キャンプ・コンセントレーション

カテゴリー │サンリオSF

普段はこの番組観ていないんですが、来週の「大改造ビフォーアフター」は非常に気になります。

4000冊以上もの本が家を埋め尽くす
「本に埋もれた家」を劇的に大改造!
4000冊以上もの本の山が家を埋め尽くす!廊下やトイレ、屋外にまで本があふれ、家族の生活を圧迫!難問山積みの通称「本に埋もれた家」を劇的に大改造!なるか、奇跡の収納と快適空間!

4000冊はちょっと少ないんじゃないかと思うのですが、他人事じゃなかったりもします。かなり特殊な間取りのようなので4000冊程度であれば「匠の力」でなんとかなっちゃいそうでもあるけど…。

さて、世の中の本好きな皆さんはどのくらいの積読本を抱えていらっしゃるのでしょうか。
私なんて三桁ですよ。
本を読む速度よりも読みたい本が増える速度の方が早いのがその原因なんですが、三桁ともなるとその差は絶望的な差にもなります。
それでも、読みたいという気持ちが残っている本はいずれ読む可能性が残っているのでいいのですが、長い間積読にしておくと読みたいという気持ちすら無くなってしまう本も出てきます。そういう本は永久積読本と成り果てるのです。

ディッシュの「キャンプ・コンセントレーション」もこの間まで永久積読本でした。この本を買ったのは二十年も前ですよ。
出た当時は、これがディッシュの幻の傑作「キャンプ・コンセントレーション」かと、もの凄くわくわくしたんですが、期待感が高すぎて読むのに挫折しました。そもそもサンリオSF文庫は裏表紙に400文字程度の要約が載っているのですが、この本に限っては要約なんていっさい無し。この本がどれだけ凄いのかがひたすら書かれているだけです。しかも全部で360ページなんですが、後半90ページ近くは訳注です。娯楽SFと思って読めば挫折するのも無理もありません。
しかし、ずっと心残りになっていたわけで、意を決して二十年ぶりに再チャレンジしてみました。
文学的素養が無いので判らない部分も多かったのですが、結構話についていくことができました。一口で言ってしまえば、邪悪な「アルジャーノンに花束を」といったところでしょうか。
梅毒に罹った過去の著名人を調べてみると、その末期時に天才的なひらめきを見せていることから、コロラド州の地下に収容所を作って改良したスピロヘータを使って知能促進の人体実験を行うのだが、改良したとはいえ梅毒には変わりないのでいずれは死んでしまいます。さすが「人類皆殺し」を書いた作者だけあって情け容赦ありません。収容所の名前はキャンプ・アルキメデス。梅毒で天才になってみんなで「エウレカ」と叫ぼうとでもいうんでしょうか。
主人公は詩人で、患者達と話をしてそれを日誌に書くことを指示されます。そんなわけで前半は主人公の日誌の形態を採っていますが、自分自身も患者だったことが判るところで前半が終わります。
後半は日記の形をなさない断片的なメモ風になるのですが、ここからがディッシュの本領発揮です。
前半部分はSFとしては今ひとつと思いながら読んでいたのだけれども、後半大逆転。主人公もいずれ死ぬことは目に見えているので陰鬱な終わり方をするんだろうなと思いきや、前衛的な手法をつかいながらもしっかりとSFとして終わらせているのであります。凄いよディッシュ!。
この本の面白さは絶対に十分の一も理解しちゃいないけど、読めて良かったよ。


いろいろな事情と思うところがあってもうひとつブログを作りました。 新しいブログで書いていることは、他愛もない書きなぐりの文章になってしまっていますが、興味のある方は新しいブログの方も見てやってください。 もうひとつのブログ --> abandonné cœur.

 
この記事へのコメント
確かに気になります・・・来週のビフォーアフター。
どう変わるかというよりは、どうやったら2階建ての建物が4000冊の本で埋め尽くされるのかという辺りに・・・

購入→積読→永久積読の流れはありますね・・・
でも、今のところ「多分買っても永久積読」というのは購入を控えている(つもり)ので、多分2桁ですよ・・・
永久積読になりかけてたものから思わぬ名作を発見って何か良いですね。
Posted by lazy at 2006年01月25日 13:39
我が家も同居人の不断の努力が無ければいたるる所に本が散らばっていますよ。手に届くところに本がないと安心できない人種の部屋なんてそんなもんです。
三年ほど前から改心して、積読をしないように心がけているのですが、それでも年に数冊積読本が生まれてしまいます。
私の場合、名作であることがわかっていても平気で積読にしてしまうのですから始末に負えません。
Posted by Takeman at 2006年01月25日 15:30
 名高い「キャンプ・コンセントレーション」とは,こういう話だったのですか。
 実験的な知能引き上げ小説とは聞いていたのですが,梅毒を利用するとは思いもよりませんでした。
 読みたいのはやまやまですが,なかなか手に入りませんよねえ。
 「歌の翼に」も「334」も…
 あの当時,サンリオSF文庫が山積みされていたときにと後悔することしきりです。
 野口氏の翻訳のようですが,後半は,相当手強そうですね。
Posted by おおぎょるたこ at 2006年01月25日 23:57
あ、確かに読書家には来週の「大改造ビフォーアフター」は気になる内容ですね。
将来家を建てる時の参考にでもしようかしら。
ちなみに積読本はギリギリ2桁でした。(さっき数えた)
Posted by 屍 at 2006年01月26日 00:47
おおぎょるたこさん。
サンリオSFって他の文庫よりも値段が高かったんですよね。今は古書となって、もっと高くなってしまってますが…。
野口幸夫氏というと独特の翻訳理論で有名だったんですが、「キャンプ・コンセントレーション」にかぎって言えば、元々が前衛的な手法で書かれているせいもあって、訳し方そのものは気にはなりませんでした。
むしろ、トーマス・マンの「魔の山」の影響を受けて書いたというだけあって相応の文学的素養がないと本当の面白さってのはわからないのでしょうね。そのあたりが全然駄目だったので、いつか素養を積んで再チャレンジしてみます。

屍さん。
あの番組は「ビフォー」の方が面白くって「アフター」の方はつまらなかったりもしますからあまり参考にならないかも。
積読本なんていつか読めばいいんだよ、いつか。なんて思っていたのですが、最近罪悪感にとらわれはじめましたよ、私は。
Posted by Takeman at 2006年01月26日 11:07
 Takemanさんの記事で,「ビフォー・アフター」を久々に見ました。
 確かに,この番組は,「ビフォー」と最後の5分だけ見れば十分なんですが,今回は,劇的収納方法があるのかなと期待していたのですが。
 まあ,そんな魔法はありませんでしたね。
Posted by おおぎょるたこ at 2006年01月29日 22:01
おおぎょるたこさん。
同居人に「ビフォー」の部分だけ見せて、我が家はまだましな方だよと納得させようとする分には役に立ちそうでした。その際「アフター」は絶対見せてはいけませんが。
Posted by Takeman at 2006年01月30日 19:06
 ディッシュの短編レヴューの中で,勝手ながらこの記事にリンクさせていただきましたので,よろしくお願いします。
Posted by おおぎょるたこ at 2006年03月26日 20:04
 
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