行方法くらいかも。
もちろんそれらが行き当たりばったりに登場するのではなくって、最後にはすべてがうまくまとまるところが素晴らしい点で、とにかく楽しいお話でした。