2008年01月09日12:30
SF者であるならば曽根圭介の『鼻』のほうを読むべきなのだろうけど冒険小説に飢えていたのか同じタイミングで文庫化された建倉圭介の『デッドライン』のほうを読む。というか曽根圭介と建倉圭介を同一人物と思っていました私は。
しかし作中で、クリーヴ・カートミルの「Deadline」に関して言及があったりして、こちらを選んだのはSF者としての正しい嗅覚が働いたのではないだろうかと思わず勘違いしそうになってしまった。
『2007年版このミス』で10位だっただけのことはあるのだが、10位でしかなかっただけのこともある。
世界初のコンピュータ「エニアック」の開発に関わったことから原爆が完成間近なことを知り、日本へと逃避行をするまでは面白いのだが、そこから失速してしまう。
つまらなくなるわけではなく、展開が冒険小説の教科書的になってしまうのだ。窮地に陥ったかと思うと都合良く救いの手がさしのべられ、そして安心したかと思うと窮地に陥る。
そして主人公たちの逃避行が実は一ヶ月近い期間だった事を考えると、分量的に物足りなく書き割り的になってしまっているのが少し残念。主人公たちのロマンスも非常にあっさりなことを思うと、文庫にして800ページ以上ある本だが、さらに200ページほど増やしても良かった気もする。
その後の展開もちょっと都合良く進みすぎるのではあるが、しかし、史実を変えることなく主人公たちの行動を歴史の隙間に埋め込んだ手際は素晴らしく、エピローグは感動的。それはまるで良くできたタイムパラドックス小説を読んでいるかのようだ。もちろんこの本はSFではない。しかし主人公の行動が歴史にどのような影響を与えたのかそして与えなかったのかという事に対する作者の解答は良質なタイムパラドックス小説が与えてくれる物と等しい。
そしてこの物語の幕を閉じる言葉として、素晴らしい一文がラストに待ちかまえている。
デッドライン≫
カテゴリー │角川文庫
- 著 建倉 圭介/
- 販売元/出版社 角川書店
- 発売日 2007-11
- 著 建倉 圭介/
- 販売元/出版社 角川書店
- 発売日 2007-11
SF者であるならば曽根圭介の『鼻』のほうを読むべきなのだろうけど冒険小説に飢えていたのか同じタイミングで文庫化された建倉圭介の『デッドライン』のほうを読む。というか曽根圭介と建倉圭介を同一人物と思っていました私は。
しかし作中で、クリーヴ・カートミルの「Deadline」に関して言及があったりして、こちらを選んだのはSF者としての正しい嗅覚が働いたのではないだろうかと思わず勘違いしそうになってしまった。
『2007年版このミス』で10位だっただけのことはあるのだが、10位でしかなかっただけのこともある。
世界初のコンピュータ「エニアック」の開発に関わったことから原爆が完成間近なことを知り、日本へと逃避行をするまでは面白いのだが、そこから失速してしまう。
つまらなくなるわけではなく、展開が冒険小説の教科書的になってしまうのだ。窮地に陥ったかと思うと都合良く救いの手がさしのべられ、そして安心したかと思うと窮地に陥る。
そして主人公たちの逃避行が実は一ヶ月近い期間だった事を考えると、分量的に物足りなく書き割り的になってしまっているのが少し残念。主人公たちのロマンスも非常にあっさりなことを思うと、文庫にして800ページ以上ある本だが、さらに200ページほど増やしても良かった気もする。
その後の展開もちょっと都合良く進みすぎるのではあるが、しかし、史実を変えることなく主人公たちの行動を歴史の隙間に埋め込んだ手際は素晴らしく、エピローグは感動的。それはまるで良くできたタイムパラドックス小説を読んでいるかのようだ。もちろんこの本はSFではない。しかし主人公の行動が歴史にどのような影響を与えたのかそして与えなかったのかという事に対する作者の解答は良質なタイムパラドックス小説が与えてくれる物と等しい。
そしてこの物語の幕を閉じる言葉として、素晴らしい一文がラストに待ちかまえている。
タグ :建倉圭介
いろいろな事情と思うところがあってもうひとつブログを作りました。
新しいブログで書いていることは、他愛もない書きなぐりの文章になってしまっていますが、興味のある方は新しいブログの方も見てやってください。
もうひとつのブログ --> abandonné cœur.