経過報告14

カテゴリー │闘病記

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仕事に出かけるふりをして、病院へ。
私の精神状態を見てもらうためだ。
食欲不振と吐き気を説明、熱を測ってもらうと体温37.3度。熱っぽい感じはしていたが、かなりまずい状況だ。
妻の病気が原因と説明したところ、妻の状態を聞いてくれたのでくわしく説明する。
そして、統合失調症だから入院させたほうがいいと言い切られる。
症状は統合失調症の典型的な症例で、薬を飲みたがらないのであれば入院させ、早い段階で多目の薬で叩いて直すほうがいいとのこと。それが社会のためであり、病気は治療させなければいけないという言動に違和感を感じはするものの、最後の手段と思っていた入院を真剣に考慮しなければいけないようでもある。

会社は休むことにする。

父へ電話。
一時的にも妻の不安を取り除くため、私の実家に戻ることも検討しているということを父に伝える。久しぶりの実家である。
状況説明後、いきなり父は、こうなった原因はおまえ自身にもあるわけで、最悪のことを想定して望まなければいけないなどという反吐のでそうな正論を吐く。
なんだかんだいって、先のことに対して尾を引きずっているのだと悟る。むろん私の言い分が、虫のよすぎることだともわかっているし、伝え方が悪かったのか、完全に戻ってくると勘違いしているようだ。私のほうはあくまで、昼間だけ、もしくは夜間だけ一時的に妻をいさせることをお願いするかもしれないということを伝えたかっただけなのに。
母は元気を少しは取り戻していたようだが、戻ってくることは賛成だが、まだ若いのだからあまり悩みすぎずに・・・などと言外に離婚を匂わせる言動をしてきたのでこれは駄目だと悟る。
親を前に話をしていると、そんなつもりはなかったのに甘えの気持ちが出てきてしまい、私を肯定してくれるやさしい言葉を期待してしまう自分がいる。
急のことなであり、なおかつ二人に病気に対する理解もないことを思い出し、怒鳴りたい気持ちを抑える。

打つ手のひとつが消え、悲しくなる。

私の聞きたいことは誰も答えてくれない。入院への覚悟が決められず、途方にくれる。入院させたほうがいいのは理解している。しかし私の心はそう考えていない。
妻は私に裏切られたと思うだろうと考えると、絶望的な気分になる。私が望んでいることは、妻となかよく一緒に年をとりたかっただけなのだ。
疲れがどっと出て、時折思い出したかのように泣く。
母が入院先として紹介してくれた病院に電話をかけてくれる。明日電話をかければ入院の相談に乗ってくれるそうだ。
とりあえず、私の背を押し、突き進めさせてくれたことに感謝する。今のところ進むしかないのだ。

日曜日は、自分を非難する声で一杯の妻の頭の中に、少しでも楽しいことを注ぎ込んであげたい。

釣り竿を買う釣具屋を探す。アパートから近い場所に見つけたので、日曜日は妻と一緒にここへこよう。

その後、書店で統合失調症に関する本を二冊買う。読んでいるうちに心が落ち着く。
同じ境遇の人の話がこれほど安心させてくれることに改めて気づかされる。そして妻が、自分と同じ苦しみを感じている人をしきりに捜し求めている気持ちがよくわかり、心が揺れ動く。
このまま妻のいる狂気の世界に自分も飛び込んでいって、妻と苦しみをともにしてしまいたくなる。
アパートに帰って、妻と対面することに恐怖を感じる。家に帰りたくないという感情が巻き起こる。
心を奮い立たせる。

今日は妻の初仕事。
まだ仕事中の妻へ、お帰りメールを入れる。いつもと逆だ。
そしていつもどおりのふりをして帰宅。

妻は久しぶりの仕事に疲れた様子だが、そのせいか妄想の言動はでず。
アパートから出て他の人と触れ合ったせいか、よい方向へ向かったかのように見える。
妻と食事をしながら、他愛のない会話をし、「疲れたからヘロヘロ、ヘロッピー」などという妻のいつものくだらない冗談を聞いていると、このまま入院させずにいてもいいのではないかという思いに駆られる。
テレビでゆるキャラのことをやっていた。すかさず妻は、「ゆるキャラじゃなくって堅いキャラってどう?」
と聞いてきた。
堅キャラか、わりといいかもしれないなと思っていたら、「堅いキャラだから、ハードキャラってのはどう」と聞いてくる。相変わらずネーミングセンスの無い妻だった。

疲れているから薬は飲まなくても眠れるという言葉をやさしく諭し薬を呑むように促す。いつも神経を使う。
妻はテレビを見たがっていたが、私のほうが眠くなってきたし、翌日のことがあるので、眠るようにうながす。
布団に入ってからしびれを訴え始める。

「私はなにも悪いことをしていないのになぜ、下の人はこんなひどいことをしてくるのだろう」

妻の訴えに言葉がつまる。

しばらくの間、眠れないとつぶやき続けていたので、昨日と同じくアイスまくらをタオルに包んで枕元においてやる。
やがて寝息の音がしたので安心するが、こんどは私のほうが眠れない。
強制入院させることで、妻は私に裏切られたと思い症状をよりいっそう悪化させてしまうのではないかと考えててしまう。
信頼関係と安心感を与えようとしてきたけれども、むしろ適度に嫌われていたほうが妻のためではないかと思ってしまう。
突然父と母の声が聞こえ、驚く。自分も幻聴が聞こえたのだろうか。

夢なのだと思うことにする。


いろいろな事情と思うところがあってもうひとつブログを作りました。 新しいブログで書いていることは、他愛もない書きなぐりの文章になってしまっていますが、興味のある方は新しいブログの方も見てやってください。 もうひとつのブログ --> abandonné cœur.

 
 
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